幕張新都心トライアスロン参戦日誌
2003/10/13 
Bike30km + Run10km
今年の幕張大会は、レース準備段階からいろいろと波乱づくしだった。プロ野球の試合日程が長引いたことで浮上した、「マリンスタジアムが会場として使えないかもしれない問題」は、試合が無事消化され事なきを得た。次に、スイム、バイクの制限タイムが異常に短く設定された問題。ITUワールドカップをすぐ後に控え、過密スケジュールを余儀なくされたが、よりによってスイムの不得手な選手が35分以内に泳がなければならないという本末転倒の事態になった。これは、タイムの遅いグループからのウェーブスタートに変更されておさまった。

ところが、波乱はそれだけではなかった。

当日朝4時に起き、朝食をかきこむ。心配していた雨は止んでいるが、未明から強くなった風が窓をガタガタ言わせていた。だが、まさかこの風が、スイム中止を招く程であることなど想像すらしていなかった。順調に5時半には幕張メッセ駐車場にクルマを入れ、会場へと向かう。途中で通りかかる河口のうねりを見て、「今日はスイムが面白くなりそうだぞ」と考えたくらいなのだ。
だから、スイム中止の情報は、まさに寝耳に水であった。ここ2-3日で急にスイムが本調子となっていただけに口惜しかった。替わりの第1ランはなく、いきなりバイクからスタートで、さらに、6周回する予定のところを5周回に短縮されている。トランジットから20mほど離れた位置から順次一人ずつのウェーブスタート。1秒当たり5人?は飛び出す怒涛の勢いで選手が出て行く。トランジット内はたちまち人の行列ができ、バイクスタート地点は渋滞が発生した。当然である。なぜ明言どおり1秒間隔でスタートさせないんだ!? かなり後ろの方だったが、ほどなく自分の番が回ってきて緊張感なくスタートゲートを越える。ストップウォッチをセットしていないことに気づいたが、あまりにイレギュラーなレースなのでどうでもいい。
バイクは案の定ものすごい海風で、ディープリムはさすがにハンドルを取られて大変だった。基本的には横風だが、場所によっては平地でも時速30kmを下回り、その反対車線では逆に50km/hオーバーだ。高台となる橋の頂上で、風に煽られたのかコケている選手がいた。ランで肺を締め付けられ苦しくなるのを嫌気して、Polarの心拍センサーをつけるのをやめていたが、むしろ今回こそ必要だったかもしれない。風とこの混み具合でペースは乱されっぱなしだからだ。1周目に飛ばしすぎ、2周目以降極端にペースダウンしてしまった。かなり気温が高いことがわかっていたので、計画的に水分補給を行うが、ちょっと胃が辛そうなのがわかる。
去年はドラフティングをほとんど見なかったが、今年はこの風のために、あからさまなドラフティングを方々で見かけた。マーシャルに注意されても平然と違法行為を続けている奴がいて、気がつくと注意していた。奴にランで置いていかれたのは口惜しい。

平均/最高速度 36.5/ 53.9 km/h
平気/最大回転数 97/115rpm


実測値30.4kmの短いバイクを終え、ランに入ると、先日の佐野のときのような軽快感はまったくなかったのでかなり失望した。おまけに、胃なのか肺なのか、胸のあたりが詰まった感じでやけに苦しくってしょうがない。朝食の時刻が遅かったか、採り過ぎか、バイクで水の飲みすぎか、よくわからない。2kmポイントの通過タイムを確認した拍子に、なにかが滅入らせたのかプッツリと集中力が切れてしまった。最も重要な「やる気」を失ってしまったのだ。この暑さも少なからず影響していただろう。途中から太陽が「じりじり」と季節はずれの強さで照りつけてきた(このときの気温は恐らく27度前後)。いかに楽に10キロを乗り切るにはどうすればいいか、ということばかり考える。シーズン最後の締めの大会、しかも、友人がわざわざ応援に駆けつけてくれたというのに!
幕張ベイタウンの中はいつもながら優雅な気分になれる。ただ、まだ朝が早すぎるのか、ひっそりとしていつもの賑わいはない。相変わらずキレのない走りが続く。
折り返して5km過ぎ、やけにピッチの早い足音が背後から迫ってきた。なぜかそれが女性であることを直感する。
選手名簿のなかに、昨年の原町でことごとくブッちぎられたS嬢の名前を事前に確認しており、今度は負けたくないと思ってはいたのだが、実力的には贔屓目に見ても微妙だった。そのS嬢にいよいよ追いつかれたのだ。バイクで先行できたことは少なからず進歩といえたが、こんな弱気なランをしていたのでは、追いつかれても当然だと思った。抜かされて、一時はついていこうと思ったが、すぐ諦めるその居直りの早さからして、いかに身の入らないランをしているかをもう一人の自分が責めたてる。が、聞く耳を持たない。
正面遠くにマリンスタジアムを見据えつつ、追い風に背中を押されて走る7km付近、状況が変わってきた。一時は40m以上離されたS嬢の背中が少し大きくなって見えてきたのだ。そういえば、ふと邪念をすてて黙々と走っていた瞬間があった。この走りを続けよう、初めて前向きに気持ちが切り替わる。彼女も本調子ではなかったかもしれない。8km地点でパスしたが、セミプロ級の彼女のことだからラストスパートには強いだろう。しかもレースナンバーは僕より後だから、スタートも10秒は遅いはず。できる限り引き離さんと、残り少ない集中力をかき集めて踏ん張る。ラストは友人のゲキに励まされ、やや長いラスト500mのスパート。無事追いつかれることなくゴールゲートをくぐった。
今シーズン最後のレースは、こうして幕を閉じた。

風と太陽に悩まされたレースだったが、意外にも千葉県選手権の部で入賞することができた。こじつけっぽくてあまり自慢にもならないけれど、賞とはまるで無縁だった一頃の低迷期から見たら上等だろう。来年はぜひ3種目やって賞を狙いたい。志は高く、ということで。

嵐のようにうねった海のためにワールドカップはスタートが1時間も遅れ、スイムは河口に程近い川の往復に急遽変更された。こんな荒波でも、恐ろしく速いタイムで上がってくるプロたちには脱帽モノである。しかし、やはり自分もスイムがしたかった。
男子も女子も、ニューバランスチームが上位を独占していた。コンスタントに良い成績を、何でもないことかのようにあっさりと実現してしまう彼らは本当にすごい。

弁当も参加Tシャツもとび賞もない物足りなさを残しつつ、すべての日程が終了。ファミレスで友人と遅い昼食をとっている頃、洪水警報が出るほどの豪快な土砂降りに見舞われた。
スイムを中止に追い込んだ風が恨めしかったけれど、この豪雨よりはマシかもしれない、と思った。とにかく、波乱尽くしの空模様であった。

佐野のときは、レース後の体のダメージは相当なもので、まともに歩くことすらできなかったが、今回は全くと言っていいほど筋肉痛やだるさが感じられない。本番で追い込めなかった証拠なのだろう。レースに向けていつになく集中を高めて、期待をかけていたレースだったので、スイム中止による反動が大きかったのだろうか。どうあろうと、本番でパワーを出し切れるかどうかも能力のひとつであることには間違いないだろう。