JCRC第6戦スペシャライズドカップin日本CSC
2004/9/12 
Zクラス(個人エンデューロ)

先週の佐渡TAの後遺症としてここ3、4日膝が痛く、駆け足や階段では思わず顔を歪めるほどの刺すような痛みに襲われるので、修善寺のしかも2.5時間耐久レースとなると膝への負担は火を見るより明らかで、まあ参戦は無理だろうとブルーな気持ちが続いていた。
それでも前日の土曜日に、このまま何もせずに明日を迎えてもしょうがないと思い、夕方4時頃になって重い腰を上げローラー台に跨る。スクワット運動とペダリングは似て非なるのか、痛みが発生しないまま20kmを走れたので、急に気をよくして明日への準備を始める。まあ、途中で痛くなったら止めるベー。仮にDクラスに出たってたった3周しかできないんだから、それ以上走れれば元は取れる(どういう計算だ?)。

例によって朝5:20に家を出たが、朝飯を買うために途中で高速を降りたり、給油などしていたら、修善寺着は7:55と遅くなってしまった。今日はアップをちゃんとしようと思って3本ローラーを持ってきたというのに、クルマの横にセット完了した時点で8:20となり、スタートまであと8分やん! ということで1秒も乗らずにサーキット場へと急ぐ。驚愕の深夜0:30に家を出たというRyuさんを少しでも見習うべきであった。

しまった! グローブ忘れてきた(家に)。 素手で走ったら失格ですかね。
しまった! インフレータとスペアタイヤ装着したままだ! 慌ててはずし、スタンド席の隅っこに放置する。付けたまま走ってもべつにいいんだけど、なんか恥ずかしいので。
盗まれませんよーに。
スタートラインでは既にZとC、D、Eクラスまでしっかり整列完了していた。先頭のZまでコソコソ歩み寄り、最後尾のはみ出した位置にチョコンと構える。やる気のないのバレバレですね。
今回はボトルを二つ持ち、一つには高級粉末スポーツドリンクを、もう片方はお茶にした。ちょっと余計だったかな、などとぼんやり考えていたら、スタート

早々と1人、集団から抜け出していったようだが、誰も追おうとしないようで、助かった。段違いなレベルの人と知ってのことだろうか。平和なペースで上りをこなし、アップなしの割には余裕で着いていける。奈良選手がいないとこうもまったりペースなのか。雨のウインターロードで走ったきりの時計回りコースであるが、今日はドライコンディションなので下りコーナーは結構スリリングなスピードを出せる。様子見のためか、集団の下りスピードは遅い。そう言う僕も慣れずにふらついていたが。2号橋まで下りきると、ここからまとまった上りだ。またしても速すぎないスピードで上がっていく。今回はこんなペースでいいのかな?
そんなこんなで、1周終えてラップを計ると、おったまげた。9分44秒。マジですか! 過去ベストラップですよ! スタートのもたつき分を差し引けば、9分35秒くらいにはなりそうだ!? 
そこですっかり「自分は力がついた」と勘違いしたのが間違いの元だった。実はかなりの高負荷だったことを心拍計がキャッチしていた。すでにレッドゾーンである162bpmまで上昇しており、これから2時間半も走り続ける者がとるべき行為ではなかった。だいたい、心拍を上げてもタレにくいランでさえ、160bpmを超えていいのは1時間半までなのだ。
ペースは変わらず2周目へと突入。
考えてみたら、このコースのテクニカルコーナーは左回りばかりだ。僕はどっち回りが得意なんだっけ? 同じようなRの高速コーナーが3つある。かなり倒しこめるところなのでちょっとスリリングだけど、路面が安定しているので不安はない。その1個目が終わると若干の上り区間、今日は追い風ということもあって、トップギアのままダンシングでハイスピードを維持して次の下りへと繋ぐ。
その下り途中でRyuさんにモジモジとご挨拶。気をとられてうっかり進路妨害してしまいすみません。
3周目。相変わらず、FitteのA木さんは前のほうで積極的に走っているようだ。僕は2、3番手を走ったこともあったが引きの責任感で自爆することがないよう、マイペースを心がける。だんだんこの集団のペースのキツさが堪えてきた。だが、一頃の「全く手に負えましぇーん」と両手を上げてしまうようなハイペースさではない。修善寺の逆周りは比較的坂の傾斜が緩いために、一気に筋肉が上がってしまうことがないからだろう。
4周目に入ったばかりのホームストレート、A木さんがPOLARのロングボトルを取るときにうっかり手からすべり落ちて後輪が踏みつけ、その後ろでざわめきが発生する一部始終を隣で見てしまった。集中力がふと途切れそうになる瞬間か。暑さも感じてきて、なんかサバイバルな雰囲気になってきたぞ。
後半の上り区間へとやってきた。A木さんの後ろを黙々と上っていると、2人して徐々に集団から遅れ始めた。すでにこのときの集団は15人程度まで減ってきており、その最後尾で徐々に千切れていく。「やべえ・・・」とぼやきながらダンシングして追いかけるが、本気で喰らいつくつもりはないことを悟っていた。今度こそ限界だった。最も萎える最後の上り返しで集団はダンシング体勢で一気にのぼりつめ、こちらは一気に30mは離された。あっという間のことだった。
5周目。実はまだ集団は前方50mのすぐ手の届きそうなところに見えている。この差をどうして縮められないのか? と自問する声。特に上り区間ではホントに間近に迫る。下りに突入したら全く見えなくなっていた。だが、いままでの集団の抑制された下りよりも、自在にライン取りできるソロでの下りのほうが速いことは判っていた。よっしゃ一丁頑張ってみるベー。2号橋まで下りきり、間違いなく差を縮めたことを知る。集団はもう20m先だ。普段の感覚ならこの距離を一気に詰めることなど簡単ではないか? どうなんだ? 散々自問した挙句、覚悟を決めてダンシング(ここで本年度最高値タイの168bpmを維持)、力を振り絞ってとうとう集団のケツに追いついた。やったぜ!
しかーし。無理してようやく追いついた地点が、ついさっき集団から千切れた場所とあっては、物理法則的社会通念上、再び千切れるのは自明の理であろう。先ほどと全く同じ絵柄で集団から遠ざかる。
アホちゃいますか?
ここで初めてバカさ加減に気づいた。集団は速いから千切れたのよ。いつまでも着いていけるはずはないのよ。どこかで妥協してマイペースに徹しないとどんどん借金を作るだけなのに、よりによって追いつこうだなんて、借金して借金を返すようなもので、アホもはなはだしいのよ。
なぜオカマ言葉なのかは判らないが納得した次第。
その5周目のラップは10分21秒。ソロで走った場合の最速ラップがこれだ! ちょっと悲しい。
後は淡々と走ることに徹した。とに角まだ50分しか経ってない(ここまで1周平均10分)。残り1時間40分もあるのだぞ。それを思うと、こんなにヘトヘトになっている場合ではない。
さて、その後はあまり記憶がない。淡々とずっと1人で走っていたために、ネタもなしである。途中、Sクラスのスタート間近に発着地点を通過し、勢いのいい大集団がぞろぞろと追いかけてくるシーンがあった。スケジュール的に見て7周目の出来事だ。いくらヘバっているとは言え、くだりは唯一タイムが稼げるところ。この下りは巨大集団より前で突入せんと、異例のダッシュ。ORBEA乗りが早くも飛び出していたので、彼に道を譲ったあと追走する。Sクラスの逃げの走りを真後ろで観察する楽しみを得た。2号橋を過ぎて、ズババババーンと集団に追い越される。Sはまだ1周目だというのに、終わりの方は早くもヘロヘロ状態。ラストの選手が重そうに(失礼)上っていく。この人はしばらく見かけたけど、途中で周回遅れになってDNFでした。お疲れさま。
その次の周も似たような展開で、今度はAクラスの集団から逃げる。フェー。疲れまっせ。

何周目だか覚えてないが、突然背後から、
「おまたせ〜〜〜って別に待ってない?」
一体どこから現れたのか(後ろからに決まっているが)Ryuさん登場。てっきり先頭集団に居残っていたと思っていたので、一瞬周回遅れにされたか? と思ってしまったのだけど、ずっと後ろだったのですか。でもこれで一人旅ともオサラバ、2人よれば文殊の知恵、精神的にも肉体的にも楽ができそうだ。
と、思いきや、一緒に居たのはその瞬間だけで、早々とまた消えてしまった。あれほど素早い追い上げを見せた人が、なぜまたすぐ居なくなってしまうのか、うーん、レースでじゃれているようにしか見えません。摩訶不思議。
ジョークの一つも言えない余裕のなさを感じつつ、また黙々と。
8周目、膝が痛くなる。
おおそうだ、オイラは膝を患っていたのだった、すっかり忘れていたよ。ああオイラって膝がこんなに痛いのに頑張ってるねー、偉いねー。タイムが悪いのは膝のせいにできるしねー。
9周目には膝のことは忘れていた。結論から言えば、殆ど痛くなかった。アドレナリンが出ていたわけでもあるまい。
11周目あたりで先頭集団らしき人?に抜かれる。前回のZよりは持ちこたえたような気がした。
Cクラスのレースを終えたしゅうさんがフィニッシュライン手前の一番キツイところでずっと応援してくれている。しかし、その位置は辛すぎます。カンベンしてください。ヘンな顔しか作れません。
12周を終えたところで、水分が足りてるかどうか訊いてくれるが、僕はその時膝のことを訊かれたものと勘違いした。「うーん、なんとか持ちそう」と、これまた意味が通じる返事をしてしまう。その時点で残っていたのはお茶が50ccほど。のちに、お言葉に甘えて水分補給を頼めばよかったと後悔。
二つのボトルは13周目で飲み干した。
春のZでは2Lapされて14周したけれど、今回は僅かにスケジュールが短いから(どういうわけかそう考えていた)、やはり15周目には突入しないだろう、と踏んでいたところ、14周目に入るところで鐘が鳴り、係の人に「Zはあと1周」とキッパリ言われる。そうでしょうそうでしょう。もう脚のエネルギーは残ってないよ。悪いが、誰がなんと言おうとあと1周だよ。前回レースでのトイレに駆け込むという日和見行動はかろうじて避けられそうだが、上りはホンッと辛いです。実は視界がさっきからヘンだ。寿命のきた蛍光管みたいに天然フリッカー現象が起きている。人間、疲労が溜まるほどフリッカーが識別できなくなるというのが人体心理学で習ったことだったが、今の目に映っている像は8mm映写機の映像のようだ。
地獄のような上り返しをやっとの思いでクリアし、ラストの下りへと入ろうとしたところだったか、
「またまたおまたせ〜〜〜〜〜」
うっそー! 僕はからかわれているのですか?
この期に及んで鋭い追い上げを見せたRyuさんに、ラストのキツイ上りで敵うはずもなく、あっけなく先行を許してしまう。
でもやっとここで終えられる、という安堵感のほうが遥かに強く、フィニッシュラインを超える喜びは格別のものであった。それと同時に役目を終えたと認識した両脚が強烈に攣り始め、乗ったままぶっ倒れそうになる。マジやばかった。信じられないのは、Ryuさんはそのまま15周目に入っていく。いくらクールダウンが大事だからといって、ちょいと無茶すぎませんかね? どうかしてますよ?

ラップ毎のタイムと平均心拍数の推移。第2戦のZを重ねてみた。
第2戦では早々とタレて心拍数が落ちている。

ところが、後になってびっくらこいたぜ。
まだレースは終わってなかったらしい。おいらもあと1周しなければならなかったのだ。Ryuさんは係りの人に「さらにあと1周」と言われて「マジかよ!」と思いつつ走りつづけたらしい。もちろんRyuさんはこのことについてレース後開口一番僕に話してくれていたのだけど、ああ、Ryuさん1周早く終わりだと思い込んでたんですね、そりゃめげますねぇーと見事に勘違いし、まったく取り合わない態度でどうもすみませんでした。

係りの人は僕の披露困憊ぶりを見て、さすがに「やっぱあと1周」とは咄嗟に言えなくなったのではないか? と今になって思う。結果を見ると、僕より時間的に後でフィニッシュラインを通過した人でさらに1周走った人が、少なくとも2人は確実にいる。そのころ僕はベンチで放心状態だった。途中でレースを中断した人を除き、全選手の中で僕のタイムは一番短い。
でも僕がその指示をちゃんと受け取っていたにしても、あと1周は間違いなく不可能だったと思う。