![]() |
![]() |
![]() |
|
![]() |
三年目にしてようやく7.5倍の狭き門をすり抜けた東京マラソン。皇居ランコミュをはじめ、かつてない多方面の方々から見守られながらの檜舞台で、悲願のサブスリーを狙う。先月の走行距離は278kmと過去最長距離をこなし、気になるところもなく調子は上々だ。フルのベストタイムは昨年かすみがうらでの3時間5分35秒(ネット)、ここにきて6分の壁の厚さは重々承知しているつもりだが、今回は狙えそうな気がしていた。いや、この千載一遇のチャンスを逃したとあらば一生悔いるに違いない。何としても、意地でも達成しなければなるまい。 この大会は当日の最終登録というものがない。必要なことは、事前に受け取っているナンバーカード(ゼッケン)と計時チップを装着し、手荷物預けの袋を持って会場入りするだけだ。ゴール地点へ搬送される荷物を8時半までに預け、8時45分までに指定されたスタートブロックに入ればいい。すべきことは実にシンプルだ。 そんなわけで、余裕ぶっこいて8時に新宿副都心へ向かうと、会場に至る前から選手と関係者たちで道路は埋め尽くされている。なんという人口密度だろう、この有様に、過去の経験則が全く通用しないことを察する。テロ警戒中のような厳しいチェックを受け、選手しか入れない会場内へ踏み込んだ。mixi仲間の集合場所に行ってみたがやっぱり見あたらない。次の行動に移った後だろう。スタート1時間前だが服を脱ぐ覚悟を決め、テキパキと準備して荷物をまとめる。 人だかりをかき分け、預けるトラックへ少しばかり移動するだけでも数分かかった。計画的に要領よく行動する必要がありそうだ。人いきれの中で幸い寒さを凌げている。8時20分、スタートまでまだ50分はあるが、トイレを待つ人の山を見ると油断はできない。嗅覚を総動員して空いている方向を吟味する。導線から外れる都庁ツインタワーの谷間にほとんど並んでいないトイレを見つけた。 スタートは、ナンバー頭のアルファベットで示されたブロックに整列すると厳格に決められている。2時間58分の申告予想タイムで得た僕のナンバーは陸連登録のAに次ぐBブロック。一般としては最前列となる。 そのBブロックへの誘導路も指定されており、ヘタに迷う心配はないが、立ち入りは厳しくチェックされる。ズルができないシステムはありがたいけれど、申告タイムがインチキなら元も子もないわけで、真偽を図る必要性もそのうち出てきそうな気がする。ギュウギュウ渋滞の中、気がつくと偶然にもよっすい〜さんの頭が見えた。僅か3m先の人とコンタクトできない歯痒さを覚える。 面積の半分以上がすでに埋め尽くされているBブロックに入ったのがスタート40分前。マジかよー、やることないよな。幸い今日は気温が高く(体感で14℃くらい)、ゴミ袋カッパに身を包み人間防風林の中に埋もれていればほとんど寒くはない。とは言えスタート前にもう一度トイレに行きたくなる場合を考えて、努力して前へ詰めることをためらった。しかしあっという間に後続も埋まり、一切身動きは取れなくなる。この一瞬の優柔不断な行動が後々大きく影響することになる。 立っているだけで足腰が疲れる僕は一人中央分離帯にうずくまっていた。ようやく開会式などが始まり、都知事の意向だろう、珍しく君が代斉唱なんてのもあり起立する。数万人がしんと静まり返る中、合唱団による無伴奏の君が代が現代的な高層ビル群の壁面に反響し、大聖堂の中のような厳かな空気が流れた。スタート前、選手一同揃って精神統一し、気持ちを一つにする瞬間の雰囲気は、アイアンマンの一シーンに通ずるものを感じる。 もちろん、その規模の違いは圧倒的だが。 9時5分に車椅子の部が先行スタートした。腕のSuuntoはカウントダウンタイマーですでに作動させている。乾燥して無反応になる心拍ベルトに唾を付けて動作確認した。 サブスリーへの挑戦は今回で三度目。そのプランは、
9時10分、スタートの号砲が鳴った。 |
![]() |
|
![]() |
![]() |
![]() |