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第16回佐渡国際トライアスロン大会Bタイプ参戦日誌
9/5(レース当日)2004/9/5 TypeB=SWIM2km BIKE105km RUN20km (TypeA=SWIM3.8km BIKE190km RUN42.195km) 朝5時、真野地区の宿からメイン会場の佐和田地区まで、10kmほどの道のりをアップがてらバイクで向かった。未明に降った雨で道が濡れていたが、幸い今はやんでいる。気温はやや低く少し肌寒いほど。 ![]() 去年、18位と健闘したので、さらに上の着順を狙うとなると、今年の目標はとても狭き門に思えてきた。スタート直前になってそんなことを考えるのは、Bタイプ総勢540人の選手を前にして不安が募ってきたためだろうか。午後7時ジャスト、風はなく曇天の空模様のなか、今年は浜辺からのスタートとなった。皆一斉に水しぶきを上げ勢いよく駆け出していく。スイム2キロの始まりだ。 「慌てるな! しかし、気を緩めるな!」 それが、スイムで言い聞かせたことだ。周りのペースに乗せられてガムシャラになってもいけないが、プールで泳ぐ時の冷静さと緊張感は常に持続せよ、ということだ。幸い、プールに近い凪で、心配されたクラゲもいない。水温は25℃とちょうどいいが、朝方の雨のせいか水質はやや濁っていて海底は見えない。不思議と、浅瀬の方が澄んでいる。大したバトルもなく、程なくして第1コーナーのブイを曲がった。このあたりで既に人はバラけていて、ちょうど左前方にペースメーカーを見つけて淡々と泳ぐ。中間地点の1000mで時計を見た。15分54秒、まあまあだろう。やがて第2コーナーのブイを曲がる。午前6時にスタートしているロングのAタイプの選手とはここから合流だ。Aのスタート後80分以上経ってまだこの位置にいるってことは少々遅めの方々。速度差がありすぎて、突然目の前に脚がぬっと現れる。キックをする踵に顎の下を思いっきり喰らった。舌を出していたら噛み切っていたかもしれない。冷や汗ものである。 ようやく海底が見えてきてラストダッシュし、34分31秒でフィニッシュ。後半は前半より2分40秒ほど余計にかかり、やはりタレてしまったようだ。単純比較はできないが去年より悪いタイム、だが実況中継の声が僕を紹介している。結構いい位置で上がったのかもしれないぞ。 バイク片手にトランジットの中を走っていると、柵の外から僕の名前を呼んで応援してくれる女性が一名。「どうもです」とお礼を返したが、見覚えの有るような無いような・・・。どなたですか? 続けてバイク105km(実質108km)へのスタート。 早速、ショッキングピンクのSpadeAceのジャージに身を包んだ一人目の先行者を抜きにかかる。自転車レースでは恐れ多いチームのジャージを抜くのは少し気分がいい。でもミドルタイプなのにわざわざバイクジャージに着替えるというのも変った人ですな。リレーの選手かもしれないが。 しばらくは緩やかな地形の中を走るため、アベレージは37-8km/h程を維持している。あまり抑えていくつもりはない。後続の巨大集団から逃げ切る、というのがバイクの目標だ。去年は早々とトイレに立ち寄り、出てきたところで集団に追いつかれてしまった。そこで、今年も尿意はすでに覚えていたものの、集団が後半タレて散り散りになるまでトイレは我慢しようと考えたのだ。そしてその勝算はあるような気がしていた。 3、4人をパスしながら島を横断し両津まで来ると、ここから小木まで長い海岸沿いの道。去年はこの区間で追い風が吹き、楽々38km/h以上で走れた。今年は風が弱く、また若干向かい風気味のようでもあり、37km/h前後を気合を入れて維持している。そんな頃、結構な勢いのAnchor乗りに初めて追い越された。外人のような(と言うと語弊があるが)大雑把なペダリングでぐいぐいと行く。これは敵いません。さほどの時間を要さずに姿を消した。 と同時に、前方に5人目の選手を捕らえていたが、ここで出会うくらいだからレベルは拮抗しており、なかなか抜くチャンスがない。数キロの間、4、50m後方で様子を窺いつつパワーを貯め、のぼりで一気に詰めてパスした。狭い道だったが着いてくる様子もなく、フェアプレーに徹してくれたようだ。同時に女性選手を一人抜く。時間差でスタートしているエリート部門の女子だ。 ここから先は追いつく選手もなく、前後見渡す限り一人しかいない中を淡々と走ることになった。たまに降ってくる選手は、トップ争いから離脱したエリートの女子で、あっという間に抜き去ってしまう。油絵の具で描いたような雲が空一面を暗く覆い、嵐のような様相を呈していて、まるでオイラの闘魂のように荒れまくっているぜ! などとお馬鹿なことを思い浮かべる。そのうち雨も本格的に降ってきて、下りで攻められないほどのウェットコンディションになってきた。VXRSの本領を発揮できないのがすこし悔しい。 エイドを通過する時に、沿道に対しての実況の声が時々聞こえてくる。ふと、今一体何位くらいなんだろう? という疑問が湧いてきた。実のところ、サッパリ判らなかったのだ。去年の18位よりは確実に早いような予感はあったのだが、10位くらいだろうか、となるとランで去年のようなトロい走りを披露するわけには行かないな、などと体裁を気にしはじめる。そういう浮かれた皮算用をしていると後で現実を知ってガッカリするぞ! ともう一人の自分が警告を発する。 2年前から何かと話題にしてきた小木の上りも、セオリーどおりに補給類を全て放棄し、あとはフツーに走った。力まず淡々と上っていると、沿道の声援もあまりない。応援のし甲斐がないのかな。「いい感じで回しているね」などと誉められてしまった。ここでも女子一人をパスする。 上りきってしまえば、後は怖いものナシだ。集団から逃げ切る、という目標の達成が見え始めてきて、なんだかとても嬉しくなってきた。その時、上り坂の途中で沿道の誰かが叫んだ。「3位!」 えっ!? マジですか! 思わず「ホントに!?」と聞き返してしまう。 エラいことになってきた。僕の前には二人しかいないというのか。中盤で追い抜いていったAnchor乗りと、あと一人ってことか! トイレなんて行っているバヤイではないぞ! と歓んだのもつかの間であった。 突如後ろから4人のドラフティング集団が追い越していったのだ。 フィニッシュまでもうあと20kmというところでのまさかの集団に不意打ちをくらい、抗議することも忘れていた。と同時に今までの緊張の糸がプッツンと切れ、やってらんねーや!というふてくされ状態へと急降下。前後見渡す限り誰もいない状況、集団形成を回避しようと思えばいくらでも可能なはずである。後に調べたところでは、この4人はバイクスタートからフィニッシュまで殆どの行程を集団で走りきったものと思われ、特に悪質であると言わざるを得まい。 今までは、沿道の人々に礼を返しながら走っていたが、それ以降はすっかり腑抜け状態、もぬけの殻状態と化す。相当スピードも落ちていたようだが、心ここにあらずだ。 やっとのことでバイクを終えて、ゼッケンベルト片手に駆け出そうとしていると、トランジット内で立ちんぼになっている選手数名の姿が一瞬視野の中に入ってきた。そこで僕は合点がいく。ペナルティエリアだ! そうだ!そうあるべきなのだ。天罰を受けるがよい! 卑怯な4人の選手どもよ! お先に失礼! 悲しいかな、実はそれは僕の早合点だったことを後に知ることになる。だが少なくとも気持ちを切り替えるきっかけにはなった(その映像の記憶が意味するところは未だ判ってない)。 ランでは、腰高のフォームでトップ選手の走りを頭でイメージしながらストライドを大きく取る。なかなかいいんじゃないか? と思っていたら早くもハムストリングスが痙攣を起こし始めた。商店街のど真ん中で何てこった! しかもCramp-Stopを携帯してないことに初めて気づく。今までの佐渡であれほど命綱としてきた妙薬を、なぜ今回は平気で車に置いてきてしまったのか? だが、なだめながら走っていたら幸いにも徐々に鎮まってきた。その後痙攣で悩まされることはなく、その点ではラッキーだったと言えるだろう。 ランに入ってすぐ察したのが、ほんの数十m後ろに後続が迫っているということだ。一ケタ台の今のポジションでは誰よりも自分のランは遅いだろう。気になる存在ではあるが、ここで後ろを振り向いては、弱気な自分を悟られる。いやむしろ怖くて振り返れないのか。尿意はさらに増していたが、ここまできたらトイレに寄る時間が惜しいし、一気に調子を崩さないとも限らない。 二つ目のエイドに来ても、後続はまだ着かず離れずの位置にいた。ちょうど5km地点、ようやく距離表示に出くわして、ここまでのペースを確認することができた。21分53秒。1キロペース4分半を余裕で切っているのには驚いた。ラン20kmの目標タイムは90分、キロペース4分半と考えていたのだ。 心肺も適度に目一杯で、調子はよかった。雨はバイク終盤頃に止んでいたので、すこし蒸し暑さを感じていたが、スポンジで充分に体を冷やせばエイド間は持つであろうことが判っていた。 日陰のない田園コースを経て、幹線道路へ入るといやらしいアップダウンが待ち受けている。例年このきつい上り坂でズルズル後退していたから、今回もここで後続にパスされることを覚悟していた。だが意外にも後ろは近づかなかった。やがて、反対車線をトップ選手が通過し、10kmの折り返しに到達したところで自分が6、7位くらいであることを知る(正確には6位)。ここでやっと、迫り来る黒いオルフェを初めて確認することになったのだが、その時の彼はとても速い走りに見えたので、ずっと追ってきていた張本人とはまた別の人物かと勘違いした。実は、自分自身も結構なスピードで走っていたのだ。5kmから10kmまでは、あいづ10kmより速いキロペース4分4秒だった。ますますわが目とTIMEXを疑う(後になって考えれば、5km地点の看板の位置が100mほどずれていたのではないかとも思う)。どうやら、ランは絶好調のようだ。 折り返し後のアップダウンもなんとか乗り切り、田園地帯へと入ろうとした頃、少し集中力が散漫になりはじめ、スピードが落ちたかもしれないと感じてペースアップを試みた。だがその数十秒後に、下半身から異常のサインを感じ取る。そして500mもいかないうちに、足首を固定するスネ周りの筋肉が終わってしまった。一つのネジが緩んだ拍子に次々となだれのように歯車が崩れていく。 ピッチ走をこころがけよ!という掟を破り昔のストライド走法に頼りすぎたためか、途端に足首より先が言うことを聞かなくなり、足の裏をアスファルトに打ち付けるドタバタ走りへと変わる。本来内股の足がますます内股になりフォームが崩れていくが、スピード低下をなんとか食い止めるためには、パンクしたタイヤでも走りつづけなければならない。 残り6kmあたりでは膝から下が枯渇し、スピードを維持できなくなった。当然ながら、地獄のような辛さだ。5km地点のエイドまであと400mというあたりで、とうとう追い越される。「何位?」と聞かれたけど、頭も回らず「判らない」と答えた。やっとたどり着いた5km地点のエイドだが、実は欲しいものは特にない。一瞬、紙コップのCCDを飲み干すために歩いたが、休んでも埒があかないのですぐ走り出す。ここまでの5kmは20分44秒(キロペース4分9秒)。ツブれてスローダウンしたはずなのに、なぜだか相変わらず速い。折り返し直後に飛ばしすぎたのだろうか? いずれにせよ、ここ15kmまでの自分のスピードは実力以上の走りだったことは間違いないが、そのスピードだからこそ後続の追い上げを免れたのであり、このあとの凡々スピードでは、何人に追い越されるかわかったものではない。それを思うとぞっとした。 案の定、1kmほど行ったところでまとめて二人に抜かされる。しかし、その場の辛さは絶頂に達しており、順位へのこだわりなどすでになく、今すぐ止めたいという気持ちで埋め尽くされていた。もう残り4kmほどなのだが、とてもそんな距離を走り通す気になどなれない。今になってみるとそれがどれほど辛いのか感覚的なものは全く思い出せず、確かにそう考えていたという事実が記憶に残っているのみだが(だからこそ、人は何度もチャレンジできるのだろう)。気分を変えてサングラスをはずしてみる。すると一気に目まいに襲われ、砂まじりの映像はさらに歪み始めた。いかん、このままでは自律神経が狂ってぶっ倒れそうだ。慌ててサングラスをかけなおす。 残り2km、いったいいつになったら佐和田商店街は現れてくるのだ? と恨めしさも覚える。もう足には何もエネルギーが残ってない。ああそうだ! ポケットにCarboShotsを入れていたのは何のためだい? 二つ一気に飲み干すが、もう手遅れだったか。 ようやく商店街の花道へときて、終わりが見えてくると気持ちに少し余裕が出てきた。ラストスパートは出来ないが、せめてスマートな走りで最後を飾ろうと思った。サングラスを再びはずして、ふらつくのを抑えつつ、 9位でゴール。 意外に近くにいた8位の人とは思わず握手をしていた。終盤で3人に抜かれたのは不運などではなく完全に力量不足(ラスト5kmはキロペース5分9秒まで落ちた)。佐渡で初めての一桁順位は上出来の結果だった。 ゴール後、すっかり天候も回復して晴れ渡る夏空の下、毎度のTさんと生ビールで乾杯する。この瞬間がたまりませんね。Aタイプゴールをぼんやり眺めて、午後7時すぎまで会場でのんびりしていた。その後クルマで宿へ帰る途中、ランコースを横切ることになったのだが、反射テープをたすき掛けして発光リングを手に持ったAの選手たちが、街灯もない真っ暗な道を黙々とゴールを目指す姿が大変印象的だった。 * * * * *
バイクで一気にやる気を殺いでくれた4人のドラヲ達は、結局2位から5位までを占めて翌日表彰台に上っていた。人口密度が高く集団になりやすい中盤の選手ならともかく、こんな上位選手が大勢見守る中堂々と見事なドラフティングを決めてレースをものにする、こんなことがまかり通っていいのだろうか? みな分別あってしかるべきオッサン達で、子供連れでゴールした地元選手もいる。「パパはこんなに汚い手を使って地元で花を咲かせたんだよ」と子供に正直に自慢してやるがいい。 RESULT
Total 5:15:31 (Place 9/538) 年代別2位 Swim 34:31 (8) Bike 3:12:16 (11) Run 1:28:44 (17) |
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