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2014五島長崎国際トライアスロン大会参戦日誌
6月13日(金曜日)2014/6/15 Swim 3.8km Bike 180.2km Run 42.2km 朝から荷物の準備をじっくり行い、11時に自宅出発。去年海外旅行のために買った大きなスーツケースを転がしていく。大は小を兼ねるという発想は嫌いだが、デカすぎて困る場面は今回は無さそうだし、広げられて中身が見やすい点が便利と考えた。バイクは1週間前にすでに送ってある。空港で川やんと合流し13時発の長崎行きソラシドエアに搭乗。離陸に30分手間取り長崎着が大幅に遅れたため、船に間に合うか少し不安だったが、何ら問題なかった。フェリー(万葉号)はガラガラで快適、トライアスリートは数人見かける程度。ホントにレースあるのか? 初バラモンの川やんにランコースのアップダウンについて説明していた中で、新島の獲得標高の話題になった。100mくらいじゃないの、と僕が言うと、「いやいや200m以上ある、誰かのブログで読んだよ」と言ってその証拠をスマホで探し出してくれた。「まっちゃきさん新島何位だった?」「去年はたしか、12位」「この人もっと速いよ、5位だよ」「へえ〜」 どれどれ、やたら長々とレースレポ書いて物好きな奴だが、どこか懐かしい感じもするそれ僕のサイトじゃないかー!(2011年のレポ) そんなこんなで3時間10分の船旅を終え(カントクはずっと寝てた)、午後8時ようやく福江港に到着。民泊事務所のKさんに出口で手厚く迎えられた。 近ツリに紹介された宿が三井楽(島の反対側)だったため自力での宿探しに切り替えた今年は、案の定どこも満室のなか、民泊という選択肢があることを知る。その取りまとめをする事務所長はマーシャルを担い、レース事情に理解あると判ったので、迷わずにここに決めた。宿の場所は島の各所に分散しているが、スイム会場にほど近い宿を割り当ててもらった。レース当日少し余裕が生まれることが期待できる。 本来民泊はイベント体験型宿泊が基本で、農業漁業を手伝ったり食事を作ったりするのがセットなのだが、事情を鑑みてオプションなしで受け入れてくれることになった。まあでも余裕があれば魅力あるイベントを体験してみたいのだが。 おかみさんのクルマへ乗り込み、宿へ向かう。大きな荷物を抱えて福江のホテルまでてくてく歩くよりも快適かもしれない。 紹介してくれた民泊はごく普通の漁師さんの家で、宿泊施設らしいところはどこにもなかった。あてがわれた部屋はかつての子供部屋で、学習スタンドや歌手のポスターなど当時のままの姿で残されており、まさにホームステイである。 早めに島入りしていたI口さんと合流。 夕飯はその日釣ってきた魚から、ジャガイモのピザなんてハイカラなものまで、バラエティ豊富で飽きさせない工夫が感じられた。魚は縞鯵と石鯛で、美味なのは言うまでもない。 レース前日(土曜日) 宿が福江だったこれまでとは少々勝手が異なる。朝食後まずは福江へクルマで送ってもらう。ランギアバッグに入れるアイテムとヘルメットを持っていくのを忘れずに。バイクが福江商店街の民泊事務所に届いており、2時間ほどかけて組み立てた後(予想以上に手こずった)受付会場へ。その場でランギアバッグを預ける。選手説明会を聴いた後にバイクを預託。川やんがバイクチェック時に必要なヘルメットを宿に忘れてきたため(きちんと伝えておけばよかった)I口さんのメットを借りて往復14kmを走る羽目に。カントクはリムセメントを塗ってないスペアタイヤを指摘され、塗ったタイヤを明日セットするように言われた。カントクごめん僕が甘かったす。 そんなこんなで割と慌ただしく、昼飯をホカ弁ですませたのがちょっと残念。五島らしくないずさんな出来だったのも残念。 一通り終わると逆に暇になった。みんなで五島高校を覗いたり武家屋敷通りを歩いて観光らしきことを。明日の補給をコンビニで調達し、おかみさんに迎えに来てもらう。 宿の目の前の小さな港を散歩したりしてリラックス。宿泊客は僕ら4人だけなので騒々しさもなく、落ち着いてレースを迎えることができた。 唯一気になるのが、水曜日にふとした拍子で現れた左股関節の痛み、鼠蹊部痛。痛いというよりまだ違和感程度だが、じわじわ目立ってきて気になる。本格化する前にレースを終わらせてしまいたい。鼠蹊部痛は数ある故障のなかでも特に嫌いな部類だ。何というか、不愉快な痛みなのだ。我慢して抗おうとの気力が萎え、地味ながら影響が大きい。 今日も宿の夕飯は美味かった。少々困るのは、酒が飲みたくなるメニューってことだ。おかずだけで腹が満たされそうになったので、鶏炊き込みご飯をモリモリ食べる。 準備は十分済ませ、夜9時には就寝。 レース日 朝4時から朝食。老いた飼い犬が夜中に珍しく吠えて煩かった、と宿の人は心配していたが、全く気付かずに寝ていた。耳栓していたし。 5時過ぎに宿を出発、クルマでスイム会場へ送ってもらう。これは実に快適だ。福江の場合、4時半外濠公園発のバスに乗るため、宿を早めに出なければならない。 やや肌寒いくらいで、風は弱い。例年割と風が強くて、大漁旗がはためき、テントが吹き飛びそうになることもある。今年は穏やかだ。順調に準備を済ませる。バイクシューズはペダルに固定。タイヤ空気圧は7.5。カロリージェルリンゴ風味3本+MD粉末+BioAthleteP3(大豆ペプチド)+アミノバリュー+RedBullというおぞましいスペシャルドリンクボトル1本を装着。もう一つのケージは空。もう1本、グレープフルーツ風味で作ったボトルはバイクスペシャルとして預ける。推定合計1500kcal。全然足りないけどね。 軽量化もばっちり済ませた。 鼠蹊部の違和感がやはり気になる。まだ影響はないが、ランで出てこないことを祈る。 MC二人とコースディレクター山本みっちゃんが賑やかに場を盛り上げている。最終フィニッシュの22時過ぎまで、この人たちにとっても長い一日だ。 緊張度がウザいくらい高まってきた。スタートすれば10時間動きっぱなしで緊張もクソもない。何に対して自分は緊張しているんだろう。スイムスタートが上手くできるかがそんなに気になるんだろうか? スタート10分前、試泳を始める。水が冷たい。四十肩に響くかと思ったが、まあ問題なさそう。Ironmanと同じフローティングスタート。寒いのでスタート位置への移動をギリギリまで伸ばす。5分前、なぜか空いているインコースへ向かった。 恒例の雄叫びが富江港に響き渡る。「絶対にゴールテープを切るぞーっ!」「ウォ〜〜〜〜」 とある女性が叫んだ。「誰か私をヨメに貰ってくださーい!」「ウォ〜〜〜〜」 和んだ。 ![]() 空いていたおかげで、スイムバトルは無くスタートできた。第1ブイが近づくにつれ徐々に左から大群が押し寄せてくるのを覚悟したが、すでに人員整理が済んでいるためかいつまでも平和だ。 ベタ凪のため遠くのブイも見渡せるが、水質は思いのほか濁っており透明度はかなり低く、周囲の選手を水中から確認できない。コースロープは目立たないので、正面の目標物を目指して泳ぐスタイルで行く。ヘッドアップの頻度が高くなるが、あまり悩まずに済む。 長年愛用してきたRudyの度付きサングラスが、つい先日経年変化で割れてしまったので、今回は久しぶりにコンタクトレンズ装着でのレース。スイムゴーグルは度入りしか持ってなかったため、急きょ昨日エキスポで購入した。綱渡りなことを相変わらずやっとります。もちろん本日初使用だが、曇り止めが効かない。イタリアクオリティってそんなもん? レンズが大きいのが取り柄だが、従来品と比べて特段アドバンテージは感じない。顔にはフィットしているようで、水の浸入は無くて助かった。 寒い。 水温は朝の発表では21.4℃。まあ何ら問題ないはずだ。2004年は水温18℃の中、ロングジョンで泳いで死ぬ思いをした。そりゃ、保温能力の無くなった古いウェットのせいだよ、と周囲から当然のように言われた。その手痛い経験から早速購入したShiromotoのウェットが、今年で10年目を迎える。ロングジョンQuantanaRooの当時の使用年数をいつしか超えていた。 だがホントの原因は、袖の下に開いた大きな穴だろう。ウェット専用接着剤で丹念にパッチしたつもりだったが、あっという間に剥がれてしまったようだ。 全身ガタガタ震えながら泳ぐ。早く温まらないかな、の一心で。 上陸地点を含めると全部で6つのコーナーがある複雑なコース。3,4番目がかなり接近していたことが去年とは大きく違う点だろう。 数人の集団は大分固定化してきた。今回、ちょうどいいペースメーカーを見つけて後ろに着いた。スリップストリームを最大限利用する。 1周目を終えて上がると、半ば予想通りカントクが間近で応援してくれていた。「30分切ってますからね、この辺りまだ速い選手です」と山本ディレクターのMCが聞こえてきた。30分切ってたか。それは良かった。 2周目も慎重にお気に入りの選手に着いて泳ぐ。だが、1つ目のブイを曲がった頃から着いていくのがやや厳しくなってきた。ちょっとしたことをきっかけに、ぷいっと見えなくなり、そして離れてしまった。あかーん! 時期を同じくして、僕の後続選手がしびれを切らしたかのように前に出てきた。頼む、代わりに彼を追ってくれ。その人の後ろについた。先頭交代したような恰好。 相変わらず寒さとの戦いでもあった。あともう少し…兎に角早く泳ぎ切ることしか頭になかった。四十肩の痛みはほとんど問題なく、また腕が干上がるような気配も全くなかった。なぜだろう? 鍛え方はまだまだ足りてないと思うのだが。 集団の連帯感を勝手に感じながら、黙々と泳いだ。最後のブイを曲がってからはラストスパート。早く寒さから逃れたいの一心で。 swim3.8km1:01:16(23位) HR108/119 lap1 29:27 HR110 Lap2 31:49 HR107(Lap2のほうが距離は長い) タイムは良かったが去年と比べてコースが短かったのは明らかで、もしかすると公式距離よりも若干短いか。飛ばしたと思った2周目のほうが心拍が低いのは昔からのお約束。それにしても、去年より心拍が10以上低いのはなぜか。抑えて楽をした印象は全くなく、追い込み度は高いつもりなのだが。 「この時点ですでに20数名の選手がスイムフィニッシュしています」と山本Dの声が聞こえた。マジか、好感触に反してスイムでのポジションは期待以下だったようで少しガッカリ。 テントへ駆け込み、ウェットを脱ぐ場面で、ぐるんぐるんと目が回りまともに立っていられない。大丈夫か? 春に襲われた前庭神経炎を思い出す。テントを出るとまずはトイレ直行。最近は秘策により寄らずに済ませているが、今回はスイムに集中したためうまくいかなかった。例によって、呆れるほどの量が出る。2分くらいは要しただろう。くっそ寒いんだからしょうがねーだろ!って八つ当たりしたい気分。 8:05 a.m. バイクスタート 歯をガチガチ言わせながら走る。寒い寒い寒い〜〜〜。顎が筋肉痛になりそうだ。 10kmほどは耐えて走り、ようやく身体が温まってきた。さて、ここからだ。 乗ってすぐ感じたのがサドルの違和感。今回、バイクを段ボールに詰めて宅配便で送るにあたり、サドルを外す必要があった。再セットで角度が狂ったらしく前上がりになっている。なぜ昨日気づかなかったかな〜? と、そこでハッとする。そういえばシートポストも下げたんだった。VXRSのフレームはシートポストのほとんどを覆う構造になっているため、サドル高の調整代はごくわずかで、僕の場合約1cm。一見下げたように見えず、その1cmを戻し忘れた。しかし、サドル高が1cm変わると、走りにはそれなりに影響する。そのうえ前上がり…マジかよやる気なくすなー。 序盤で何人かに抜かれるのは想定内。同じくらい抜き返したいところだが、遅い選手は降ってこないので順位は落ちる一方。去年は総合8位だったが、今は27位くらいか。この先どうやって一桁まで這いあがれる? ありえないよな。やはり今年は一気にレベルが上がったか。ぶつくさ考えず、やれることをやるだけだ。ライバルは去年の自分、気持ちを落とすな、と言い聞かせる。 心拍が115bpm前後で推移している。やや低すぎるかと思うが、180kmをタレずに走りきれる負荷がこのくらい、と身体は訴えている。どうせレース後半は心拍が下がりにくくなるから、今のうち心臓を温存しておくのは悪くないだろう。 ほぼ無風か、若干追い風基調のなか、順調に二本楠まで来た。抑えすぎたと思っていたが、ログによればほぼ去年と同じペース。 54.5kmを2周する周回ルートの起点、二本楠交差点を左折する。ダラダラ上りも落ち着いてクリア。 対面通行となる大宝の折り返し区間に入る。トップ選手との差が確認できるところ。 去年序盤に同じポジションにいた見覚えある選手を対向に認めた。むむー、遅れをとっている証拠か。トイレでロスした分と考えれば辻褄が合うが、生理現象は誰もが共通にあるもの。 折り返し後、選手が詰まってきたので速度調整していると、数人にパスされた。中でも目立っていたのが、M25の選手。ロングとは思えないアタックのような加速をする。 程なくして長い平地にくると、彼が一人ぽつんと走っていた。自分がいつしかスローダウンしていることにも気付いてない。普通に追い越した。 ところが、ムキになっているのか抜き返してきた。若いな。そんな雑な走り方じゃ後で必ず失速するぞ。そう告げたかった。 しばらくは若い彼を含む数人がポジションを変化させていたが、やがて落ち着いて整理されてくると、ペースが合う選手が一人いることが見えてきた。Monsterジャージのその選手は周りのペースに惑わされない走り方をしていたのが判った。自然と僕は彼をマークするようになっていた。 ![]() 彼は僕より微妙に速かった。TTバイクだけあって特に下りで差が付く。全く意識してなかったら徐々に離されていくペースだ。おかげで、ふとした拍子に近づき過ぎて車間調整を強いられる場面が少なかった。逆に、見えなくなるほど離れることもあった。そのまま居なくなれば、それはそれでいいと考えた。 だが不思議と距離は保ったまま走れた。HRは125前後が中心で、まだオーバーペースとは言えない。 荒川を過ぎ、コース中最も傾斜がキツいと思われる区間で、「ヒロシの店」率いる赤いTシャツ軍団の応援を受けた。去年は出会えなかったので、もう完全引退したのかと思っていたが、ご夫婦の元気一杯な声は健在だった。嬉しい限りだ。トレードマークは巨大うちわだが、今日もあいにくそれを必要としない気温の低さ。 三井楽の集落を横切ると、4つの立派なトンネルが連続する。たしか昔の大会では無かったはずで、獲得標高は年々減っているのではと思う。遠い選手のギアチェンジもトンネル内に反響しよく聞こえる。道が広くスピード感に乏しいうえに、上り勾配に気づきにくいので、速度低下に萎える場面だ。早くもふくらはぎがぴくっと攣ったりして、まだ1/3しか来てないのに何やってんだ…などと益々落胆するのがこれまでの常だったが、今年はとりあえず大丈夫。ま、それが当たり前であり自慢にもならないが。180kmをタレずに走りきるペースは今のところ厳守している。 岐宿町の交差点を右折すると一気に南へ進路を変え、向かい風となる。 スタート時から持っているスペシャルボトルがまだ空になってないので、80kmのスペシャルエイドはスルーした。ターゲットの彼も同じだ。 大豆ペプチド入りのスペシャルは思いのほか飲みやすい。単にリンゴ味ベースが良かっただけかもしれないが、大豆風味がマイナスになってない。後々のためにもきちんと飲み干しておこうと思った。 時々、路面に10m単位でラインが数本引いてあり、高速道路の車間確認と同様、ドラフティングゾーンをキープせよとのメッセージであるが、もちろん実用上の意味もある。今回、この機能を初めて活用することになった。つまりこの頃になると差はギリギリまで縮まっており、徐々に彼のペースが落ち始めているのを感じていた。そろそろ追い越すべきときが来ている。 やがて二本楠交差点を通過。1周のラップタイムを見る。1時間40分、去年がたしか41分台だったから僅かに速いが、去年は1周目でスペシャルを取ったので、そのロスを考えればほぼ同じだ。 ここからは、Bタイプの選手を最後尾から辿りながら徐々にポジションを上げていく。どこでカントクに追いつくかが興味深い対象の一つだ。前方の山々にぽつぽつと立っている風力発電は、1周目の時よりも明らかに勢いがよかった。 徐々に上りが始まり、トンネルまでしばらく続く。ペースに無理がないかどうか見極めつつ、ターゲットの彼を追い越す。トンネル内で十分引き離したことを確認し、続く下りでも気を抜かずに走った。ある程度離れないと、ブロッキングとなりウザい存在となるためだ。 ところが、大宝の対面通行区間でひょいと抜き返された。そういうことですか。 折り返しのエイドでは、何の気まぐれかビスケットに手を出す。これまで見向きもしなかったアイテムだったが、甘さ控えめでシンプルな味わいが結構いけるし、気分転換にもなった。食わず嫌いは損しているかもしれない。 抜きつ抜かれつは体力を消耗するので繰り返したくないが、やはり彼のペースは1周目より明らかに遅い。上りに差し掛かったところで横に並ぶ。僕の存在には当然気づいていると思ったので、「うざくてすみません。ちょうどペースが合うもので」と話しかける。そのまま追い越すことになると思ったが、彼が粘ったので一旦後ろに下がる。 エイドにさしかかり、彼はスローダウンしてボトルを求めた。エイドに用がない僕も律儀にペースを合わせるのはいくらなんでも変だ、これを機に追い越し、ペースを上げる。しばらく抑えめで来たから、少し取り返すつもりで。 今度は引き離したようだ。 Aタイプの選手を3人ごっそり追い越した。イーブン走は後半少しずつポジションを上げることになるのは経験上判っているが、ようやく効果が表れ始めた。沿道から「20番!」と教わる。 沿道の応援には、手を振ったり一礼したり「ありがと〜」って答えたりして楽しんでいる。5-6時間もの間、修行みたいに黙々と走るよりリラックスしたほうがいいね。2周目になると沿道の人も新鮮味が薄れて大人しくなるので、こちらから積極的にアピールすると火がつくので面白い。やっぱお祭りみたいに楽しむのがいい。 2周目はスペシャルエイドに立ち寄る。残り40kmほどでこの濃厚ジェルを飲み干さなくては。グレープフルーツ風味は大豆と相性が悪く、一転して不味いよ参ったな〜。 去年はこのあたりでカントクに追いついたんだよな、と思い出していたその時、Bタイプのさおりんを前方に発見する。 さおりんは、ゴールデンウィークの小金井トラ合宿で知り合ったご近所さんで、カントクの良きライバルだ。新島での直接対決では一勝一敗、今年の宮古島を好記録で完走しており、カントク劣勢かと思われたが、現在はどうやら先行中らしい。 怪しげな奴が急接近して驚かせてしまった。 やがて二本楠を左折、周回路を抜ける。2周目は1時間44分と、スペシャルに立ち寄った分を差し引いても大分タレてしまった。追い込んだつもりだったが、キレがなかったようで残念。 ここから福江地区方面へはややきつくて長い上りと、ジェットコースターのようなアップダウン区間に脚が削られるが、追い風基調にかなり助けられた。逆向きだったら相当の痛手だっただろう。 空港付近の対面通行部分でカントクを発見。折り返し後は向かい風で一気にしんどくなった。客観的に見てさほど風も強くなく、些細な障害でもペースがめっきり落ちた。また、右足の親指先端が強烈に痛い。バイクでいつも痛くなるところなのでテーピングをしてあったのだが、効かなくなっているようだ。指に力が入るダンシングで特に痛む。こんなんで、ランシューズ履けるのかな。 右手に鬼岳、左に海を見下ろせる旧ランコースに入ったところで、ようやくカントクに追いつく。さぞかし鼻の孔を膨らませて上機嫌かと思いきや、腹が痛くて暫く何も食えないという。まあでも笑顔は見せているから何とか乗り切るだろう。 追い風に乗って最後のバイクコースを突き進む。ほっといても40km/h以上出るでしょ、って場面でふらふら走っているBタイプの選手が多い。もはや風前の灯って状況らしい。 太陽の存在感が増してきた。ランではサングラスもサンバイザーも不要、とつい先ほどまで考えていたが、改めることにする。次のランへの準備を頭で描きつつ、最後までキッチリ飛ばす。車上でシューズを脱ぎ、滞りなくバイクフィニッシュラインを通過。 bike180.2km 5:41:00(16位) 前後トランジットタイム含む 実質平均速度31.7km/h HR126/147 獲得標高1830m 4215kcal(Swim含む) 実はバイクで11位までポジションを上げたのだがこの時点では判っていない。もっと悪いと思っていた。ただ、早々に潰れると踏んだM25の選手にはこの時点で追いつかず。 テントに駆け込み、靴下をはく。あれほど痛かった右足の親指の痛みは、ランシューズに履き替えると消えた。サンバイザーとウェストポーチを装着しテントを出る。手にはお守り代わりにアミノバイタルスーパー。ここまでは2分以内で済んでいるはずだが、ランスタートのバルーンゲートまでは180mほど距離がある。 1:42 p.m. ランスタート 今回のバイクは雨にも見舞われず、灼熱の暑さで水をかけ続ける必要もなかったため、膀胱を空にする機会を得られずバイクを終えた(詳しい説明は省きますが)。ゲート直後のエイドに立ち寄り、仮設トイレへ駆け込む。やはりこれでもかと出続ける。よう溜まってたなあ。 トイレから出て靴ひもを締め直していると、「のんびりやってて大丈夫かい!」とエイドのおばちゃんが心配して声かけてきた。「慌ててもしゃーない、これから長いんだから。じゃ行ってくるよ」「行ってらっしゃーい」 バイクタイムは去年より数秒速かったがこの時点では把握できておらず、逆に数分遅れたと思い込んでいた。抑えた分、疲労感は去年よりも少ないという印象。そんなわけでランに期待というか、結果を出さなければ意味がない。果たしてどんなもんかな。まずはいつも通り、キロ4分40ペースを狙うがエイドや上り坂での遅れは取り返さないとのスタンス。最初の1kmは6分※。トイレで長居した割には良いタイム。次は4分37※で、早速目標レベル以上だ。続いて4分29※と、さらに速くなっている。目標以上に飛ばすつもりは毛頭ないが、結果としてなぜか速い。距離表示が不正確と考えれば辻褄があう。しばらく疑いながら走る(※印のタイムは実際疑わしい。考察の詳細は後述)。 それよりも、認識と異なるランコースに頭が混乱し始めていた。去年の折り返しポイントまでは全く同じ道と思い込んでいたのだ。1km過ぎで早速見知らぬ景色となる。今年差し替えられた区間は、緩やかな上りと下りと平坦が入り混じったアップダウン。やばい。I口さんと川やんには、「コブのようなハッキリとしたアップダウンが2か所、それ以外は平坦、以上。」とコース説明していた。川やんはたぶん気にしないからOKとして、I口さんは事前説明と現実との差異に極度の不安に陥り、パフォーマンスに影響が出るに違いない。何としてもランスタート直後のタイミングですれ違い、訂正を告げなければ。 Bのプロカテの選手とすれ違う。去年のチャンピョン、篠崎君は3番手で折り返してきた。走りには勢いがなく、表情も冴えない。苦しい戦いをしているようだ。「最後まで諦めるな」と声をかける。大きなお世話だったかもしれん(結果的には総合2位)。 4.4kmほどで去年の見覚えある道へ合流する。1.2kmほど平地を走り、標高差20mの切り立った上りへと入る。脚が攣る気配もなく、とりあえず問題なく上れている。 キロ4分40ペースは、エイドでのタイムロス10〜20秒程度を見越したうえでの設定であり、今のところエイドにあまり用が無く、通常のマラソン同様に1杯の水を貰う程度で減速せず通過できているため、目標以上のペースを刻んでいる。 8.3km付近の奥浦郵便局、去年の折り返しポイントを通過する。ここからの道は最近舗装されたようで黒々としたアスファルトに白いラインが眩しい。恐らくこの先の堂崎天主堂の世界遺産登録を目論んでの整備だろう。 ここからは平たん、と聞いていたような気がするが、しっかり15mほどのコブがある。しかも、上ったところで折り返しではなく、いったん下ってから折り返す。つまりこのコブを復路も上らなきゃならない。あれ〜?それって去年のコースより緩くなったって言えないんじゃないか?(ルートラボによれば獲得標高は今年のほうが70mほど少ない) ![]() そろそろかなと思っていたらカントクが前方に見えた。早いうちから気づいたのだろう、欽ちゃん走りをやっているので僕も応えなければならない。相当調子良さげだ。あいにくだがこちらも調子いいぞ。いつもながら、カントクの威勢のいいハイタッチには圧倒される。 久しぶりにAタイプの選手をパスする。彼も決して遅くないので抜かすべきか迷ったが、戦略的な考えは捨ててとりあえず行けるところまで行く。ライバルは自分自身と決めたではないか。 恐れていた鼠蹊部痛は現れない。Takumi Renのフィーリングも極めてよく、ノートラブルでスタート地点に戻ってきた。ランのスペシャルを受け取る。2周回目を示すベルトを腕に巻かれる。 バルーンゲート(推定21.1km地点)通過は1:38:40、トイレのロスを差し引けばここまで実質平均キロ4分37秒で十分速い。 が、いよいよ異変が現れ始める。脚の運びが重くなり、ピッチが落ち始め、低血糖でふらふら感が強くなってきた。加えて、1周目より明らかに暑さが堪えるようになってきて、エイドで確実に水が欲しい。飲む分と身体に掛ける分。ロスを惜しみどちらかを怠ると、次のエイドまでが辛くなった。しかし、今日はさほど暑くないと見ているのか、エイドにスポンジの用意はなく、貰えるのは紙コップ1,2個。水浴び用バケツは大抵で先客に占拠されている。 2周回目の序盤で、五島初回参加時からの知り合いのおじさんに遭遇。声をかける。今年は調子いいよ。 その後、カントクとスライド。元気ないぞう!と見透かされてしまう。 徐々にペースは落ち、26kmでとうとうキロ5を超えてしまった。心拍も135bpm前後まで落ちている。脚が終わりかけているのと、ハンガーノックに近いフラフラ感。補給が必要だが、摂る気力がない。もっと元気なころに努めて摂っておくべきだったか、とは終わった後で思うこと。 身体を冷却することが直後の走りに大きく影響するようになり、エイド活用がますます重要になってきた。「水かけてください!」と大声で切実さをアピールするのは、ひしゃくなどがBタイプの選手に使われてしまっているからだ。だが残念なことに、エイドのスタッフは一刻を争うというこちらの切羽詰まった状況を全く酌んでくれない。「水かけますか〜? かける? かけていい? かけるよ。どっからいく? 頭からいく? 肩から? 頭からいっちゃうね〜 かけていい? かけるよー」・・・・・・ちょろちょろちょろ〜〜 水かけるだけなのに時間かけ過ぎ。休憩場所のようにエイドで長居するBタイプの選手層と被っているためだろうか。 お願いですからHully Up! まあとにかく急ぐためには人任せにしてはならず、全て自分でやることが肝心なのだが、「何にしますか〜」と訊かれてるとつい条件反射で「えと、じゃコーラ下さい」とか答えてしまうんだよ。訊いたからにはすぐ出してくれるのかと思ったら、そうじゃない、これから冷えたのをコップに注ぎますね、ってもてなしのノリなんだ。 ようやく最後の折り返しコーンを回る。この頃はすっかり絶望的な感じになってきた。まあいつものことだが。ただ、ラップは5分を多少過ぎた程度で、従来の常である大タレ状態には至ってない。歩きたいとは全く思わなかったので、しんどいなりに粘れるようになってきたか。上り坂も走ってクリアし、キロ6まで落ちることはなかった。 ![]() 最後の長い坂を上る途中で、Aタイプの選手をパス。大分ヘロってはいたが、抜き返される心配が出てきたのは、同じくらい自分もヘロってきたからだ。案の定、と言うべきか、別のAの選手にパスされた。ラン中盤で抜いた彼だ。やっぱりか、と思ったが仕方ない。 そのすぐ後、ラスト3kmってあたりで、さきほど会った島のおじさんが急に道に飛び出してきて、目の前に立ちふさがった。フラフラで今にも倒れそうな僕の両肩をぐわしと掴み、大声で叫んでいる。突然のことでびっくりしてしまったが、どうやら「奥さんがもう先に行っちゃったよしっかりしろ」ってことらしい。とにかくそれを伝えなければ、の一心のようだ。後で聞いたら、おじさんは僕の奥さんと思しき人を選手リストから探し出したという(前回会った時はまだ独身だったからね)。どう考えても年齢が合わないのが疑問だったらしいが、つい先ほど本人照合できた。そこまで熱心に調べてくれたことに感謝であるが、カントクがBで僕はAってことは判ってないみたい。 ゴールまで残り2,3kmともなれば、もう終わったも同然と思えそうだが、とてつもなく長く感じた。今日一日で最もキツイと思った区間だ。サングラスを取ってみた。何かが変わるかと思ったが、逆効果だった。寿命が来た蛍光灯のようなフリッカーが視界全体に発生していた。これは面白いと思ってしまったほどだ。脳みその糖分がいよいよ不足しているらしい。また一人、Aゼッケンにパスされる。あまりに勢いがあって、食らいつくのは到底無理だった。終盤で2つ順位を落とし、気の落ち込みも多少はあったかもしれない。心拍は120台に落ちた。負荷的には全くユルユルのはずだ。 ゴールまであと300mという場面で、弱気になった僕は後ろを振り返る。Aゼッケンの選手がちらりと見えた。なぬー。勘弁してくれよ。彼は間違いなく僕をロックオンしているはずだ。3人に抜かれたら後悔は計り知れない! しかし、相手を諦めさせるような加速が全くできない。逆に見透かされて刺されるのがオチだ。どうせ逃げられないから諦めろと悪魔のささやき。ぐへー超しんどい。 あの角を曲がれば、あとはゴールへの花道。辛抱はそこまでだ。予想通り、角では同伴ゴールを待つカントクの姿があった。追っ手はかわせたようだ(またしても幻影だった?)。 二人で一緒に花道を駆け抜ける。カントクが速くてちょっと焦ったが、何とかついていった。そして念願のフィニーッシュ。 ![]() ![]() run42.2km 3:29:48(12位) P4:58 HR138/153 2660kcal ランのラップタイムは、不自然に時間がかかっている区間が各周回で1つずつある。特に2周目は曲がりなりにもラストスパートしたはずのゴールまでの1kmがやたらと長い。ロスする要因は何も思いあたらないので、単純に距離が長いはず。 推測の域を出ないが、恐らく他の1km毎の区間が均等に1kmに満たず、そのしわ寄せが最後の区間に集中したのではないかと思う。そう考えると体感より妙に速いラップタイムも合点がいく。僕の調べでは、そのしわ寄せ分はトータル約400m。つまり他の40区間の1kmは実際には990mしかなかった計算。10m走るのにキロ5分なら3秒。 ルートラボなどで調べた限り、ラン全体の距離が42.2kmより長い可能性は考えにくい。 総合10:12:04 9位/653人 6860kcal HR128/153 トレーニングロード1176 獲得標高260m(ルートラボ) ラン後半は潰れはしたが、2008年のベストである3時間35分切りは確信できたので、十分満足のいく結果だった。キリのいい3時間半を僅かながら切れていたことを後で知って、さらに嬉しかった。正直言うと前半の頃はもっと短縮できそうな気になっていたので、取り逃した感も無くはないが、新たな感触を掴めたのは間違いない。次のチャレンジにとっておこう。 HR120に落ちてもしんどかったのはやはり脚が完全に終わっていたからで、その後は数歩歩くのもしんどかった。芝生に腰を下ろし、ごろんと寝転がるまでの動作全てで難儀した。ボーっとしていたら、物見山ジャージをネタに初めて声をかけられた。トラでは知名度無いからね。 長い時間かけて落ち着かせた後は、元カメラマンがIターンで始めた居酒屋へ行く。去年立ち寄ってとても気に入り、今年もフィニッシュしたらぜひ行こうと決めていた。1年経ったら無くなってた、ってことはなく、常連客を増やして益々人気の店になっているようだ。落ち着いた雰囲気は健在で、地元の食材を使った料理を並べてのプチ贅沢な祝杯を二人であげる。カントクは僕以上に記録を大幅更新し、手放しで喜べる結果となった。 再びゴール会場へ戻り、I口さんと川やんのゴールを待つ。ベンチでのんびりしている間に、二人ともゴールの瞬間を見逃してしまった。ランで抜きつ抜かれつを何回と繰り返したらしい。やはり因縁の対決だったね。 民泊のおかみさんにクルマで送ってもらって、家で4人改めて祝杯をあげる。早朝からスイム会場で手伝ったという旦那さんにとっても長い一日だった。ビールをご馳走になる。 やはり、ロングの後のビールはなぜか苦いのであった。 6月16日(月曜日) コインランドリー経由で福江へ送ってもらう。洗い物は必ず出るので、毎回スケジュールにきちんと入れておくべきだ。 今回は太ももの筋肉痛が強烈で、それ以外で目立った筋肉痛はない。宿の急な階段は後ろ向きで下る。鼠蹊部痛はすっかりどっかへ行ってしまった。 痛みといえば、首回りのウェットスーツの擦れが激しい。キネシオテープで予防したのだがそれより広範囲に擦れてしまった。以前より体に合わなくなっているのは何故だろう。ヘッドアップの頻度が高かっただろうか。 それより、風邪ひいたかも。思えば、バイク途中から喉の奥がチリチリし始めた。ゴール後はすっかり喉が痛くて、飴が欲しかった。原因は、1時間ガクガク震えながら泳いだスイムにあると確信している。潜伏期間ゼロだからそれはない? でもそれ以外思いつかない。 午前中バイク梱包に予想以上に時間がかかってしまい、慌てて文化会館へ向かう途中、じょ〜さんからのメールで年代別1位と知る。やばい、表彰式に行かないと。 ここバラモンの年代別順位は総合入賞者を除外しない。むしろ年代別表彰を主にしている印象があり、総合順位の表彰は3位までだ。 疑問なのが、Bタイプの順位がプロカテゴリーも一緒くたにされていることだ。プロカテはスタート時刻も全く別で、待遇や条件がはっきり異なっている。さらに、プロカテはプロカテの表彰がある。当然上位はプロカテが埋め尽くすから、同じ人が二度表彰されて白けた結果になっている。おかしいでしょ。 最後に昨日のダイジェストビデオが流れる。これ見ると来年はもっと頑張ろうって気になるんだよな。 自分が映ってた。ラン15km付近、最もノリノリだった自分の姿に意外なものを見た。ずいぶんと上下動が激しいうえに、左右にもブレている。V型エンジンのピストンを表現してみましたって感じで、これはまさしく過去の自分の特徴的なフォームだ。というか、現在形だったらしい。こんなエネルギーロスの激しいフォームじゃダメだろう。昔の腕振りスタイルに戻したのが影響しているのかな。 進行が押しまくり、中庭でのアワードパーティもほとんど時間がないうえに、料理は長蛇の列で全くありつけない。やっと食べ始めたと思ったら、ゴミ拾いイベント召集。残念ながら参加する暇がない。 ようやく腹が満たされたら、逆にやることがなくなった。梱包作業を途中で止めて午後に回してもよかったかもしれない。歩くのもしんどいので、街中を散策する気もおきず。郊外に大型店舗ができてから商店街が急に寂れた、と民泊のおかみさんは呟いてた。過疎化は人為的なものだったのだ。あちこちシャッターが下り、スーパーも消えてしまった。島の復興と開発は足並みそろっているんだろうか? やるせないな。 この辺りで落ち着ける喫茶店がないか訊ねたら、民泊事務所の女性が店の前まで案内してくれた。ひっそりとたたずむ姿はまさしく、ザ・喫茶店。当初僕らだけだったが、次第に客が増えて満席近くになった。ほとんど選手関係。みんな知ってるんだな。 帰路では小金井トラのカマさんや志賀夫妻と一緒になり、退屈しなかった。夫婦って似るんだなー、と二人の後姿をみてしみじみ思った。 僕らはどう映るんだろう? RESULT
Total 10:12:04 (Place 9/653) Swim 1:01:16(23) Bike 5:41:00(16) Run 3:29:48(12) |
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