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第6回みたけ山山岳マラソン参戦日誌
2005/12/11 御嶽山周辺トレイルラン15km ![]() 何がぬくぬくじゃこのヴォケがぁ! すでに中央線の寒さが辛抱堪らん状態だったので、乗り換えの立川駅トイレでジーパンの下にタイツを着込み、首周りにバンダナを巻き、手袋をする。にもかかわらず、青梅線は暖房費節約の極寒列車で凍え死にそうだ。だじげでぐでー! 単線なもんだから、駅で止まる時間も長い。さっさとドア閉めろこのヴォケがぁ! とお下劣なセリフを吐きたくなるものですわよ。 御嶽駅からケーブルカー乗り場までのバスもしこたま待たされて、もう寒さ限界状況。オー、霜柱を見るなんざ、何年ぶりだろ? そうだここは浦安ではないのだ。薄着チョイスをひたすら後悔。バカは凍え死ななきゃ治らないかと。後で知ったことだが、この日は東京地方で雪を観測したとか。 ケーブルカー乗り場脇の駐車場が選手会場となっている。 受付を済ませ、二つしかないトイレに30分以上並んで軽量化を行う。この参加人数でトイレが二つってのは、おおいに問題ありでしょう。 レーススタートは9時半、でも荷物預かりは9時までだという。その30分間を、この極寒の中走る格好でいろっていうのかい? 幸い、更衣室代わりの路線バスが用意され、エンジンがかかって中は暖かい。荷物を預けた後もこのバスの中に居ることにして、「みんなでエアロビ」は参加しなかった。でもそういう不謹慎な考えを起こす輩は居ないでやんの。みんな、よく寒くないね?? ま、みんなと一緒にエアロビつうのも非常に苦痛なんだけど(これもまた誰にも理解されそうに無い)。 というわけで準備運動ゼロでスタート位置へ。今日参加しているはずのしゅうさん@マリアローザや、イヲーク@同僚の姿を発見できずにいる。すでにぎっしりと選手は並び、後ろにチョコンと付くしかなかった。でも今日は全く飛ばす気などないし、ハイキング気分なのでオールオッケーである。500名前後?の過去最多のランナーたちが、太鼓の音とともにスタートを切った。 9:30 a.m.スタート バイク用長袖サーモブレスにTシャツとベストを重ね、下はラン用スパッツに長タイツをはいた。マラソンよりは遥かに重装備だが、とに角寒いので何の不安もなし。ベストの胸ポケットにiPodが入りっぱなしだったことに気づくがもう遅い。ま、途中で退屈したらムジークでも聞くベーか。エイドが有るのか無いのかすら聞いてないので、給水用として手にVAAMゼリーを持った。15kmなら水なしでも持つだろう。 初っ端からいきなり崖のようにせり立った舗装路を上り始める。傾斜は20%超だろう。一応、皆走っている。自転車では無理そうな激坂でも、意外と走れるものなんだなと発見その1である。暫らくは、御嶽山の村落に向けてケーブルカーの脇道を一気に470mほど上ることになっている。どの程度のペースで走ったらいいものか見当がつかないが、マラソンでさえも序盤はほとんどの人がオーバーペースだから、まちがいなく皆このペースでゴールまで行かないだろうと思い、気楽に集団後部のペースに合わせた。 スタートしてすぐにマリアローザジャージのしゅうさんを見つけ、早速声をかける。「ポンズジャージじゃないんですか」ですと? うーん、バイクジャージはランのフォームに支障ありなので考えてなかったが、まだまだチーム愛精神が足りないってことですか。 また少し行くと、見覚えのあるキャメルバッグを背負い、ゼッケンを後ろに貼った変わり者のイヲーク発見。「そんなペースじゃ完走できんぞ!」と厳しくも愛のこもった激を飛ばす。ただのイチャモンデスカ? とまあ、祭気分で面白がっていたのであるが、いつのまにかしゅうさんが見えなくなってしまった。スルスルとポジションを上げているようだ? ウォーキングイヲークを後にして、しゅうさんを追撃開始。 Polarを見ると、獲得標高100m。今日のコースの獲得標高は700m、とバス停での会話を耳にしていたから、早くも1/7を登ったかと思うと「なんだ、楽そうじゃん?」と思う。 なかなかしゅうさんに追いつかないのでだんだんマジになってきた。まるで自転車ヒルクライムレースのような気分でうつむいて黙々と上っているうちに、いつのまにかしゅうさんをパスしていたらしい。 獲得標高も300mを過ぎると、周囲のペースがぐっと落ちてきので、追い越すことが多くなる。幅2mほどの道は追い越しにストレスがかかるが、できないことではない。太腿がやや張ってきたが、まだ余力は十分ありそうだ。 だが、思いのほか心肺がMAXである。トレイルランってこんなに息が上がるものなのかと発見その2である。普通のマラソンで序盤からこんなに息が上がることはまずないし、かりにそこまでペースアップしたら即効で潰れて走れなくなる。今朝はトイレ渋滞が原因で着替えの準備が慌ただしかったので心拍ベルトを付け忘れてしまった。今後の参考になりそうな面白いデータが取れたと思うのだが、その点では非常に悔やまれる。 激坂が延々続いていたが、ふと道が平らになった。するとまるで背中を誰かが押しているかのような奇妙な錯覚を感じスルスルとスピードアップする。ただし心肺はさらに追い込まれ、益々厳しい。 不調続きで3週間ぶりとなるラン、これがもし普段のマラソンならまちがいなく息苦しさに嫌気がさすところだが、なんせトレイルランは今日が初挑戦であり比較するものがなく、辛さもこういうものかと思うので気落ちはしない。いやーおいらって頑張ってるなーとむしろ充実感いっぱいだ。 やがて、十数軒の旅館集落へとたどり着き、村民の歓迎を受けながら狭い路地を走り、神社の中を潜り抜ける。階段ですっかり脚がいってしまい、歩きが入った。「あーしんど」の表現がぴったりだ。 ここからは本格的なトレッキングの始まりだ。 この日のために結局専用シューズを買うことはなかった。今までもサロモンなどのその手の靴を買ったことはあるが、固くて重く、フィット感もイマイチなのでそれでランをするのは気乗りがしなかった。更に、普通の靴より滑ることもあるので、靴底なんてランシューズとどこが違うんだろう? 程度にしか考えてなかったのだ。 代わりに用意したのが、佐渡の副賞としてもらった作家ニーの黄色いシューズ。下駄箱への永眠を決めこんでいたが、軽い割にはホールド感とクッション性が良く、靴底の突起もざっくりと大きい。靴下を履けば靴擦れは起きないので、今日のレースにピッタリだろう、と思ったのである。ハセツネカップでもトップはNバランスのランシューズだったらしいから、これでもOKだろう。 落ち葉が積もった道を走る。比較的コース難易度は低いのだろう、と考えながら気持ちよく走った。周囲はバラけて、前後は自分と同じペースの人となり走りやすくなった。暫らくはアップダウンが続く。急な坂では落ち葉でスリップを起こすかと思ったが、意外と粘れる。人間の足って、自転車のグリップ力とは比べ物にならないなと発見その3である。そして初めての下りに入る。いままで上り用に使ってきた筋肉を、下りのブレーキングとして使わなければならない。意外とこれはしんどいぞ。また、上りでは力をじわっと加えるところ、下りではほんの一瞬だけ最大筋力に達するような力の入れ具合となり、下りのほうがきついとよく言われるのはこのことかと納得。まあでもうまい人に言わせれば、ブレーキングしちゃいかんよってとこだろうけど、そんなのは無理だよ。おっかなびっくりかけ落ちるように走っていると、だんだん平和な上り坂が恋しくなってきた。 下りは筋肉へのダメージが大きいけれど、心肺は楽になる。次の上りへと差し掛かると、やはり辛いことを思い知らされた。やっぱ一番楽なのは平地だなと、あらためて気づく。 岩がゴロゴロと突き出した、湿った道へと変わる。落ち葉に紛れて尖った岩が土から顔を出していて、足を挫きそうで走りづらい。やや下り坂のスピードの出る道で、案の定右足をグギっとやっちまった。確率的に言っていつかはやるかなーと思っていた矢先のことだ。ああイタイイタイと庇いながら走っていると、200mも行かないうちにまた同じ箇所を同じ方向にグギっとやってしまい、なんだくそー! トラウマになって走れなくなるじゃないか。怖くてスピードを出せなくなった。こんな時、底の固いトレッキングシューズなら気にせず走れるのだろうか。 小川を遡るようなルートでは、大きな岩がゴロゴロしており、トントンと飛び越える。猿みたいだねーウキキー。 徐々に傾斜としんどさが増してきた。序盤の一気上りで、あらかた上りは終わっていると思っていたのだが、既に獲得標高は800mを超えたというのに、上りはまだまだ終わりそうにない。実はこの二つ目の長いのぼりは、標高差こそ350mで最初ののぼりより少ないものの、難易度はぐっと高くなるので遥かにてこずる事になったのであった。 標高と日射の関係からだろうか、数日前の雪が残っていてこれがとても厄介になってきた。傾斜がきつくなってくると、しょっちゅうスリップして満足に上れないのだ。どうやら歩くよりも走りの体勢のほうが滑りにくく、また滑った時もリカバーしやすいのだが、傾斜が急すぎるとしんどくて走れないところもあり、また急だからこそ滑るのだ。本能的に、股を左右に開きスキー板に見立てた逆ハの字にして上るようになる。後ろじゃなくて横方向にエッジを効かせるという理屈らしいのだ。本能がそうさせているので、僕の意思ではない! 先行者を崖側からパスしようとして、脇の雪でズリっと思いっきり滑り体勢を大きく崩しかけた。その彼に腕を抱えられて事なきを得る。こういう助け合い精神は山に関わるレースならではであろうか。 作家ニーのランシューズは、ツルツルの雪道には文字通り歯が立たない。トレイルラン用はもっとゴム質が違うのだろうか。いずれ検証はしてみたいものだ。 最初は初心者向きコースかと思っていたこの御嶽山も、TVゲームのように徐々に難易度が上がっていくようなコース設定に感じる。TVゲームと違うのは、主人公は徐々に弱くなっていくという点だろう。ようやく上りきった後は尾根伝いの小刻みなアップダウンをかけ抜ける。下りで心肺に余裕ができて、上りで限界まで追い込むインターバルトレーニングのような辛さだ。そんなこんなで激しく追い込んだ後、急激な下りゾーンへと入ることになる。「追い越し禁止」の立て札が見えた。いままでも転がり落ちそうな下りは幾つかあったが、こんな注意書きは初登場だ。ってことは、今までにない急な下りってことだ。 案の定、落下するような下りが待っていた。これは本格的にヤバイと察知し、ずっと手に持っていたVAAMゼリーをパンツの中へ慌てて格納する。 ハイキングや山歩きルートは子供の頃から誰しも経験があるが、「下りで走るな!」とは口酸っぱく言われていたこと。走りたいのに何でやねんとの不満を抱きつつ、子供心にそれは「収拾のつかない危険を孕んでいるから」と理解していたのだ。 ところが今のこの状況は、「下りで走れー!」なのである。その重力を生かして出来る限り早く駆け下りることこそ使命。この歳になって突然の方針転換は新鮮だが、リスクありすぎ。覚悟を決めて、いっちょ行ったりますか! 支えとなる木の枝に体当たりするようにして飛び降りながら走る。手袋を二重にしていて助かった。ロープも使った。すっかり頼りなくなった太腿に、体重の数倍の負荷をぐっとかけるのは厳しい。だが油断すると一気に下まで転げ落ちそうだ。よくもまあ、こんなアブナイ道がコースとして認められたものだと感心する。自己責任を強く意識することが求められる大会だ。 先ほどから、ギャアアアと叫びながら下っている女性の声が響き渡っていたが、ようやく姿が見えてきた。追い越し禁止区間ではあるが、ペースがかなり違うので断わって別ルートで追い越させてもらう。「よく・みん・な・怖く・ない・ねーギャーッ」とルートの不条理さを訴えるかのように叫ぶ女性。「こ・わい・で・すよー」と誰かが上の空で返事している。 楽しいどころか、ほとんど恐怖との戦いでやっと下りきった。命あってのものだねだ。 ![]() 最後に再び村落へと戻ってきて、神社のながい階段を上る。後ろから、先ほどの叫ぶ女性がヒーヒー言いながら迫ってきた。どうやらそれが彼女のいつものスタイルらしい。ラストで女性に抜かれたくはないと思いつつ、もういいやって感じでラストスパートできない。それでも多少は段とばしも交えて駆け上り、念願のゴール。 1時間32分あまり。 ![]() はじめはハイキング気分でスタートしたはずが、結局は追い込めるだけ追い込んだ。いやーしんどい。しんどすぎ。これほど「しんどい」という表現がピッタリのレースは、今まであまり経験がないよ。心臓と呼吸が落ち着いて最初の一歩を踏み出すまで3分ほどもかかった。獲得標高は噂の700mを大きく超える1100m。15kmで1100mというのは、全部が上りだったとしても平均斜度7.3%もあり、これを平均速度10km/h程度というのは結構なもんじゃないかなと思うが、果たしてこのタイムはいいのか悪いのかフツーなのか、サッパリ判りませんね。 後日発表、103位/508人完走。DNF?人。公式タイムでトップと28分37秒差。 ふと見るとしゅうさんがすでにゴールしていた。すぐ後ろにいたのかな。ランではまだ負けるわけにはいかないと思っていたけど、結果的にほとんど差がなく、次は敵わないかもしれない。 息が整ってきたところであらためて見ると、結構女性の参加者も多く、普通にゴールしている。なんか、ゼーゼーいいながらゴールしたのって僕くらいなのか? 終始やや楽な一定ペースで進むマラソンとはまるで違う競技だなと、つくづく思った次第。心臓が破れそうな負荷が何度も続く(続けられる)という点では、自転車レースに近いかもしれないと思った。 走った後は、各自指定された宿に荷物が届けられているため、そこへ行って風呂を借り、ストーブで温められたぬくぬくの居間でごろりんことする至福の瞬間。特に、風呂に浸かる瞬間の気持ちよさはたまりません。思わず声が出ます。ぐえー。 隣の50台と思しきおっさんに笑われた。 御嶽山の旅館は以前一度泊まったことがあるが、ここの人たちのもてなしの感覚は、イマドキの見慣れたサービス業とはかけ離れた独特な味わいがあってどこか心地よい。数十年前の田舎の感覚に近いのかなとも思うが、今回休憩した宿でも同じ印象を持った。やはり閉ざされた世界ということで、独自の文化を持っているのだろうか。それを大切に守ろうという気概も感じられる。 カラダが温まったところで、そろそろ弊社のイヲークがゴールしているかなと思ったら、目算を誤ったかゴール地点にはほとんど誰もいない。後で知ったが30分も前にゴールしていたらしい。 初心者レベルの参加者は少ないようだ。 午後から表彰式とジャンケン大会。進行がスムーズでないのが玉に傷。せっかくお風呂で温まったのに、またしても体の芯まで冷え切った。運良くポーチをゲットして帰る。 ケーブル駅から御嶽駅までは下りなので走ってみることにした。荷物が重く、思いのほか遠いので後悔。バスは帰りも乗りましょう。 |
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