JCRC第5戦 群馬CSC
2004/7/11
Z2クラス(2時間耐久)

またしてもZクラスにエントリーしたのである。
通常のクラス別レースは、距離が短いためにスプリントっぽくなり、瞬発力のない自分はさっさと千切れてしまう可能性大有りだ。それに、同じ参加料でたったの24km(Dクラス)しか走れないのはモノタリネー、という理由で、つまりは万年Z志望なのである。
今回のZはスタートが7:55分とドエリャー早い。家を4時20分に出るが、SAでのんびりメシ食ったり仮眠を取ったりする余裕はない。
とはいえこの頃はガソリン高騰のためエコエコ運転で関越道を走る。空は眩しい朝日で満ちており、雨天を嫌気してVXRSを引っ込めKestrelで来たことをどう言い訳するのか(誰に?)考えていた。渋川付近で突如、警告板が「この先雨、走行注意」とかぬかしている。こんな晴れ具合なのにマジかよ!
群馬CSCには7時前に着いた。ランで20分ほどウォーミングアップをする。前回の群馬戦では体が温まる前の2周目で千切れてしまった。今回は多少アップを念入りに、かつ確実に心拍を上げるためにランがいいと考えたのだ(ホントはローラー台がベストだと思うが、毎回メンドクサくって持ってきてない)。
アレッという間にスタートの時刻が迫ってきて、慌ててスタート位置へと向かう途中、ちょっとした上り坂がとんでもなく辛いのはなぜだ? ちっともアップになってないか?
なんだかポツポツと降りだしてきやがった。晴れを希望してタイヤは8気圧にセットしたばかりだったが、もし雨になったら空気を抜けば良いか、などと考えていた。レース中どうやって抜くのかは知らないが。スタートラインにつくと、早速ryuさんにご挨拶。右も左も判らなかった半年前の心細さと比べたら段違いである。
本日のZのメンバーは普段よりもやや少数だが、S・A・Bが多く、たちどころにブッ千切られると予想されたため、正直なところ投げやりな気分だった。VXRSを床の間に置いてきたのもそうだし、スピードメータは電池切れ、心拍計は持ってきていたのに着けてないというイイカゲンぶり。ただ、決戦用ZIPPホイールを履いていることが前回と違う。まあそれも、一人旅を予想しての選択であるが。専用ブレーキシューを装着すれば雨天時にもさほど不安はないことは判っていた。

7:55 スタート
1時間耐久のZ1と2時間のZ2、両方で50人強の集団がポツポツと雨が振り出す中を走り始める。1周目は先導のバイクが抑えた様子も無いのに、結構ゆっくりまったり始まった、と感じる。意外なことにその1周目は自己計測10分5秒と、過去に群馬でそんな速く走ったことなど一度も無かったのだが。
雨足が強くなる一方なので、落車と中切れの両面のリスクから逃れるために集団の前へ前へと意識して走る。人数が少ないせいか、耐久と呼ぶにはやや短いレースの割には、周りは落ち着き払っている感じがする。ダブルエントリーしている人が多いせいもあるだろう。あるいは上級者の無理・無駄のない走りのお陰だろうか。
TIMEを駆るFITTEのA木さんは、僕と同じDクラス。集団前方で積極的な走りをしているのを見て自分も影響されたのか、2周目の途中でフラッと先頭に出てしまった。しかもなかなか追い越されないので、バックストレートを過ぎても引いていた。ま、義務を果たさねばという感覚だったのかな。
3周目に入ったところで意図的に後退していくが、その後ろ向きの加速が止まらない。早々とビリッケツまで落ちて、さらに千切れそうになる。どうなっとるんじゃ。どうやらペースがググッと上がったようなのである。いい気になって先頭に出るんじゃなかった、身の程知らずな行為であったと早くも後悔の念が。路面はすっかり濡れてきて、前走者の跳ね上げるしぶきを大口開けて受け止める。息が上がって口を塞いでなどいられないからだ。この口に入り込んだ泥水は飲んじゃマズイよね? 処理に困っていたが、ペッと吐き出しても後ろの人にケンカを売るだけなので、やがて涎のごとくダラーっと垂らすことにした。
高速左コーナーではさすがに慎重になる。イマドキの高性能タイヤは、たとえウェット路面であろうと僕のコーナースピードごときでグリップを失うほどヤワではない、はずだったがやはり8気圧入っていると思うとビビるんである。周囲も結構慎重派が多いのか、それともペースが上がっている証拠か、集団は一列棒状になってコーナーをクリアしていく。つまり、すぐにでも千切れやすい状況になってきた。ヘアピンを抜けると、猛ダッシュしないと集団はどんどん先へ行ってしまう。特にコーナリングが極めて慎重派の人の後ろはヤバイ。そういう人は、コーナー後にダッシュして集団復帰する力を兼ね備えていたりするから結局千切れるのは自分なのだ。10m以上離されて、もうダメか、とあきらめる場面も何度かあったが、幸い集団のスピードがフッと遅くなるなどしてなんとか復帰を果たしていた。
途中でA木さんに「どうしてケストレルなんですか?」と訊ねられ、「雨・だ・か・らぁーっ!」とコドモの返事をしてしまい面目もございません。
ホームストレートでは、ひたちなか耐久に引き続きクリスペブラー風DJがレース状況を解説して盛り上げている。「選手たちは○○周目に突入」などの声が聞こえてきてありがたい。先頭から遅れること何秒、などの情報をさりげなく教えてくれるといいね。
スタート時刻の早さを当初は恨めしく思ったが、Z以外に出走クラスがない、つまりペースが乱されないという点で実は大いに助けられている、と走りながら気づいた。臨界状態の自分にとって、ちょっとでもペースアップしたらもうあっけなくジ・エンドなのだ。そういう意味では、この雨にも助けられたと言えるかも知れない。すでに本格的な雨へと変わり、サングラスは水滴で塞がれ視界は2割くらいしか見えてない。体は冷やされて、寒気すら覚えた。途中でA木さんが、「もう、ヤダー」と笑いながら叫ぶ。なんだかその声にすこしホッとして落ち着きを取り戻す。
上りで離されていた前回とはまるで異なり、そこそこの余裕を持って上りをこなせたが、平地や下りで集団から離されそうになる、というのが今回のパターンだった。ウルトラディープなZIPPを履いているのにどういうわけだ!? 上り区間では先日の美ヶ原がいいイメージとなり、今中大センセーに教わったペダリングを意識して淡々と走る。ギアはほとんど39-21Tか23Tで行けた。ZIPPによる軽量化がここで効いていたかもしれない。
そんなこんなで、順調に10分を切るラップが続いた6周目、記憶では確かリフト下付近を過ぎたころから、どういうわけか千切れていく。追えども追えども追いつけない。いよいよもって力尽きたか。ryuさんも悲鳴を上げているようだった。こりゃ参った、どうしましょ! バックストレートでは完全に千切れて、とうとう諦めモードに入った。ホームストレートに入ってきて、ようやくその正体に気づく。Z1のラストスパートだったのだ。ペースを乱す原因がもう一つあったことをうっかり忘れてた。となると早くも1時間が過ぎたのか? 時計を確認して、半分を終えたことにすこしホッとしている自分がいた。
しかーし。一人旅決定! なのである。今回ばかりは、周りに誰も居なくなっていた。どうして、いつの間に一人になってしまうんだろう。
暫く行くと、はるか先でA木さんが一人、千切れているのが見えた。やはり、今の集団アタックはガツンときたようだ。トライアスリートの気分に切り替えて、黙々とターゲット(A木さん)を狙って走ることにした。とに角まだあと1時間もある。ここで意気消沈してはいられない。丸々1周走ってようやく追いつき、二人旅のローテーションは始まった。
A木さんは平地から下りにかけてが速く、特にテクニカルコーナーではこのウェット路面にもかかわらずインに切れ込むライン取りをするのでその度にすこし離された。逆に上り坂は僕のほうが大抵速く、しかもズンドコ引き離してしまい、その後追いつかれるとその勢いでパスしていくので、あまり僕は役に立っていないようなのである。10のうち5はA木さんが引き、2は僕が引き、残る3は誰も引いてないという感じだ。
徐々に雨は上がり、幾分走りやすくなってきたが、路面は相変わらず濡れていた。コーナーでA木さんに着いていこうと自転車を倒しこむ度に、あっけなくスリップしてズババーッとコーナーから飛び出す自分の姿を想像する。周囲に誰も居ないし、こういう機会にいっぺんくらい落車して、文字通り一皮剥けてみるのもいいかもな、などと妙なことを考えたりもする。落車願望ですかね?
幸い、そんなバカな考えは現実化せず、早くも12周目に入った。時計を見ると、これがラストラップ、そして、トップ集団にはラップされていない。「A認定ですかね」などとA木さんと話す。今回Z2クラスでは、1位と同一周回で走れた選手は、Aクラスに認定されることになっていた。Dクラスから一気にAになってしまうのか! それは僕にとってちっともありがたいことではなかったが、Zでラップされないレースが出来たことはとてもうれしかった。残るはA木さんとの一騎打ちである。心臓破りで先行するも、バックストレートであえなく追い越されるというのが今までのパターンだった。駆け引きなくただひたすら全力で駆け抜けよう、というシンプルな作戦でラストを走ることにした。いつものように坂で先行し、バックストレートでも追いついてくる気配はなかった。そのまま振り返らずに走る。結局先着してゴール。あれ? シャカリキになってたのはオイラだけですかね?


いつものように、終わった安堵感と満足感に浸っていると、「Z2のトップが今フィニーッシュ!」とDJの叫ぶ声が聞こえた。どういうこと? 2時間まであと数秒を残して12周を終えたトップは、一人だけ13周目に突入していたのだ。トップ以外の全員が、周回遅れとされてしまった。わっはっは! あっぱれじゃ!
僕にとってはある意味理想的なオチである。
出走者33人中15位。 アベレージ34.16km/h。

* * * * *

その後はレースを今までになくまじめに観戦。初めて、心臓破りの坂のヘアピンに足を運んだ。ここはギャラリーがいつもいるところだ。こうして坂を傍で見てみると、こんな急な坂を登っているオイラってエライじゃん? という気分に浸れる。そこへSの集団がやってきて、とんでもないスピードで駆け上がっていった。
うーん、やはりエリートはまるで違いますな。この坂をこのスピードは常識的にありえないの図、でござった。
尋常でないものを見るのは、それだけで面白い。