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第15回佐渡国際トライアスロン大会Bタイプ参戦日誌
9/5金曜日(レース二日前)2003/9/7 TypeB=SWIM2km BIKE105km RUN21.1km (TypeA=SWIM3.8km BIKE180km RUN42.195km) 早朝5時ジャストに自宅を出発、首都高池袋線・外環を抜け関越道へ入る。9:40のフェリーに間に合いそうだとわかるとエコ運転に切り替えた。中ノ島見附の手前、長岡でガス欠寸前のため下り、下道で寺泊へ。出航まで40分を残す余裕さで到着したが、それでも僕が最後のクルマだった。関東から佐渡へ渡る場合、この寺泊-赤泊間を利用するのが時間と金銭の両面でベストだが、なぜか多くの人がメジャーな新潟西港を利用する。そういう自分も去年までそうだった。手馴れた人がこの港を利用するのだろうと思うと、待合所にたむろする集団はみな強豪に見えてくる。 船上であることを忘れるくらい揺れのないフェリーが赤泊港へ着くと、そこはちょうどバイクコース途上である。コース下見を兼ね、海岸沿いを小木方面へのんびりとクルマを走らせる。小木は情緒溢れる港町で、街中の蕎麦屋に立ち寄るアスリートを羨ましく見送る(外食が苦手な私)。 去年、この小木からの長い上りに苦しめられたので、もう一度よく下見して、必要ならばひとつ軽いギアに付け替えようと考えていた。ウエアもちゃんと着替えてまじめに試走開始。すると、なんともあっさりと最高点へたどり着いてしまった。POLARによると標高差123mを2.3kmの距離で上っている。ギアも39T×23Tでなんとか行けそうに思えた(去年は後ろ25Tだった)。 ![]() 佐和田で選手登録と競技説明会をすませ、新穂(にいぼ)の民宿へ向かう。宿はBタイプのバイクコース途上、Aタイプのランコース途上にあった。まさに田舎のしんみりしたところだ。夕方2キロほどジョギング。脚がよくまわり、気持ちいい。 夜9時頃になって、同部屋の人とビールを飲んだ。とても気さくでかざらず、人情もあり、感じのいい人だ。このときのビールの美味さは忘れられない。 9/6土曜日(レース前日) 夜中に天候が急変し、強い風と大粒の雨が降った。朝になると止んだが、不注意にも外に出したままのバイクがずぶ濡れになった。風は収まらず、空もよどんでいる。大会会場の佐和田の海へ行ってみると、かなり波が高く、スイム中止かと思うレベルだ。波は高くてもいいから、中止にだけはしないでくれと願う。 今日は禁酒して夜8時半ごろ床に就く。ぐっすりと眠った。 9/7日曜(レース当日) 気になる天気も予報では曇りで日中は晴れ、風はなくきわめて穏やかだ。Aタイプにあわせて朝3時に食事するが、Bタイプはスタートが1時間遅いから食事もその分ずらすべきだったか。4時半に宿を出発、今年から新設されたトランジット近くの駐車場が意外と不人気で、そこに止める。ディスクホイールをゴウゴウ唸らせてローラー台でウォーミングアップするエリート選手を見かける。 バイクラックで準備作業をしていると、去年レース後に自然と意気投合したTさんが現れた。うれしいことにナンバーが隣だったのだ。因縁の対決ですね、と親しみを込めたつもりで言ったが、思わず口に出た因縁という言葉に我ながら密かな執念が宿っていると感じた。去年はバイクで競った挙句、ランで大きく差をつけられたのだ。 バイクのシューズはペダルにセットしておくべきか、決めかねずにいた。ほかの選手を一通り見てまわると、ほぼ全員セットしていないのには驚いた。ソックスを履くのならセットしないだろうが、そう誰もが履くとも思えない。エリートの選手権クラスを見ると、逆にほぼ全員セットしていた。自分のバイク位置からは乗車ポイントまでが結構長いことを見て(バイクを押して走る区間が長い)、結局セットすることに決めた。履きにくさで問題を抱えているシューズだが、出だしを抑えるにはむしろちょうどいいと考えた。 6時にAタイプがスタートして40分、最終入水チェックを済ませて海岸エリアに入る。程なくして小グループの日本選手権クラスがスタートしていった。つづいてBタイプ550名がスタート地点に移動、今年もスイムでは皆消極的と見え、最前列近くまで行き7時のスタートを待つ。そこはもう胸ほどの水位があり、スタートテープをずっと掲げているTシャツ姿の高校生スタッフが辛そうだ。陸上自衛隊のファンファーレの後、スタートの号砲が鳴った。 昨日の荒波で多少海が濁っていたが、波はまったくない。コースが広いためスイムバトルもほとんどなく快調に泳ぐ。息継ぎは4回に1回を厳守しオーバーペースを警戒する。あまりに何の問題もないので書くネタもなし。クラゲはいないし、水温もちょうどいい。100m毎にドラム缶形状のブイがあり、区間タイムをチェックしてみたりする。ほぼ100秒といったところ。プールでの100秒よりは飛ばしているつもりだがなぜ遅い? 中間点の1kmは16分半で通過。 後半、早くも尿意を催したので、失敬して泳ぎながらできるものか試みたが、尿道の弁は頑として開かない。集中力が途切れたのか少し蛇行してロスし、去年とさして変わらないタイムで2kmのスイムを終了した。1.5kmの原町に近いタイム、しかも原町より遥かに楽で余力を残していた。 近頃てこずるウェットスーツもシャワーの下でペロリと脱げ、閑散としたバイクラックへ走る。着替えるものはなくすぐバイクスタート。ロングと思って気負わない分、ショートよりスムーズに運んでいるようだ。バイクシューズもスピードを高く維持したまますぐ履けた。いよいよ105kmの道程の本格的スタートだ。 集団との戦い ポツポツと選手を抜かしながら一人旅を続けた。宿の前を通過するときは年寄りのご主人にオーバーアクションでアピール。びっくりした顔が可笑しい。快調に進んでいるためか、まだ誰にも追い越されてない。33km地点の2つ目のエイドに来たところでトイレを見つけ、早々と立ち寄る。トイレは我慢して後回しにするだけ無駄、という過去の教訓に従ったのだ。ホッと一息ついて再びコースに戻り、徐々に加速し始めたときに、後方から続々と選手がやってきて、僕の目の前で集団化した。きっぱりと先へ行かせて、完全に4-50mほど離れたところで加速を開始する(少々離れただけでは、集団にペースを乱される)。どうやらあまりキレのある集団ではないので、少し様子見していつまでもトロかったら追い越そうと思った。そうそうに抜かした覚えのある奴も混じっていた。そのときはあまりのスローペースに選手ではないと思ったほどの奴だ。まさかこいつに追い越されるとは。 数珠繋ぎになってカーブを綺麗にトレースする集団を見ると、ロードレースを見るようだ。今回は警察との折り合いがつかなかったのか、大会側でマーシャルを立てないという宣言が出たのでドラフティングのお咎めなし。暇潰しに人数を数えた。14人いる。 集団に加わり損ねた40代の選手が僕の後ろについた。彼は僕が一向に差を詰めようとしないことに業を煮やしたのか、あてつけがましく左側から乱暴に抜いていった。オレに当たってどうする!? 島の南側の海岸線は40km以上あるが、この区間はずっと追い風の恩恵を受けていた。心拍数は120-130位と、やや低すぎるのだが、平地で40km/h以上軽く出ていたので、今は集団を追い越さなくてもいいかと思った。こんな状態で安定したまま2つのエイドを通過したと思う。 この頃になると、カラッとおだやかに太陽が照り付け、ブルーの海と緑の大地のコンビネーションが美しく映える。「ィヤッホーッ」とか「ヒョエーッ」とか、意味不明な叫びが思わず飛び出す気持ちよさだ。こんなコースを我が物顔で走れる機会は滅多にあるものではない(一応交通規制なしではあるが)。 とあるタイトな直角コーナーで、沿道の人々がざわめいているのが見えた。注意して曲がってみると、一人遅れて走っている奴がいた。まあ恐らく、きついコーナーを集団で抜ける時に無理が来て落車したのだろう。天罰が下ったのだ。その選手は二度と集団には追いつけず、暫くしてパスした。 集団のペースが徐々に上がったように感じた。視界から消える状況が増えてきている。3、400mは離されたか。せめて目で確認できる距離は保ちたいと思った。集団から脱落する選手も一人二人出はじめた。11分差で早くスタートしていた選手権クラス女子もこの頃から何人かパスする。女性でバイクの速い人はなかなかいない。 そんな折、道幅の狭い峠道で、他県ナンバーの強引かつ優柔不断な運転のブルーバードに阻まれてしまった。やっとクルマがいなくなった頃には、集団は視界から消えてしまっていた。追い上げるつもりで、すこしペースアップを開始する。 長かった海岸沿いの道も終わりを告げ、バイク一番の難所、小木の上りが近づいてきた。直前にあるエイドでボトルを捨て、当然何も受け取らず身軽さに徹する。ここで水をたんまりもらった去年の失態は繰り返さない。上りを開始すると、元集団の選手が前方にちらほら見えた。やっと追いついたぞお前ら! 80〜90rpmの高回転を心がけて黙々と上った。まだまだ余力はある。試走したおかげで力配分を考えやすい。頂上近くの上りではダンシングで一気に抜き去った。この坂で4人は抜いただろう。 去年苦しめられた小木は、今年はいい勝負どころとなった。 パワーを温存していたはずの集団を上りでパスできたことで、自信が湧いてきた。いよいよ積極的に攻めの走りに入る。その後の長く急激な下りでは、ZIPPの高速安定性のおかげで思いっきりスピードに身を任せられた。パスした選手は付かれる間もなく一気に後ろへ追いやったはずだ。ただこの頃になると、お互い限界に近い状態と分かっているためか、抜かしても露骨に後ろにつこうとする選手はいなかった。 途中、ボトルを全身のあらゆるポケットに入れて走っているボトルマニアを追い越した。次々とエイドで受け取ったボトルを土産にするつもりか。 「すごいボトルですね」と声をかけたらハハハと笑って応えていた。ボトルとレースとどっちが大事なんだろう? こんな状況で気さくに声を掛ける僕も昔と少し変わったかなと思う。沿道のおばちゃんらの応援にも、逐一「アイヨォー」とジジ臭く応えていたもんな。そうやって見知らぬ人々と一瞬でもコミュニケーションをとる、それが案外レースの糧となる。たまに、ナンバーと選手名簿を照らし合わせ、名前で応援してくれる人もいる。調べるのに手間がかかるので、通り過ぎた後のタイミングだったりするのだが、そんなときはできるだけ大きなリアクションで応えることにしていた。愛想の悪い選手でいたくはない。 小木を超えてからようやく向かい風にかわり、スピードががっくり落ちた。だが前方に4人の集団を小さくとらえていたので、慌てずに標的を狙う。4人の中には、Rタイプ(リレーの部)と選手権男子も混じっている。集団を引っ張り、途中ペースアップしたのも多分この4人だろう、仲良く走っていた。さすがになかなか追いつけない。佐和田の街中に入り、じわじわと詰めたが、やがてゴールの商店街が見えてきた。 そのとき、ランをスタートしたばかりの選手権女子のトップ、千葉選手とすれ違った。とても敵わない選手だが、先にスタートしているから、バイクで追いついたのかもしれない、と思うと少しうれしくなった(後で調べたらバイク終了時で1分勝っている)。 [バイク区間データ] 実走行時間3:06:35(トイレタイム含まず) 平均-最高心拍数137-156bpm 平均-最高速度34.2-63.5km/h(コースを実測106.5kmで計算) 平均-最高ケイデンス87-124rpm 平均-最高気温24-28℃ 上り合計615m エイドでもらった食べ物、バナナ1本 ![]() ![]() シューズは乗車中に脱ぎ、図らずもトランジットはうまくいっている。ウエアはそのまま、ケイレン防止薬とVAAMゼリー、PowerGelをポケットに入れて帽子を被りランスタート。靴下は履かない。 ランでは脚が重いがよく動いてくれる。心肺も無理はしていない。暑さはさほどなく、腹も減ってない。快調そのものだ。 5キロ地点を通過し、キロ4分半で走っていることがわかった。ふと、自分の目標タイムを全く考えていなかったことに気付く。あとで考えればすこし飛ばしすぎだったが、その頃は周りがもっと速かったから、それでも劣等感があった。ちょうど僕をマークする人が現れ、暫く並走する。足腰をみるとランが強そうだ。去年歩いてしまった鬼門となる上り坂でペースが落ち、案の定チギられた。 中間点を折り返してすれ違う選手はみな選手権クラスで、国際Bのトップ選手が来たのはかなり経ってからだった。ひょっとすると自分はかなりいい位置にいるのかもしれない、と思い始めた。だがあまり考えないようにする。期待感が却って集中力を削がれることがよくあるからだ。 その折り返してきた選手のなかに再び千葉選手を確認する。たまたま下りだったせいもあり、ものすごい勢いで走っている。さすがにこのスピードでは敵わない。そういう自分はそろそろへたばってきたが、10キロ地点、相変わらず4分半のペースは維持していた。この頃から急に暑さが堪えてきた。ちょうどお昼頃で、気温も急上昇したのだろう。折り返した後の12キロ付近、脚のエネルギーがとうとう底をつく。惰性で進まない上り坂ではぐんとペースが落ちる。ピッチ走に頼ろうにも、心肺も目一杯だ。いかん。潰れた。千葉選手とすれ違った地点で時計を確認し、判りきったことだがかなり離されていることを知る。 佐渡のランはショートと比べてエイド間の距離が長いので、暑くなってくると特に堪える。ゴールまで約7キロ、日陰が全くない田園地帯を走っている頃、朦朧としてきた。水分不足でオーバーヒートだ。歩きたい。でも歩いたらエイドに着く時間が遅くなるだけだ。たかが7キロ、と考えるようにする。エネルギーを入れれば少しは変化があるかと思い、気が乗らないがPower Jelを開封した。初めて食べたが、これはPower BarのJel版じゃないか(商品名もその通りだ!)。まさにネトーっとしたキャラメルだ。水が欲しいときにこれは参った。ウヘーと思いつつ、開けたからには食べ尽くさないといけない(それでも、僅かに残っていた分がポケットから染み出てレース後とんでもないことになっていた)。 やっとのことでラスト5km地点のエイドにたどり着く。ゴールしたような安堵感。じっくり補給。次のエイドまでは短いので助かる。 ラスト3.5kmのエイドでまたしても長居する。この後ゴールまでエイド無しでホントにたどり着けるのか? 僕と同じか、それ以上に念入りに水を浴びている太目の若い選手が目の前にいた。彼にラスト3キロで追いつく。そうとうへたばっていたようだったが、追い越すとついてきた。またしてもペースメーカーか。 ずっと後ろをついてくる彼は、ラストでスパートをかけるに違いない。そのスプリント力の残っていない僕は、ここで徐々にペースを上げて引き離すしか勝ち目はないだろうと思った。とはいえ、目に見えるペースアップができるくらいならとっくにしているので、彼はいつまでもついてきた。ラスト1kmの商店街の花道を抜ける。ゴール手前最後の直角コーナーを曲がると残り300m、案の定彼はスパートをかけた。ギアが2段は切り替わったくらいの猛ダッシュだ。そこまでの力が残っているのならもっと前からペースアップすればよいものを。僕の追撃をそこまで恐れていたのか、逆に敬意を表されたような気分だ。 去年と同様最後の最後までスパートできず静かにゴールした。 時計を見ると、ラスト2kmは10分で走っていた。僅かながらペースアップのおかげだ。なかなか頑張ったじゃないか。 ゴール後は隣のTさんと盛り上がり(今年は勝てた)、ベタ凪の海で水浴びし、旨い生ビールとうどんに舌鼓を打ち(いつもは内臓が疲れきってビールは変な味がするものだが)、Aタイプのバイク70km地点で早々と足切りにあったという向こう見ずなオジサンと話をし、同部屋の人のゴールを応援して、夜8時まで祭気分を楽しんだ。ホントに面白かった。宿に帰ると、祝いのためと称して夕食に鯛の刺身をだしてくれた。 9/8月曜日 筋肉痛はあるが、昨日ぐっすり眠ったためか疲れはない。 表彰会場で正式な記録速報が出て、そこで初めて年代別で入賞していたのを知った。こういう賞をもらうのは何年ぶりだろうか。だが選手の全体的なレベルが一昔前より低下していることは間違いなく、素直に喜べないのも事実である。 帰り途、小木近くの素浜海岸に寄ったら、見渡す限り誰もいない超贅沢なビーチだった。砂の質もよく、海はコバルトブルーだ。次回はここで遊んで帰るプランを立てようと思った。 * * * * * なぜ毎回、ドラフティング回避にこだわるのだろう?
それがルールだからか? もちろんそれも理由ではあるが、本音はちょっと違う。 なぜならそれは、トップを走る選手はドラフティングなどしていないからだ。 トップ選手はマナーやスポーツマンシップなどの点で長けている、と言いたいのではない。単純に、トップは独走状態になる確率が高く、また審判の目も厳しいので、結果的にドラフティングしようがない。 自分がどんな順位だろうと、トップ選手もライバルの一人である、という志を持ってレースに挑みたい。そのためには、トップと同じ条件で走りたいのだ。トップがフェアに戦っているというのに、それより遅い僕らが姑息なマネをしていたら、そんな信念など消えてしまうではないか。 |
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