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第5回ツール・ド・美ヶ原ヒルクライム
2004/6/27 標高差1270m、21.6km 今年で5回目を迎える比較的新しいこのレース、順調に参加人数を伸ばし今年は2300人と発表された。ヒルクライムは各所でレースが新設され、最近の流行でもあるようだ。2300台もの自転車が勢ぞろいするのは、過去に見たことがない。 今回はご近所のロードレース仲間Sさんと一緒に参加することになった。我がツーリングの車内に自転車を2台積んで出かけるのはこれが初めてだ。一人で参加するより落ち着けるし安上がりだし寂しい思いもしない。 レース受付後試走開始、つまりVXRSの初乗りである。しかもいきなりコース最大の難所である激坂へ向かおうとしている。初めてにしてヒルクライムコースとは、運命的なものを感じる。 ![]() この状態で7.0kg+ボトルです。 さてさて、ずっと気がかりだった問題の激坂は、浅間温泉郷をスタートしてすぐに現れ、その見慣れぬ傾斜にギョッとする。噂どおりの転げ落ちそうな坂に、VXRSがどんな具合か味わう余裕などない。とにかく上れ!だ。ただ、これがKestrelだったら27Tじゃないと上れなかったかもな、とは思う。となると傾斜は15%より強いだろうか? 前日の軽い試走のはずが、歯を食いしばって全力で上っている。これってアホですかね? 幸い、激坂は300mほどで終わり、あとは12%以下と思われる常識的な坂が美鈴湖手前までつづく。湖を半周して引き返し、今日の練習はおしまい。 下りはカーボンのZIPPホイールに負担を強いることになるが、新しいDuraのブレーキとカーボンリム用コルクブレーキシューの組み合わせは、異様なほどブレーキの効きがいい反面加減がむずかしく、ギクシャクした。古いブレーキは剛性が低い分、いい意味でも悪い意味でもブレーキの効きがラフだった気がする。 結局VXRSの初乗りフィーリングは、軽いという点以外はよくわからなかった。Kestrelとの差である1kg以上の軽さを感じて上ることができる。つまり満タンボトル2個積んだとしても、何も積まないKestrelよりペダルは軽く感じるだろう。 夕方6時に食事して、夜9時半には寝てしまった。このところ毎日忙しくて、たっぷり寝たい気分だったのだ。Sさんには付きあわせてしまって申し訳ございません。 翌朝4時50分起床、コンビニで買っておいた稲荷3つとサラダを部屋でのんびりと食べる。普段のレース前食事としては少ないが、90分程で終わる競技なので、ハラヘリにならない程度で十分だろう。むしろ全工程で息が上がりっぱなしだろうから、腹痛や食ったものが逆流するリスクのほうが大きい。 6時45分ごろに会場入り。会場横の競技場周辺道路がアップコースと化している。その道を逆流しながらトロトロ走っていると、アップ中のryuさん(チームWADA)がすれ違いざま声をかけてくれた。サングラスもしていたし、こんな身元不明な格好をしているのによく僕と判りましたね!? フリースで厚着した場違いな姿が、ある意味目立っていたのかもしれないが。 このレースは100人ずつ約2分毎のウェーブスタート方式で、僕のスタートは7時55分だ。多少肌寒いので直前まで厚着していたいが、山頂で受け取る荷物は7時に預けなければならない。僕より6分後にスタートするryuさんに抜かれないようにというのが唯一にして最大の目標である。予習を怠ったために目標タイムなどはさっぱり判らないし作戦もなしだ。人気のない道で10kmほどアップして、最後に負荷を高めHR150bpmまで上げると、太ももに疲労感を覚えた。昨日の激坂試走がマズかったか、それとも4日前の甲府ヒルクライムトレーニングの余波か、一抹の不安を感じつつ、スタートラインへ。しまった、最後のトイレに行くの忘れた。小便を頂上へ持っていくのかよう。 チームジャージに身を包む選手が多い中、まさかのタンクトップのトライアスロンウエアで出る奴は見渡す限り自分だけだ。でも、延々高負荷と早い心拍、遅い速度で走るのだから、マラソンみたいなもの。気温が低すぎない限りは涼しげなほうがいいだろうし、落者の危険は少ない。なるべく身を軽くするためにもこの考え方は十分アリだと思ったのだが。 レースタイムは、各々のネットタイムを計ってくれるものと思ってのんびり構えていたら、スタートラインにセンサーチェックはない。つまり位置取りが重要というわけか。時すでに遅し、後ろのほうからのスタートを余儀なくされてしまった。予定通り7時55分に30代中ごろのグループ約100名がスタートを切る。さあて、どんなもんでしょうか、ヒルクライムレースとは?? まあそれでもスタートラインは9秒後に過ぎて、ロスタイムはほとんどない。左クリートがはまらないと思って焦ったが、どうやらすでにはまっているようだ。今回ペダルも新しく旧74系デュラ(Lookタイプ)から新型デュラにしたため、シュークリートも付け替える必要があったが、新しい“ランスペダル”は昨日すでになかなか良い印象を得ていた。 ところがである。やはり左ペダルがヘンだ。はまってないのに外れない、という感じなのである。どうやら新しいクリートのネジが緩んでいるらしい。まじかよ! ヒルクライムレースにあるまじき凡ミスではないか? なぜアップ時には全く気づかなかったのか? そうこうしているうちに激坂に突入。試走とは違い、本番の今日はミラクルパワーでクイクイ行くぞ、と思っていたが、やはり辛さは昨日と同じである。本来遊びの多いクリートだが、前後左右に1センチほど自由に動くスーパーフリー状態で激坂をダンシング。こんなに酷使したら、スーフリペダルはいつネジが取れてクリートが外れないとも限らない。そんなことになったらおしまいだ。なんとか頂上まで持ってくれよ、と願うばかりだ。 周囲は早くも自転車を降りて押している先発グループの人をちらほら見かける。上れずに諦めたというより、ハナッからその作戦らしい。対するグループの先頭は、もう早いうちから見えなくなっていた。だからといって、この激坂を今のスピードより速くも遅くもできない状態だから、作戦もへったくれもない。まずはこの区間をクリアしなければ。ここで瞬間最低速度7.0km/hを記録。 僕と同じか速い人は前方からスタートして早々と行ってしまったようなので、もうひたすら周囲を追い越すだけのレースである。それはそれで、気分がよい。買ったばかりのフレームだから、ちーとは良いトコ見せないとな、という自意識過剰な気分がエネルギーとなっている。左ペダルだけカチャカチャ鳴っているのが情けないが。 昨日会場のステージで今中氏による講習会があったが、「脚を下に踏み降ろすより、斜め前に蹴りだすようなペダリング」というアドバイスを思い出して走る。脚が疲れてくると色んなペダリングをして筋肉を休ませるが、そのうちのひとつは奨励型でもうひとつはNG型というわけか。よりクリートのガタが気になる方向でもある。また、「手は添えるだけで、下半身の筋肉だけで走るように」とも氏は言っていた。ランスは背中にマニトウみたいにでっかいこぶみたいな筋肉があるが、上半身のパワーを使っている証拠ではないのか? よく判らない。 途中でVXRSを2,3台見かけたが、その中でもなんとZIPP404を履いている人を発見。およよよ、おいらとまったく同じじゃないですか! 無視して通り過ぎるわけにもいかないだろう、近寄っていって追い越し際に「似てますねぇ」と脳を通さないセリフを投げかけると、間髪入れず「ハァー」と返事が返ってきた。相手も脳を通してないらしい。切羽詰った状況のようで、失礼しました。 美鈴湖沿いはいったん平らになり、ホッと一息つける瞬間だ。ここでは43km/hとか出ていてびっくりする。追い風か?これがVXRSの威力というものか?? 全工程の1/3を過ぎた頃だろうか。初めて誰かに追い越された。ゼッケンを見ると、2分遅れでスタートした人と判る。つまりは後発グループのトップが来たというわけで、こりゃ敵いません。と思ったが、そのあと後ろにつくと、結構着いていける。さて、どこまでくらいつけるか? このあたりの道は傾斜がゆるくなったりきつくなったりを繰り返し、インターバルトレーニングのようで僕としては苦手なコースだ。時には追い越しながら、3,4キロはついていったと思う。 中間ポイントは44分13秒で通過。さて、前半と後半で大きく異なる条件下で、このタイムが示すものとは? 倍にして88分30秒か。はてさて、よく判らない。 知らぬ間に、徐々にくたびれ感が出てきてた。つぶれたわけでもなく、息が上がったわけでもない。なんとなく、チカレタビーになってきたのだ。集中力も落ちてきたのか。たいした坂でもないのに、25Tでダンシングで上ることが多くなる。もちろん攻めのダンシングではない。 チェックポイントは全部で3箇所あり、すべてで水の配給があったが、これを知っていたらノーボトルで出走したかもしれない。ボトルに2/5ほど入れていた飲物は、結局ゴールで1/4くらいに減っただけで、それも義理で飲んだだけなのだ。ヒルクライムはホントに水分を使わない。ってことは汗もかいてないのか? 4分や6分後ろの選手にも抜かされ始めた。まあこのころになれば当然なのだが。とりあえず、ryuさんにはまだ抜かされていないが、徐々にペースが落ちている自分を感じていたので、気を引き締めないとずるずる後退するぞ、と言い聞かせる。そんな折、同じ出走組の選手に初めて抜かされるということが起きた。 この人がいままでずっと僕の後ろを走っていたとは思えず、僕が途中で抜いた選手が抜き返してきたと考えられる。つまり、明らかなペースダウンを意味していたのだ。強そうな物見山のジャージを身にまとい、積極的でヘタレない走りを感じる。これはついて行かねば。だがこの人、ちょっとした下りから上りに変化したところでチェーンを落としてしまった。ま、またいずれ追いついてくるだろうと思ってのんびり行く(のんびり行くなーっ)。 ラスト5キロの看板が見えた。ここまでほぼハーフマラソンと似たペースで走ってきたから、残り5キロと言っても、その感覚で見ればまだまだ残っている。と思っていたが、ラッキーなことに結構な下りが待っていた。3人ほどの集団で高速な下りを駆け抜ける。ヒルクライムというより、ロードレースになってきた。物見山の人にも散々引っ張ってもらう。イヤーすみません(この辺の状況の前後関係は記憶があいまい)。 ![]() そうこうしているうちに残り1キロくらいになってきた。いよいよラストスパートか。下りで思いっきり飛ばして、その勢いで上りをダンシングで駆け上る。おや! 刺されるかと思っていた物見山の人はついてこない(記憶では確か)。あとはゴールまでマッシグラだ。本日最高のHR167bpmを記録しつつゴールライン通過。ラスト付近の地形がわかっていたらもうすこし全力を出し切る走り方があったかなと思ったりしたが、まあ満足だ。 預けてあった荷物を受け取り、風邪を引かないよう十分に厚着してゴロンと横になった。「ご褒美」の最中と豆乳を食す。あー気持ちいいね。 問題のクリートを観察すると、3本のネジが全部緩みきって今にもとれそうだった。右足も1本緩んでいた。なんたるこっちゃ! このトラブルがなければもっとタイムを縮められただろうか? 案外関係ないだろう。 レースでは味わう余裕のなかった美ヶ原のきれいな景色を見ながらのんびりと下山する。やはりこの爽快な眺めが、ヒルクライムの人気の秘密だろうか。 その後ホテルに直行して風呂に入った後、レース会場で自分のタイムを知る。1:18:02で、Cクラス46位/645人。総合155位/1986人(完走者)だった。たぶん上出来じゃないですか。VXRSのお陰だろう。なんとryuさんにも勝っていた(どうも不調のようだ)。 * * * * * ![]() まあそれはいいんだけど、翌朝の食事は6時から、ってのがマイッタ。7時30分から順にレースがスタートする条件下で、6時に朝飯というのはいくらなんでも遅すぎる。レース3時間前までに食事を終えるというのはあくまで目安であるけれど、万人にそれを1-2時間短縮させるのは明らかに問題だ。美ヶ原はもう5回目なんだから、ホテル側も学習していていいはずなのに、2度ほど抗議したけど、聞く耳持たずで「6時です」ときっぱり言い切り、融通がまったく利かないサービスの悪さには不満を呈したい。それができないというのならレース指定の宿から降りるべきだろう。 背に腹は代えられないので、仕方なく朝飯は放棄して自前で用意したのであるが、たまたま朝6時半ごろ食堂の前を通りかかったら、驚いたことに僕ら以外ほとんどの客がフツーに食事をとった様子だった。まじかよ! レースの基礎を知らない人ばかりなのか、レースより飯が大事なのか、それとも消化器系に自信のある人ばかりなのかよくわからないが、今ごろ食っていてレース中ゲロっても知らないぞ。 でも道中ゲロっている奴は見かけなかったので、みんな意外とタフなのですね。 |
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