ツインリンクもてぎ100kmサイクルマラソン2004参戦日誌
2004/1/4
栃木・ツインリンクもてぎ 100.8km

本格的なクルマのサーキット、ツインリンクもてぎの本コースを自転車で21周するというレース、自転車の種類は何でもありだが、事実上の大規模ロードレースである、と噂に聞いて、出てみることにした。
まだ日の昇らない5時に家を出る時は気温5度ほどだったが、常磐道の柏を越えたあたりから温度計は見る見る下がり、7時過ぎに茂木に到着したときはマイナス3.5度であった。南ゲートへ曲がろうとして下り気味の右折レーンで減速すると、ンガガガガッと見事にABSが作動(初体験)、しかも全然止まらない。周りに何もなくてよかった・・・。

当然、外はモーレツな寒さ。温暖化のせいで、ここ数年マイナス気温を体感したことはないんじゃないか? バイクをセットしながら、まずは道中で買ったサンドイッチやおにぎり等を半分ほど食すが、昨日食べ過ぎたためか全然食欲が湧かない。
前日の夕食はピザとうどんとピラフ(全部冷凍食品だ!)でトータル2.5人前のボリュームだったと思う。お陰で体重は1キロ太った。しかし、急なダイエット(減量)がすぐ元に戻るように、急な増量は心配無用、ということを最近実感していた。すぐさま脂肪として定着するのではなく、手早く取り出せる位置にストックされているだけなのである(もちろん、すぐ取り出せばの話で、猶予期間を過ぎるとマジ脂肪化する)。これはつまり、カーボロードと言えるんじゃないの? などと思ったんである。いや、単に欲ボケで食べ過ぎたのを都合よく解釈していただけなのだが。

受付を済ませた後、寒いのでコート類も全部着たまま試走に出かける。1周4.8kmのコースは、予想より道幅が広く、アップダウンも少ない(1周の高低差は37m)。今日もフロントインナーは使わなくて済みそうだ。寒いけど満点の晴れ陽気に心はウキウキ。こんな特別なコースを腹いっぱい走れるなんて、実はすんごく面白いんじゃないのさー? どうよ?
バックストレート(ダウンヒルストレートと言うらしい)の終わりは結構きついコーナー。ここで、先ほどのABS体験が脳裏に浮かぶ。ここは最もスピードが出るポイントで、下りコーナー、しかも日陰である。道全体に霜がかかっている、ように見えなくもない。何の前触れもなくつるりんとスッこけてしまうんではないか? とびくびくしながら通過。20km/hくらいだったと思う。本番はどうするつもりだ!?
バタバタと準備は続き、スタートの9:00までもう残り少ない、という時刻になっていた。周りを観察すると、だれもスペアタイヤを携帯してない。パンクしたら最悪5km近くもリム打ちで走るはめになるんだぞ! まあでもこんな整備されたサーキットでパンクも無いか。というわけで、スペアタイヤと空気入れはパドックに置く。
DHバー装着は最後まで悩んだが、結局外す時間がなくなったのでそのままに決定。ま、要らなかったら使わないだけのことだ。
100キロノンストップのため念入りにトイレに行き、いそいそとスタートラインに行くと、そこにはものすごい数の自転車と人。DNSを見込んでざっと800人ってとこだろう。これが一斉スタートする。できるだけ前方に行ってはみたけど、それでもスタートラインまで150mはありそう。ま、いっか。どうせ、巨大トップ集団が長い尾を引いて形成されると聞いていたし、自分の周りの人はチームジャージも多く、初っ端からマイペースなんて人は居なさそうだ。

しかし、判断は甘かった。甘すぎた。9:00スタート。
あまりに人が多くて、集団という感じじゃない。これは、ただの混雑である。
先頭は、早くも見えない。焦って前を追う。
しかし、トップより劣る自分が、トップより30秒も遅くスタートして、トップより走りづらい条件で、トップに追いつけるわけがないのである。
前方では早くもあちこちで中切れを起こしている。こら! おまえら! 責任もって詰めろ。じゃなけりゃスタート位置をそんな前にするな! 
無駄に脚力使いまくってやっとポジションを上げてきたかと思えば、そこにのんびりテロテロと走っているMTBなどを見かける。いやむしろMTBはカテゴリーが別だから責められないか。
そんなことをしてすっかり貯金を使ってしまった。3周目あたりで先頭集団への淡い期待はキッパリ諦めた(遅すぎると言われそうだが)。速そうな集団を求め、時には一人旅。こんな時のため早くもDHバーに頼る。第何集団だか分からないけど小集団が徐々に形成され、そのなかで走る。
まあ、そうは言っても、集団走行自体自分には珍しいことなので、ウキキーと面白がっているのであります。ただ、見ると先頭交代なんて全然してないんだよね。これだから後続集団は益々遅いのだ。大抵は、ずっと一人が延々と引いている。集団はミラクルスピードにならず、その一個人の平凡スピードにしかならない。ただ楽チンなだけ。そのうち先頭がバテてスピードが落ちる。集団としての価値がなくなりかけているその時に、なぜ交代しないんだ? 来るところまで来て、やっと後続がワーッと覆い尽くして入れ替わる。その繰り返し。見ると、名だたるチームジャージばかりなのに、なぜなのかな。僕は、絵に描いたような軽快な先頭交代がやってみたいのだ! そこで、集団トップの2番手につけたら、暫くして右からスゥーっと抜かす。また暫くして、スゥーっと左にずれて走路を空ける。へい! おまえの番ダヨ!

結局一人芝居。うーん。なにがいけないんだろう。

集団走行のお陰か、それ以上に今日は穏やかな日和。風をほとんど感じない。レース前は寒さ対策に不安があったが、ほどほどの防寒にしておいてよかった。冬用ジャージを2枚重ね着したけど、ちょっと暑い。走り始めにはすでに7度ほどで、徐々に11度まで上がった。きっとこの地方では暖かい方だろう。
ところで、今日のレースでは自ら試練を与えるためとして、800gのウェイトを背負って走ることにした。
というのはもちろんウソだけど、2つの満タンボトルの片方と、2つのゼリーは、ゴールまで全く手付かずだった。補給し続けなければ、と常々思いながら走っていたのだが、まるっきり何も摂る気にならない。唯一、アミノサプリだけ意識して飲む。前日の自己流カーボロードが効いているみたいだ。結局、補給に関しては何の問題もなかった。次回の参考にしたい。

試走ではびくびくモノだった下りコーナー。実際には、周囲の減速に苛立つほどだった。折角下りで勢いに乗ったのになぜそこまでスピードを殺す必要がある? 下りは苦手意識が昔から強かったが、苦手なのではなく単に無謀なだけなのかもしれない。まあ、適正スピードを見出せないことこそ下手な証拠なのだが。

9周目あたりで、後ろからオートバイがビービー鳴らしながらやってきた。とうとう先頭集団にラップされることになったのだ。ウヘーすごいスピードと大人数。果たして、スタートをうまくやっていたらトップ集団についていけたのだろうか? ということが知りたくて、最後尾にチョコンと乗っかった。今までの10人ほどの小集団とは段違いに楽チンだ。その代わり、スピードも半端じゃないぞ[後日追加。トップ集団は異常に速いが、ダウンヒルストレート終わりの急な下り右カーブ手前では、逆に集団のほうがはるかに減速しており、10km/h以上の開きがある。面白い発見]
平地や下りでは引っ張られているように進む。しかし、上り区間はスピードに比例した努力が必要で、はるかに頑張り所となる。平地で脚を貯め、ここぞとばかり坂で脚を使う。結局、先頭集団に居るのと、後続のさえない集団でヒーコラやっているのと、体力的にはほとんど差がないのは心拍データからも読み取れる。
しかし、先頭集団は終始尋常でないスピードでいることを忘れてはならない。遠慮がちに最後尾に居たので、集団が中切れしているのに気づくのが遅れた。おそらく、この巨大トップ集団も、後ろの数十人は僕と同様の1ラップ組だったのかもしれない。ヤバイ、と思って猛ダッシュ。ところが、一度切れると、その集団の速さは一人馬力では太刀打ちできないのだ。それでも、上り区間に入って何とか追いつく。しかし運悪くここでアクシデント発生。10m先の一人がハデに斜行したらしく、周囲は一気にざわめき立った。僕はこれをまさかの落車と勘違いしてフルブレーキ。わずかそれだけのことで、予定外に売り切れた脚ではもう後を追えず、一気に後退してしまった。トップ集団に居つづけるためには、こうした咄嗟の障害を乗り切るパワーも必要なのだろう。そして、集団の後ろはそういう別のリスクがあるということだ。
先頭集団からはわずか2周半で千切れてしまった情けない結末。同様の千切れ組が自然に集団となってまた走り始める。
集団で走っていると、走りのペースは集団のペースに等しくなる。そのあとの数周はかなり遅くなった。言い訳がましいが、これは自分がバテてしまったからではなく、たまたまその集団のペースだったのだ。集団のペースを上げようと色々試みるが、この頃になると周りはかなりヘタっているのか、ちょっとしたペースアップにもついてこないということがよくある。つまりうっかり千切っちゃっているのだ。当然、一人旅は限界があるのでいずれペースが落ちる。すると、いつしか追いつかれている、という繰り返しだ。あまり賢い走り方とは思えないけど、のんびり列車に乗り続けるのも退屈なのでつい行動に出てしまう。
あんまりのんびりなので、19周目でまたしてもトップ集団にラップされた。さすがに2ラップされたときは意気消沈。性懲りず後続にチョコンと乗っかってみるが、集団後方はやはり僕みたいに「ギリギリで引っ張られている人」ばかりなので、結局中切れを簡単に起こしてハイそれまでよ。2周早いトップ集団はラストに向けペースも上がっていたのかもしれない。
ラスト1周。ちょっと気張って走ってみた。集団を気にせず、DHポジションで一人で踏めるだけ踏む。あやかって乗っかってくる人もいて、それはそれで嬉しい。上り区間を終える直前で、乗っかっていた人がドドッとスパートした。ちぇ。見捨てるのかよ。ま、しょうがないけど。
ラストのホームストレートではDHポジションでもがく。前にも後ろにも居ないけど。うーん、筋肉にいい感じの刺激。じんわりしたところで終了。でも心拍は160どまりだった。心臓より脚を使い切り。

面白かった反面、口惜しさの残るレースであった。

ラップ毎の心拍数(最大/最小/平均)と平均速度

でもどうだろう、スタートポジションで最善を尽くせば、トップ集団についていけただろうか?
多分、10周くらいまでは行けたような気もするが、100kmはやはり贔屓目に見ても無理だったろう。どちらにせよラップされてしまったら終わりという気がする。