第27回つくばマラソン2007参戦日誌
2007/11/25
フルマラソン 42.195km

この大会は過去2回エントリーしているがいずれもDNSで会場に行ったこともない。毎年TDOから2週間後となるこの時期は、ラン用の身体を準備することはおろか、シーズン最後の疲労にどっと襲われて運動などとても出来る状態に無い、というありさまだった。今年もやはり、かなりの準備不足ではあるものの、三度目の正直として無事スタートの日を迎えることが出来たのは少しばかり進展があり喜ばしい。本格的な走りこみ期に入る前にとりあえずガツンとフルの距離を身体に叩き込めれば、この冬は去年までとは違う何かに期待できるに違いない。

とは言うものの、ここしばらく左脹脛の肉離れに悩まされており、安泰ではない。元はといえばこれは10月末にジムでピキっとやっちまったのが尾を引いている。まさにTDOに向けて自転車に専念していた頃で、ラン不足が招いた故障と思われる。少しでも速く走るとたちまちブッチ切れて走行不能状態に陥ってしまうようになり、キロ4分台の走りは封印状態が続いていた。TDO後は走行距離を伸ばすためスロージョグに徹し、最近はキロ5分半あたりまでであれば臨界点は超えない実績が出来つつあったが、どこまで持ち堪えるかは判らないので、20km走といった長距離も避けていた。ましてや42kmもの間何も起こらずに走りきれるものなのかは全くもって未知数であり、不安を抱えて当日を迎えることとなる。今月の走行距離は前日にやっと100kmに乗せたばかりだった。エントリー時に目標タイムを安易に3時間20分と書いてしまったが、たとえ脹脛の問題が無かったとしてもこの練習量では到底無理だろう。申告したタイムでゼッケンがある程度決まる為、2000番台の早めの番号を貰ってしまい、これは走る段になって少々気恥ずかしい思いをすることになる。

当日は幸いにも大変よく晴れて、筑波おろしもなく穏やかな日となった。肉離れ以外の懸念材料は一切無いのが助かる。逆に暑くなることが予想されたが、スロージョグに徹する今回の場合体温が上がらないので、夏のような暑さでもない限りは大歓迎。寒い中の長距離ランは時間と共に関節が固まって身体が動かなくなり、それ自体が抵抗になっている感すらある。
速く、スムーズで快適なつくばエクスプレス(TX)が何処までも続く田園地帯を滑空し、最寄の研究学園駅へJYUさんと共に到着(8時6分)。その目の前は筑波大学、かと思いきや、筑波と名のつく電車であるTXはいったい誰のために線路を引いたんだろう?ここから専用バスに20分も揺られ、たまたま座れたからいいものの、すし詰めの路線バスに立ちんぼはかなり辛い。しかも片道250円、これは参加費から賄われるべきだろうと思う。

会場に着き、アナウンスを聞いて驚いた。フル参加者は1万人以上居るらしい。せいぜいその半分くらいと思っていた。明らかにマンモス大会と言えるだろう。読みを誤ったかもしれん。
脹脛にはいつもより多めにテーピングを施し、サポータをはく。バランスを取るために右にも二筋にキネシオテープを貼った。走っている間に剥がれたりしないだろうか?
お約束のPolarトランスミッターを両面テープで貼ろうとしていたら、肝心の真ん中部分(信号を発する部分)が無くて紐だけ持ってきていたことに気づく。アホですかー!
まったく真剣味が無いのでのんびり準備してしまい、すっかりJYUさんの足手まといになっていることに気づかなかった。申し訳ございません。荷物預かり所はかなりの混雑状況。春のかすみがうらのように、これじゃスタートに間に合わないぞと思いつつも、まあ別にいいかとあきらめモード。窓口の人に袋をきちんと結ばなきゃダメだと怒られたり(袋が小さくて閉じないんだよ)預かり賃100円がどっかに転がって探しているうちに時間は過ぎ、気づいたらスタート2分前。慌てて走っていくものの、やたらと遠いし、キロ5分は超えてはならない。ようやくスタートエリアに来た頃は9時30分のスタート時刻を2分ほど過ぎていた。選手の列の最後尾に着き、そこで走るのをやめる。なぜなら、だれもまだ走ってないからだ。
渋滞の中をすり抜けて前を急ぐことは完全に不可能で、一緒になってトボトボと歩き、ようやくスタートラインを超えた。さすが1万人の大会ならではだ。

9:38 a.m. 8分遅れスタート
今日のウエアは、機能性Tシャツにアームウォーマー、ラン用スパッツ、キャップ。左脹脛にサポーター。手袋はなし。持ち物は、カーボショッツ、テーピングテープ少々、グリコBCAAタブ7-8個。
少しずつ走り出したので隙間を縫って徐々に前へ行く。当然ながらこれはストレスの溜まる作業だ。でもキロ7分くらいのこの流れに身を任せるのはそれ以上に苦痛。学園都市内の道路を走る。落葉の木々に囲まれた道はなかなか味があるが、ふと気づいたらさっきと全く同じ道を走っていることに気づいた。どうやら周回路を1周したようだ。ちゃんとコースを把握していなかった自分にとってはなんだか騙されたような、キツネにつままれた気分である。まあでも5km地点で30分弱と、思ったよりはロス無く走れていたので少し安心した。
続いて国道に出る。ここは片側2車線の大通りだが、ランナーはいきなり1車線に規制された。1万人規模の大会でまだ5kmしか走ってない時点で、道幅3.5mに限定されてはたまったものではない。というか、たまってしまった。再びキロ6-7分にスローダウン。前のほうが速いはずなのになぜこういうことになるんでしょう?
仕方なく追い越し車線に入り込み、クルマさんと一緒に走ることにする。ジグザグに縫って走らない分は楽だが、後ろから来るクルマとオマワリさんにも気をつけなければならない。たまに道幅一杯の路線バスが来るとかなりビビる。パイロンにもつっかえそうになる。僕と同じコンセプトで走っている奴を抜かすときはさらに危ない。
それにしてもこの国道、長いなあ。あまりに続くので飽きてきた。10km地点はこのどこかだったはずだが、確認できず通り過ぎてしまったようだ。

やがてやっと左に折れて、少し道幅も広くなり、追い越しやすくなってきた。
走り始めは少し痛みが感じられた脹脛は、徐々に慣れてきたせいかかなり安定してきて、ヘタなことをしない限りフルを走りきれそうだ、という安心感を得られるようになってきた。まだ15km付近ではあるが、右の足の裏がじんわり暑くなってきていた。靴の内部に余裕がありすぎてマメができそうな予感がしたので、路肩に上がって紐を締めなおす。走り出すと今度は締め付けた右足と緩い左足のコントラストが妙に気になってきた。んー左足も締めなおしたいが、先ほどのロスタイムは結構あったし、それに左足には計測チップがついていて簡単に締め直しができない。んー気になるなー困ったー、などとどうでもいいことでアタマは一杯。
気温はかなり高くなることは目に見えており、エイドは最初の5kmから大混雑。特にAminoValueは品薄で、並ばないと確保できない。そんなことでロスしたくないので、仕方なく比較的空いている水を貰い、残った紙コップを潰して握りながら走る。だがこの頃ノドの渇きはさほどでもなく、実は珍しいことに小腹が減ってきていたのだ。朝はおにぎり2個を家で食べたきりとはいえ、絶対的なカロリー不足とも思えず、これはいわゆる一つのハンガーノックの類いかもしれん。保険のつもりでカーボショッツがポケットに入っていたが、こんなことではもったいなくて食えん。せめて少しでも糖分を摂ろうと、アミノバリューが欲しいのだが、やっと運よく取れたと思ったら、3倍に薄まっていた。ケチー!
再び道を左折すると、今度は陽を正面に浴びて走る格好になると同時に、僅かに向かい風を感じた。集団内に入ってペースをあわせて走ったほうがいいかも、と思うが、やっぱり我慢できず反対車線にはみ出て追い越し続ける。向かいからは折り返してきたトップがやってきた。つまりこの道は選手がすれ違うことになるので、次第に反対車線にはみ出して走れなくなった。JYUさんはどのへんだろうか? とチラチラ見ながら走るものの、全く見つけられず。

20km地点がやってきたと同時に、反対車線は25km地点であることが判った。おいおいもう25kmも走った人たちがいるのかよ、と羨ましくなる。ここはグロスタイムで約1時間55分だったが、向かいを走る選手はどのくらいの速さなんだろう? と粘り強く計算してみたところ、自分のベストよりはまだまだ遅いことが判った。申告どおり3時間20分目標で走れていたら、自分は今まさに反対車線に居たのかと思うと少々気が滅入った。JYUさんをもっと手前から探すべきだったと知る。
ハーフを1時間53分程度で通過。これはちょうど、アイアンマンのフルに似たシチュエーションだな、と思う。今日は調子次第で4時間も切れないかも、と思っていたが、それは避けられそうだ。
やがて反対車線をひときわ大きな塊がやってきた。まるで有名アイドルとその取り巻きのような状況で、その塊は反対側にはみ出すほどの過密状態だ。風船がぷかぷか浮いているのが見えたのでほどなく正体が読めた。あれはペースメーカーだ。すれ違いざま、彼らの胸に「4時間以内」と書かれているのを見てガックリくる。レース半分を過ぎたのに、依然として自分はまだ4時間オーバーのところをウロウロしていたのか!

ようやく自分も折り返しポイントを通過。陽を真後ろから受けて、影が正面に見える図柄は、走っていて集中できるので好きだ。おまけに追い風に変わり、走りやすくなった。
バナナのあるエイドが初めて登場し、これが食いたかったんだよーと二つ貰う(約半本分)。少し元気を取り戻した。やがて「4時間以内」軍団に追いついた。大食い選手権のカレー盛りみたいな迫力だ。追い越すのも一苦労。この直後にトイレに行ったら元の木阿弥だな、と考える。

反対車線は走者もすっかり居なくなり、再び中央車線ギリギリラインが走りやすくなってくる。そんなころ一人ぽつねんと筋肉質なじいさんがやってきた。まるでエアギターを弾いているかのような、左右非対称でエキサイティングで、推進力に役立っているとはとても思えない独特な腕振りの彼を4km地点で追い越した場面を良く覚えている。背中に「フル完走1114回」と書いてあったのだ。マジですか!! 毎週レースに参加できたとしても22年かかるよ。
でも、この調子で走っていくと、いくら制限時間が緩いつくばでも関門にひっかかるのでは? 
ホントに1114回も「完走」したのかなあ?

暑さを本格的に感じ始め、アームウォーマーを脱ぐ。
靴紐を直したり、トイレに寄るなどはあったが、15km以降からはキロ5分をだいたい維持していた。これは当初の予想よりも速いペースである。こうなったら、最後までキロ5分以内をキープできるように走ることとしよう。前半抑え目に来たんだから、今後タレることなんて一瞬たりともあってはならない。一つの目標として徐々に意識するようになる。理屈では簡単なことに思えるが、最初からゆっくりペースでずっと走り続けると、身体がそのリズムをMaxスピードとして覚えてしまうんである。なので、今やこれっぽっちも余裕は無く、ペースアップなんてことはまずムリ。これは何故でしょうか?
30km地点に来た。ネットタイムで約2時間40分。ここから12.195km/h(=キロ4分55秒)で走れば3時間40分を切れる。んー、キロ5分を最後までキープする目的をしっかり見い出してしまった。しかも若干速くなければならないから、少し厳しいぞ、できるか?
おしることか、梅干とか、いままで無かった品揃え充実のエイドがあった。んー、おしるこギブミー!と思ったがかなりの人気で諦める。梅干を貰っておいた。まだ微妙にハラヘリ感は拭えないのと同時に、混雑するエイドを避け続けたツケが回ってきたのか、水分不足もかなり深刻になってきた。なるべく水がたっぷり入っているコップを探してゲット。尿検査くらいの量しか入ってないんだもんなー、紙コップがもったいないでしょう?

スタートからずっと人を掻き分けながら走り続け、最終的には500mくらい余計に走ることになるんじゃないか? それはそうと、ポジションはかなりあがってきたはずなので、いつかは周囲のペースに合い、追い越すストレスから開放されるかと思ったが、意外とスピード差は変わらない。一般的にマラソンはほとんどの人が徐々にスローダウンするため、ちょうどいい按配で同じペースの人を追い越しながら走ることになったようだ。やがて再び国道に出て、片側1車線の道をやはりはみ出して走る。今度は向かいからクルマが来るので回避が楽だ。35kmを過ぎ、この5kmはほぼキロ5分。特に「35kmの壁」はなかったが、スピードアップは厳しく、目標に対する時間的余裕も無い。残り7kmもきちんとイーブンペースで行けるだろうか?

ラスト3kmくらいになってしんどさが急に強くなってくる。そして僕の場合ピッチが遅くなり、必然的にストライドを増やさざるを得ない。脹脛には良くない状況だ。腕振りを常に意識し、前へ進めと言い聞かせないと、キロ5分を維持し続けるのが難しくなってきた。やばい。
ゴールまであと1km
40kmでのラップは24分6秒で、本日の区間記録だ。よくやった。レベルの低い目標だが満足。このまま集中してイーブンで走り通すだけ、のはずだったが、しんどさは1km毎に増えていく。ようやく競技場内のゴールアーチが見えてきて、ほぼ40分切りを確信した。最後なので少しペースアップだ!
それがいかんかった。ビキッと脹脛が切れた。ブチッだったかもしれん。とにかく音が聞こえた(気がした)。後ろの人を驚かせてしまったか気遣って振り返ったくらいだ。ギャーいてててて! 残すところあと500mなのに何てこった。もはや止まっても歩いても何も残すものは無いので、突如気が狂いだしたアブナイ奴としか見えないだろうがそのまま続けることにした。逆の脚に負担がのしかかるが短い距離だから何とか走りきれるだろう。計算では貯金はキロ5分ペースに対して20秒余っていたはず。残りトラック半周。ふと、先週の渋井の心境はどんな感じだったんだろうかと思う。
3時間40分に10秒を残してフィニッシュ。セーフ。
まったく、最後の最後でとんだどんでん返しだ。思えば下らない拘りのためにまた苦労が続く羽目になってしまった。

ネットタイム:3時間39分50秒(キロ5分12秒) グロスタイム:3時間47分41秒 男子総合2735位 気温19℃
区間タイム(10km地点見過ごす)

区間(km)
0〜5
〜15
〜20
〜25
〜30
〜35
〜40
〜42.2
ラップタイム
29:51
53:03
25:45
24:39
26:25
24:51
24:06
11:11
キロペース
5:58
5:18
5:09
4:56
5:17
4:58
4:49
5:06
備考   靴紐     トイレ     肉離れ

明日から車椅子か?と思ったが、意外とダメージは少なく、まあ激痛もなく歩けそうだ。発生してから走った距離が短かったので傷を広げなかったのだろう。随分大げさに考えてしまった。
それでも5分くらいはへたり込んで歩けず。ぼちぼちJYUさんを探し始めるが、実は30分も前にゴールしていたらしく、諦めて手荷物受け取りの長蛇の列に並んでいたところを、すっかり着替えて一杯やり終えたJYUさんがやって来た。ベスト更新ということでおめでとうございます。しかし、そんな有意義な大会だったのに、片や超不真面目なツレでまことすみません。手荷物受け取りに裕に20分は費やした後、生ビール売り場に急ぐ。この規模の大会にあって、たった一つのビール売り場は当然長蛇の列・・・。疲れた身体に色々と試練は続き、様々な点で参加者の立場に立って考えられていない大会であーる。早急なる改善を求む。まず、サーバーは数箇所設置せよ。
欲張って生ビールを2杯買い、至上の幸福感も束の間、天地が引っくり返る。

帰りのバスはこれまたラッキーに座れ、帰りのTXも武蔵野線も駅からのバスもこれ以上ないくらいにスムーズだったが、家に辿り着いた時は心底疲れた。つくばマラソンは考えてみたら自宅から時間的に最も近場のフルマラソンということに気付いたのだが・・・。
むろん東京マラソンを除く。