はつかいち縦断みやじまパワートライアスロン2010参戦日誌
2010/6/27
Swim2.5km + Bike55km + Run20km

宮崎の口蹄疫のあおりを受けIMJ難民となってしまった我々の元に、DAiさんから朗報が入る。よければウチに来ませんかと閉め切り後に再募集をかけてくれた宮島の存在だった。名が示す通りタフなコース設定に、以前から関心の強かったレースだ。すぐにDAiさんとTさん、そして僕も申し込んだ。

IMJに向けてある程度仕上がっていたはずなので、挑戦のし甲斐があるというものだ。

6月26日(土)レース前日
今回、レース間近に申し込んだため休暇取得の調整が難しく、週末土日強行ツアーである。
輪行袋を担ぎ、6時発のリムジンバスに乗って羽田へ。同じく広島同日開催の全日本選手権ロードに出場する慈朗さん浅倉さんと合流する。応援に来てくれるかおりさん(通称カントク by DAiさん)も予定通り到着。8時15分発のANAで広島へ飛ぶ。昨日から九州地方は激しい豪雨に見舞われており、広島もその影響を受けてほとんど雨のようだ。
他所へ回されることなく無事空港に降り立つことができた。結構きわどかった。全日本の二人とは別れ、広島駅まで小一時間リムジンバスに乗り、続いてJR在来線に乗り換えて宮島口駅へ。カントクが子供の頃住んでいたという五日市駅も通過、車窓からはさぞかし懐かしい眺めかと思えば、記憶に残る景色は意外と少ないみたいで、自宅が線路のどちら側にあったかも思い出せないなんてホントに住んでたの?と突っ込みまくる。
宮島口からはタクシーのトランクに輪行袋ごと突っ込んでホテルへ。とにかく雨が行動を制限させる。安芸グランドホテルは土曜ワイド劇場に出てきそうな立派な国際観光ホテルだった。大きくて立体的なフロアのロビーにはソファーがいくつも置かれ、海と宮島が一望できる。厳島神社の大鳥居もうっすらと見えた。明日はあそこがスタート地点だ。この雨で島の周りには雲のような霧が立ちこめている。
前日入りしていたTさんと合流し、3人で最寄りの食堂へと向かった。辛い味噌ダレが売りの「バクダン」というつけ麺屋はなかなか美味かった。のちに有名チェーン店と知る。

神戸から豪雨の高速を50km/h制限で走ってきたDAiさんが遅れて到着、今回のメンバーが揃った。ホテルにほど近いちゅーピーパークという不可解な名称の施設で選手登録→説明会→前夜祭と続く。選手以外は3000円もする前夜祭は、作り置きした揚げ物が多くて冷静にみると今一つだったが、仲間同士の宴の楽しさがそれを補った。名物の牡蠣料理があったら良かったなあ(レース前日に食うもんじゃないか)。

ぎりぎりに予約した安芸グランドは、男女混ぜこぜの4人部屋。カントクには少々気を遣わせてしまったかもしれないけど、結果的にこの方が楽しかった。ホテルの雰囲気と相まって修学旅行みたいな気分だ。
このレースは3種目のスタート・ゴール地点がすべて異なるため下準備に気を遣う点でIMJと同じだ。スイムまでワンウェイってかなり珍しい。そんなこんなでようやく床についたのは22時半頃。驚くほど皆寝相がよくて、鼻息も聞こえてこない。緊張して寝られないのだろうか、などと考えているうちに自分も寝てしまった。

6月27日(日)レース当日 雨
アラーム設定の30分前に目が覚めて、廊下を歩く足音や話し声が聞こえてきたらとたんにそわそわして寝られなくなった。
4時45分、起床。外を見るとほとんど雨は止んでいる。何だかんだ言って、本番では神様が味方してくれるものだな、などと気持ちが明るくなる。
すぐに朝食。例によって食欲がないけど無理して食べなかった。今回このレースに向けての強い目標はないので気楽に構えられる。ここで初めて予想タイムというものを考え始めた。2.5kmのスイム42分(100mを1分41秒)、55kmバイク2時間10分(平均25.4km/h)+トランジション、20kmラン1時間半(キロペース4分半)、4時間半は切れそうかな。切りたいな。まあ意識することにはなるだろう。

徒歩5分のトランジットエリアにバイクをセットし、ランギアバッグを預託する。その後チェックアウト。荷物を部屋に置きっぱなしにはできない。
ホテルから宮島口へのピストンバスに発車時刻を過ぎて乗り込む我ら。余裕ぶっこきまくりですね(どうもすみません)。選手専用フェリーで宮島へ渡る。10分程度、カントク以外乗るのは片道のみだ→。雨が再び降り始めてきたが、波はベタ凪で極めて泳ぎやすそうだ。初めて宮島に降り立つと、当然ながら目覚め前の観光地で静か。隅っこの方で鹿が「本日休業」と言わんばかりにうずくまっている。

厳島神社の一部である千畳閣という立派なお堂で最終登録、ナンバリング、結構本格的な安全祈願のお祓い(外人ウケしそうだ)、そしてウェットスーツを着る。いつしかすっかり土砂降りに変わっていた。屋根がありつつ風通しのいい、実にお誂え向きな場所を利用させてもらっている。この厳かな空間に、闘志に満ちたムンムン骨太野郎集団のコントラストは奇妙だ。

再びうまい具合に雨も弱まり、8時、御笠の浜のスロープから海へ入る。すこしだけアップのつもりで軽く泳いだ後、世界遺産の赤い立派な大鳥居を下から見上げる。すでに足が着かない深さだ。これを徒歩じゃなく泳いでくぐった人は少数だろう。貴重な瞬間。
フローティングスタートは浜からのスタートと違ってビーチランやラッセル作業で一気に息が上がることもないし、スタートを待つ間のスカーリングで緊張が紛れるので好きだ。誰かのかけ声で一斉に雄叫びが上がり、いよいよその時を迎える。目指すは斜め向かいの対岸に小さく見える白い安芸グランドホテルだ。


8:30 a.m. スタート
バトルは1分程度で一段落したが、意外とバラけずにしばらくはストレスのある泳ぎが続く。コースロープがなく、数隻のヨットが指標と聞いていたが、湘南OWSの時と同じでまあ正しい方向なんて判らない。先行する選手の方向に泳ぐだけだ。お互いを目印にするので自ずと磁石のように近づきあい、無駄な混雑を招きがちなのだろう。
雨が続いたせいか海はカーキ色に染まり透明度はほとんどなく誰かの後ろにぴたりと着くのは難しい。ベタ凪だが時折船舶からと思われる固い波が来る。そしてふと気がついたのは、水があまりしょっぱくない。瀬戸内海が一つの巨大な河口と考えられなくもないか?

僕らの右隣にはクルーザーが同じペースで併走していて、しきりに声援して明らかに審判団とは違う人たちも乗っている。応援ツアーにこの船に乗る選択肢もあったのかなあ?などとぼんやり考える。そういえばカントクは宮島口へ戻るフェリーに乗っている頃だろう。同じ海の上に居ると思うと妙な気分だ。
唯一のコーナーブイを曲がると、正しい方向がますます判らなくなった。安芸ホテルを目印に進めばいいはずなのだが、どうみても皆かなり方向が左にずれている。もう一カ所コーナーブイがあるのか? ちゃんとスイムコースを頭に叩き込んでおくべきだった。
落ち着いて見渡してみると、50mほども右に離れた位置にぽつねんと一人泳ぐ選手がいた。理屈では彼のとっているコースが正しいように思えるが、あまりに少数派なので信用するのもリスキーだ。だが結果的に彼は正しかったようだ。

息継ぎの方向に太陽が見えて眩しかった。眩しい? いつのまに晴れている。
泳ぎながら時計をみると38分、トップはゴールしている頃だろう。上陸地点は見えているが、ここからが意外と遠いもんだ。案の定なかなか近づいてこない。
ブルーのワンポイントが入ったウェットを着た選手を右手に見ながら泳ぐ。序盤からマークしつつ、コース取りを上手くやっていつかは先行したいと考えていた選手だが、結局一緒になってしまった。相手も同じことを考えていたかもしれない。コース取りがヘタだったのは少なくとも自分だけではないと解釈することにした。最後は幅が10mもない狭い入り江に入り込む。故郷の河口を見つけた鮭のような気分。崖の上を応援の人垣がびっしり見下ろしている。カントクは無事戻ってこれただろうか?

急なスロープを這いあがると、カントクの声援を受けた。時計をみると45分台。ありゃ、宣告タイムよりかなり遅い。今年はスイムを強化してきたのになんでだろ?と少々解せない。
トランジションではウェットが袖や裾で引っかかって脱げずに難儀する。5年目のシロモトは少し破けてきていて慎重さを要するのだ。そしてバイクバッグにウェットもろもろ全て仕舞うのが宮島ルール。バイクシューズはその場で履いて、ぬかるんだトランジットエリアを駆け抜ける。4分もかかってしまった。

SWIM2.5km 0:45:49 (17位 トップ差 7:47)
トップ差大きい。

9:20 a.m. バイクスタート
序盤は小刻みなアップダウンを繰り返し(↑計200m)市街地をぐるりと走るコース。応援も多い。雨の中ありがとうございます。スリッピーな下りコーナーが多いと聞いていたので慎重に走るが、さほどロスはなく走れている印象。女子招待選手を二人パスした。うち一人はアウターローでヒイヒイ言いながら急坂に喘いでいたので「アウターだよ!」と教えてあげたが、いまいち通じなかったらしく、外側から追い越すぞウラぁ、って言われたと思っているっぽい。

選手に混じってPRESSと書かれた人がロードバイクで走っていた。ハンドルとサドルの後ろには超小型カメラらしきものがついている。ムービーを撮影中だろうか。これはなかなか興味深い。僕らと同じかそれ以上のペースで走らねばならない。自転車が趣味のマスコミ人なのか、それとも雇われライダーなのか。選手に着いていくためにドラフティングもしっかりやる。やっぱ少し限界っぽいんですけど? さらにはマーシャルも自転車で並走していた! 「道交法に抵触するからできない」などと言ってないで佐渡でもぜひ導入して欲しい。身を挺して審判にあたればドラえもん達も恥を知り心を入れなおすかもしれない!?

市内区間を終え、12km過ぎからしばらく上りが続く。木々に囲まれた細い峠道だ。普段の物練のようでもあり、落ち着いて淡々と上る。いい感じだ。

草むらに居た人から突然「21番!」と言われた。んー、何だかガッカリである。なぜか。彼の松岡修三のような嬉しそうな顔が、「キミが21番目だなんてスゴイじゃないか!」と言ってるように見えてしまうからである。だが多くの選手は曲がりなりにも1番を目指して走っているのである。もちろん無理と知っていても(ちなみに21番とは、リレーの部の選手を含んでいる)。
やがて招待選手の藤原プロに追い越された。スイムが遅いことで知られている?が、それでも僕よりは若干速い位のレベルなので、この時点で追い越されるとは予想外だった。やはり僕の今回のスイムは比較的いい方だったのか、と思い直す。これまた意外なことに藤原さんはバリバリのTTバイク(サーベロだったか?)に乗っていた。追い越してからもあまり速度差はなく、しばらくは視界内に留めながら走った。序盤は抑え気味に入ると聞いていたけど、55kmしかないコースでバイクラップトップクラスのペースとは思えない。調子が悪いんだろうか。
思ったより坂がいつまでも続き、ヒルクライムレースも同然のコースだなと思い始めた頃ようやく上りが終わった(↑300m)。

ダム湖周辺はしばらく平坦であることが判っている。だが、特に風もないのに今一つスピードに乗れず34km/h前後しか出てない。二人ほどに抜かされ、瞬く間に見えなくなった。やはりDHバーが欲しい。ここでのビハインドは上りで取り返せるという皮算用は正しかったのか。続く上りで彼らに追いつけるのか。平地も思ったより長いな、と感じ始める。55kmなんてあっと言う間だから・・・という感覚に未だ惑わされているようだ。
そしてまた一人に追い越された。少し意識して彼をマークする。やがて平地が終わって上りに入ると、逆に今度は差が詰まり始め、そして追い越した。やっと皮算用通りになってきたか? ゼッケンから広島出身者と判ったので「もう最後の上りに入ってますか」と訊いてみた。「いや、まだ先ですよ。こんなもんじゃないですよ」
そういえばDAiさんから、ハイライトの上り口には釣堀がある、と教わっていたのを今頃思い出した。それまではアクチブな走りは控えようと思った。

その釣堀らしきものの登場とともにエイドが現れ、念願のコーラを丁重に受け取り味わっている間に彼に先行された。何を焦る必要があろうか、これまで通り淡々と走れば彼に追いつけるだろうと高をくくっていた。だがここからの傾斜はきつく、時折9〜10%ほどの僕の嫌いな角度だった。「こんなもんじゃない」と彼が言った意味が判った。噂通りのまっすぐな道が精神的にきつい。太もも辺りでパワーの枯渇感が出始め、急に頼りないものに見えた。先行する彼から徐々に離されているのは明らかだ。つまり彼はこの坂に備えた走りをしていたのだ。対する僕は急速に衰えている。
これまた事前に聞いていたとおり、ところどころ自衛隊員が草むらに立っていることに気づいた。山奥の細道でのもしものトラブル時に一般人では適切な対応が難しいと考えたためだろうか。オシゴト中なので無言で傘もささず迷彩服に身を包んでおり、近づくまで存在に気づかずギョッとすること数回。なぜかたまに複数人で写真を撮っていることもあったりして、それはシュミですかシゴトですか?

序盤に派手な走りで抜かされた選手を一人抜き返す。だが彼のような選手はもっと多いだろうと踏んでいた。堅実な走りをすれば後半必ず数人抜ける、との目論見通りには行ってない。周りも堅実なのだろう。むしろ僕が堅実さを失いかけている。
雑なダンシングはスリップするのでデリケートな走りが求められた。先行する彼はもう見えなくなり、頂上までの距離を示す看板がポツポツ表れ始める。定峰峠でいえばちょうどあのあたりか、などと考えたが定峰の倍近く傾斜があるコースでその発想は間違っていた。カウントダウンのように現れる看板にいちいち「まだそんなにあるのか!」と恨めしく反応して却って集中できない。もう1mも上りはゴメンだという気分でようやく峠を越えた(最後の上り区間7.5km↑470m ラスト3.5kmは平均斜度9%以上)。
雨で路面はしっかり濡れていて、慎重に下りに入る。ヒヤリとするコーナーが数カ所あったが何とかクリアできた。万人が走るコース設定として許されるギリギリの難易度だなと思いつつ、しかしやや遅れてしまったように思う(下り区間平均33.1km/h)。

バイクフィニッシュ地点は突如現れて、乗車中にシューズを脱ぐ暇はなかった。
専用バイクラックはなく、着いた人から順に預けていくシステム。すぐにトラックの荷台に移動されているのだろう。代わりにランバッグが番号順にずらりと敷地に並べて置かれ、お目当てのバッグのある場で着替えるのかと思ったら、手に取ってテントに向かうように言われ、中で着替える。結果的にはIMJと同じパターンだが少々紛らわしい。案の定Tさんは間違えてバッグ置き場で着替えたみたい。通過タイムを見て、トータル4時間半は全く射程外であると気がつく。とりあえずの目標を失い、ランが疎かにならないように気をつけねば。


BIKE55km 前後トランジット含む 2:18:53(24位 バイクトップ差15:04) 実質タイム2:14:50(24.47km/h)
HRave/max=139/158bpm ↑1197m ↓591m 1351kcal
スプリットタイム 3:04:42(15位通過 トップ差21:51)

11:35 a.m. ランスタート
応援バスで先回りしていたカントクとしばし併走する。去年の珠洲では見栄を張ってちぎるように飛ばしてしまったが、今回はカントクのペースにあわせて走る。多少遅くても併走して活力をじっくり貰うほうが意味がある。それに、ランの入りは慌てて飛ばさず、調子が出るまで少し余裕を持ったペースがいいと考えたのだ。その間に一人追い越される。今後も追いつけそうにない速度だ。
「トップと20分差、女子トップと3分差」とカントクから告げられて少しショックを受ける。あのきついバイクコースでも追いつけないレベルの女子にランで追いつける可能性は限りなく低い。スイムで圧倒的な差をつけられたのだろうとそのときは思っていたが、実はスイムは同着、バイクで3分離されていたことを後で知ってさらに驚いた。

カントクと別れ、しばらくは緩い下りが続く。雨はほとんど止んでいた。前後に人がほとんど見えない、ひっそりとした瞬間だ。とりあえずはイージーに走っており、心拍は142bpm前後で推移しているが、今回のヒルクライムコースではペース配分の勘所が判らず、ここでのペースアップははばかられた。5km通過は22分7秒と悪くない。

そこからいよいよ名物の上りに入る。と同時にまた一人パスされる。背中にタコのイラストが入ったウェアを見ながら、そろそろ本腰を入れていかねばなるまいと思い、ターゲットに定めた。いつもの傾斜10%付きトレッドミルを思い出して走る。何とか着いていくことができる。しばらくしてタコ君をパス。人懐っこく、いろいろ話しかけてきた。
千切るつもりはなかったが徐々に彼は後方に離れていき、一時は争う相手ではないと思いかけた。が、3kmほどでぐっと自分に疲れがでてきて、また詰められた。そういえばいつもの傾斜トレッドミルは2km以上続けたことがない。息が続く限り永遠に上り続けられると思うのは間違いだ。バイクで脚が終わったときと同じ感覚で脚が動かなくなってきた。上りはまだまだ続くらしいことを彼から聞いてどっと疲れが出た。ポケットのグリコBCAA粉末を飲む。

しばらくしてそれが効いてきたのか、あるいは上りの耐性がついてきたか、再び調子が戻ってきた。
と同時に、ありえないと思っていた女子トップを前方に見つけた。意外なことにランは不得手のようだ。身体の重さを持て余している様が窺える。現金なもので俄然やる気がでてきて、あっさり追い越してしまった。折り返してきたトップとすれ違ったのは確かこのあたり。
沿道にいたタコ君の知合いが15番!と彼に告げた。「マジかよ、行けちゃうかも」と喜んでいる。んん!?15番くらいのポジションで何処へ行けるというんだろう。このあとぐんぐん追い上げて10人抜きする秘策でもあるんだろうか。

やがて一時的な下りへと入る。タコ君が飛ばしていった。下りは得意のようだ。足柄練で教わったことを思いだし、下り下手が負けじと追う。ドタドタと無鉄砲に走っていたらだんだん追いついてきた。案外捨てたもんじゃない。ハデな足音が彼を威嚇したか、道を譲ってくれた。そんなつもりじゃないって。
藤原選手とすれ違う。相変わらずポジションはあまり上げてないみたいだ。このあとぐんぐん追い上げていくほどのミラクルなスピードにも見えないし、やはり今日は調子が悪いんだろうか?(結果的には6位入賞だがタイムは今ひとつ)

10km通過は49分4秒(5kmを26分57秒)。ここまでホントに長く感じたが、まだ10kmなのか!と愕然としてしまった。この5km区間は4kmが平均斜度6.5%の260mの上り、1kmが50mの下りで、上り区間はおよそキロ5分45秒。いつものトレッドミルとあまり変わらないスピードだ。まあでも頑張れたほうかな。
そして再び上り。タコ君は道を熟知しているのか、やや反則気味な最短コースで上っていく。並のジモティにあらず、大変顔が広いらしく、すれ違う人の多くが知合いのようだ。僕はBCAAが切れてしまったのか、再び限界が訪れていた。彼を追うことで精一杯、明らかに上り始めよりスピードが落ちている。坂はあと少しという希望だけが頼りだ。

念願の折り返しポイントが見えてきた。エイドがあり、応援も大きい。折り返しコーンの位置が期待より若干遠かったが、気持ちは緩んでふっとスピードが落ちてしまう。それを見越したかのようにタコ君がスピードを上げた。見る見る引き離されていくが、とりあえずエイド補給が先決で彼のことなどどうでもよかった。
ここから彼は恐るべきスピードで下り始め、気がついたときにはすでにマークする気など到底起きないほどの差が開いていた。僕も気合を入れなおして下ったが、今度ばかりはその差を縮めることができない。最後の上り返しに差し掛かると、もうトボトボとしか上れず、彼との力の差がここではっきりと出た。ペース維持の走りがすっかり崩壊してしまった。目標物は見えなくなってきており、集中力が切れかけてきた。何とか踏ん張って下りへと入る。もうゴールまで上りはないはずだ。思う存分下る。膝にはとんでもない衝撃が加わっているであろうが構うもんか。つくづく健康体で良かった。膝トラブルを抱えている人には薦められないコースだ。

15km通過は1時間13分45秒、150mの上り下りを同程度繰り返したこの5km区間は24分42秒で、つまりキロペース4分半目標が厳しいことを物語っている。
対向車線にはランナーが続々と上ってきているが、当然ながらしんどそうだ。そんな中にTさんを発見!DAiさんとのアイスを賭けた戦いは今のところ優勢である。
エイドを前方に確認したところで二つ目のグリコBCAA粉末をポケットから取り出した。タイミングを見計らってパッケージをちぎり、むせそうな粉末を一気に口内へ投入、すかさずエイドのコップを取って水と一緒に喉に流し込む作業を、走りながら行わなければならない。この高難易度な技に集中していたら、僕を呼ぶDAiさんの声が耳に入らなかった。やや!何度も叫んでもらっていた気がするが全然気がつかなくってスミマセン。どう考えてもDAiさんのほうがしんどい状況にあるはずなのに。
ふたたび一歩3mくらいの感覚でドタドタ重力に任せて下る。白い側帯より外側はやや苔むしていて滑りやすいので気をつけながら。
麓まで降りるのは案外あっという間だった気がする。今度は平地の進まなさ具合が露わになった。急にふくらはぎがつりそうになって全力で飛ばせない。タコ君を含め前後に選手は見えない。ゴールまでは自分との戦いに限定されたことは明白だった。雨は小康状態で気持ちよく走れている。これが晴れていたら大変だったなとしみじみ感じた。
ゴール手前のコーナーでカントクが待っていた。やっとたどり着いたよ。同伴ゴールしようと声をかけるも、通行規制もあってなかなかカントクがやってこない。ラスト100mは急坂になっているので、カントクが追いつくのを待つために歪めた顔を作って上りに喘ぐフリをしていたら、沿道の声援が一斉に大きくなってしまって申しわけなさ過ぎ。そしてカントクと一緒にフィニーッシュ。



RUN20km 1:34:35(22位 ラントップ差 15:51) HRave/max=151/161bpm ↑426m ↓492m 1204kcal

TOTAL 4:39:17(16位/340人出走 トップ差 37:42) 完走率88.5% 36-45歳の部5位
Bike+Run TE=5 EPOC 331ml/kg 3085kcal HRave/max=142/161bpm


ゴール会場は立派なお風呂施設があるのですぐに身体を洗うことができてとても快適だ。湯船に気持ちよく浸かりつつ、窓からはゴール会場を一望できる。そして無料でマッサージも受けられる(僕はパスした)。かゆいところに手が届くシステムになっているが、それ以上に泣かされたのはこのあとの豪雨だった。ひどい土砂降りになってしまい、コース上に川を作った。
Tさんがゴール、そして僅差でDAiさんが入ってきた。いい勝負の二人だ。


美術館や喫茶店も併設していて、レース中とは思えないおだやかな雰囲気でケーキセットを愉しむ。無料のうどんも捨て難かったがこの豪雨の中でうどんテントに向かうのは躊躇われた。
ますます雨が強くなるばかりなので専用バスで安芸ホテルに戻り(1時間半ほどもかかった)、急いで荷物をまとめて空港へ向かう。この天候で飛行機が飛ぶか少し不安だったが、問題なくJAL最終便で帰ることができた。やや慌ただしい日程だったが、存分に楽しむことができ、中身の濃い充実した二日間だった。
* * * * *

日程がIMJと被る限り参加できるのは今回キリだから、悔いのない走りができたのは何よりだった。コースを知らない一発勝負の条件下できっちり追い込む事ができた。あまり気負わず、緩めのペースで入ったことが結果的にはちょうど良かったのだろう。ペース配分ってホントに大事だね。
スイムが17位と最も良く、ランが22位、バイクが24位で最も振るわなかった。最近の調整具合が如実に結果として現れた。
当初考えていた4時間半という目標は全く届かなかった。スイムが思ったよりもかかり(2.5kmより長いと信じたい)、バイクがそれに輪をかけて遅かった。ランはキロ4分半という目標設定が高すぎることを走ってみて悟った。珠洲でもキロ4分半では走れてないのだ。今回は上手くいったほうだと思う。

そんなわけでやり残した感はなかったが、しばらく経つともう一度挑戦してみたいという気持ちになってきた。やはり独自性があり変化に富んで少しキツイコースは面白い。平凡で楽なコース条件だとどうしても焦点は他人との競争になってしまう。まだ4年目と若い大会ながら、毎年存続の危機が危ぶまれているようだが、近場の人はぜひ参加しなくちゃもったいない。古き良きトライアスロンの雰囲気やスピリッツが残されている点も評価したい。

RESULT
Total 4:39:17 (Place 16/340)
Swim 45:49 (17) Bike 2:18:53 (24) Run 1:34:35 (22)