第15回佐野トライアスロン参戦日誌
2003/9/21 
オリンピックディスタンス

台風15号接近のために前日から雨が降り続き、おまけに肌寒い。レース日早朝4時40分に自宅を出発、高速道路は視界不良で肩に力が入る。こんな雨の中、何を好んで佐野に向かっているというのだろう。寒いのが苦手な自分としては、レース中止の想像ばかりして気合が入らない。蓮田SAで自前の弁当を食べる。
会場に着くと普段どおりの賑わいにホッとする。でも後で聞いたところでは出走者は申込者の半分くらいだったらしい。雨の中での準備は何かと手間がかかり、そういえば初めてに近い経験だ。車の中にこもってナンバーを留める。土砂降りではないが決して止むことのない雨。幸いなことに、風は全くない。

SWIM1.5km
少しスリムになったせいか、ウェットがいつもよりすんなり着れた。1年ぶりに会う友達にも、「去年はポッチャリとしていたのに・・・」と言われた。そんなに変わったのかな?
1周250mの変形ドーナツ型プールを6周回。4グループにわかれ4箇所からスタートする。自分は白帽子グループだ。
昨年は飛ばしすぎて早々とバテたので、今年は落ち着いて行こう、と考えたのも最初だけ、スタートすると激しいバトルが待ち受けており、くっそーという感じで思いっきりペースが上がる。しかしバラけたり一歩前へ出るわけでもなく、しばらくは鮭の川登り状態は続いた。似たような実力で、コースに慣れた熟練者ばかりか、皆最短ラインをとるからなおさらだ。もうちょっとグループのレベルを分散してほしい。
心配したほどの中だるみはなくそこそこ目標タイムで6周目を終えそうである。ブレスの瞬間、すでに泳ぎ終えた白帽子がプールサイドを走っているのが見える。コラッ、プールサイドは危ないから走っちゃいかん。オレが上がるまで待ってくれ。
先日の佐渡とは対照的な1秒を争う雰囲気に、ちょっと閉口。ギャラリーが「トップから○○秒!」などとまくし立てるものだからなおさらだ。佐渡では、のんびりした雰囲気がないショートは出たくないという意見を方々で聞いたが、ちょっとわかる気がした。佐野は会場が狭いので慌ただしさも特に目だつ。
すでに十数台はバイクスタートした模様。集団化しそうな勢いで選手が続いている。昔の佐野はこんなだったかな?

BIKE40km
アクシデント発生。サングラスの鼻当てがない! くそっ、どこで落とした? 10年前も同じミスをしたことがある。OAKLEYのサングラスはそこが欠点だ。簡単にポロッと取れるように作るなよ。コンタクトをしているのでサングラスは必須。位置が悪いとしぶきが目にかかるので、かなりの痛手だ。
まだシューズを履いている最中の2km付近で、大柄な選手に抜かれる。耳慣れないブランドのフレームで、今も思い出せない。国道を横切る交差点にさしかかったとき、目の前の彼が道路中央の金属物に乗りバランスを崩した。不慣れのため進路に戸惑い、路面状況を見落としたんだろうと思って見ていたら、道端へフラフラッと流され、一向に態勢を取り戻せないまま田んぼに後輪をズデっと落として思いっきりスッ転んだ。何やってんだ。「ダイジョブかぁ?」と思わず言ってみた。まさに魔物が口をぱっくり開けているところへ吸い寄せられたのだ。それを見て慎重に走ろうと思った。幸いにも彼は4,5分もしないうちにまた抜いていき二度と見ることはなかった。速い。
ZIPPのカーボンリムは濡れるとブレーキの効きがかなり悪いことを今日知る。コーナーで必要以上に減速するが、周囲の選手も僕以上に慎重だったので困らなかった。みんな、バイクテクニックには自信があまりないのかな。
早くから前後に選手がぽつぽつと居て、レベルも似たり寄ったりなので団子になるかと思ったが、タイヤが豪快にしぶきを上げるために露骨に後ろにつく奴はあまりいない。ただ、折り返し後の45km/hは出る下りで、たまたま並走したクルマに50cmと離れずピタッとくっついて走っている奴がいた、またしても誰とは言わないが。この雨の中、自殺行為にも程がある。大馬鹿者と言いたい。
ペダリングに合わせて正弦カーブを雨の路面に延々描き続ける、極端に横ぶれの激しい選手がいた。彼の距離計は常に僕らの1.3倍を示すに違いない。名のあるクラブチームのウエアを着ているが、仲間から指摘されないのかなぁ? 引っ掛けられてはたまらないので2mは離れて追い越す。バイクゴール近くでまた追い越された。うわっ。近づくな(笑)。
ゴール手前500m、指先がかじかんでバイクシューズの締め具がなかなか緩められないという初めての経験。相当寒かったことに初めて気づいた。

[Polarバイク区間データ]
平均-最大速度35.9-50.0km/h
平均-最大心拍数149-161bpm
平均-最大ケイデンス97-112rpm
高低差162m (Altitudeの絶対値は不正確)
気温15℃



RUN10km

バイクで補給を怠ったためか、それとも朝飯が少なかったか、バイク終了間際にハンガーノックの気配を感じたので、ウィダーENERGY INを持ってランスタート。早速走りながら半分飲む。沿道ではどこかの大学生集団が「入賞狙えるぞ! 行け行け!」などとメンバーに向かってゲキを飛ばしている。入賞は無理だろう? と無言の突っ込みを入れつつ、煽られてこちらも飛ばした。というか、無性に脚がよく動く。この雨と気温の低さは好条件だ。こんなに向こう見ずなまでに飛ばしたのは本当に何年ぶりだろう。約2kmまでに3人くらいをパスした。雨脚がすこし弱まってきた。もう少し降ってくれるとちょうどいいんだが。
1人に抜かされた。バイクで同時ゴールした、先ほどのユニークなペダリングの選手だ。熟練アスリートの身体つきをしている。付いていけるかなと思ったら、付いていけた。佐渡では付かれる側になって気分的に参ったので、今回は付く側に徹する。暫く二人で黙々と走る。僕にとって絶妙のハイペースだ。
ずっと昔のアジア波崎大会で、シンガポール人選手の後ろを粘り強く付いていったレースを思い出した。あの時はおかげで限界以上のペースを維持できただけでなく、最後に追い越して、自己ベストのランスプリットを出したんだっけ。でも今回はそうはいかない雰囲気。6kmあたりで腹が張ってきた。さっきのウィダーが滞り、逆流してきて気分が悪い。ちゃんとレース用のものを飲まないとダメだな。
いつまで付いていけるだろうか、と自問するがそれは、いつ楽になりたいかという弱音のサインでもあった。そして精神力は7kmでプッツリ途絶えることに。ここまで引っ張ってくれてありがとう。一気にペースダウン。瞬く間に離される。ペースが落ちると、脚がみるみる重くなってきた。佐渡の疲れが残っているかのような、根の深い重さだ。もう今までのようなスピードと腰高のフォームは二度と取り戻せないことを悟る。トップアスリートの気分で走った7kmと、いつもの自分に戻った残り3km。魔法は完全にとけてしまったのだ。
ラスト1kmのところで、後ろからひたひたと確実な足取りの音が聞こえた。ここにきて順位を落とすのか。足音はもう間近で、抜かされるのは必至だろう。だが、ここで踏ん張らないでいつ全力を出し切るつもりだ? せめてもの汚名返上とばかりに、くたばっていることを悟られまいとペースを上げた。足音はしつこく聞こえてくる。ゴールまであと僅かだ。持ちこたえるのか? 怖くて後ろを振り向けない。
力の入れどころがわからないギクシャクしたフォームでラストスパート。やった、無事逃げ切りゴール。完全燃焼できた。

気温のおかげで、ランでは久々に(佐野ではかなり久々)40分を切る走りができた。だが、潰れたことはやはり悔いが残る。まだまだランは課題が多い。

レース中は丁度いい按配だった気温も、ゴール後は寒さが堪えた。この天候を読んでのことなのか、いつもの用意される弁当は佐野ラーメンにとって代わった。まあ、佐野ラーメンがなぜ有名なのかよく判らないけど、なんと粋なはからいだろう。手間隙かかることに挑戦したスタッフにエールを贈りたいが、できればその一杯にかなり待たされるのは改善してほしいところだ。