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浜から選手804人+リレー部門43人が豪快にスタートする。海は数歩ですぐ深くなり、足をつかったスタートダッシュで好ポジションを得るのが苦手な僕としてはありがたい。しばらくは混雑した中を泳ぐが、左折して浜に平行なコースになると徐々にマイペースをとれるようになった。 海は濁っていて水中から前の選手は確認できず、ヘッドアップをプル6回に1回のペースで行う。徐々に一つの集団ができてきた。若干遅いので抜きたいのだが頭が横に広がっていてなかなか抜け出せない。 ようやく集団から出て、次の目標を定める。ピンクのキャップは女性だろうか。スイムパートでの女性はいいターゲットになるので追いかける。 半分ほどきたところで、一旦浜にあがってチェックポイントを通過する。なぜか波消しの内側へ入ったほうが波が高くなり、上陸に少してこずった。しっかりターゲットを見据えて新たに飛び込む。 復路は一人の男性を追うような形となった。この人を指標としてスピードアップを図りたいのだが、なかなか追い越せずにいつの間にかまた前に居る。かなり拮抗しているようだ。この人のお陰で退屈せずに泳げた。最後のブイを曲がり、上陸する浜へと突き進む。左から彼をかわす意識が強すぎたか方角が逸れ、遠回りになって結局離された。バカだ。こういう失態は最近多い。タイムは分からないが何となく手応えを感じてスイムフィニッシュ。 スイム:48:31(26位) top差 4:56 シャワーのところでウェットを脱ぐ。トラバッグ置き場はまだ閑散としておりスムーズにやり過ごせたが、密集しているので混んでくると大変そうだ。テレビクルーに撮影されながらバイクをラックから下ろしてスタート。今回、色んなところで写真を撮られた気がするのだが、翌日販売していた写真は極めて平凡なショットがあるだけだった。 7:51 a.m. バイクスタート タイムを確認し、まずは及第点以上の出来でスイムを終えたことを知る。 バイクはとにかくゆるゆるで入ることを心がけた。この暑さの中、138km(AlpsLab調べ。公称145km)で獲得標高1700mの道程を、どのくらいの頑張り度で走れば余力を残してクリアできるかは、日頃のお袖練で大体感覚が掴めている自信があった。向かい風が吹く川沿いの道では、28km/hほどしか出てないのはいくらなんでもゆるすぎないか? と思ったけどスピードアップはしなかった。ある意味真剣味に欠けていた気もするが、そのお気楽さがちょうどいいのだと考えた。 10kmほどでNo.2(井出選手)に、15kmほどでNo.1(藤原選手)にパスされる。いずれも招待選手で優勝候補だ。スイムスタート前「藤原さんって実は僕よりスイム遅いんだよ」などとシンさんに大口叩いていたので、とりあえずその通りでよかった。 しばらくは気分よく走っていたが、この程度のアップダウンコースだと、ドドッと大量のドラヲ集団に飲み込まれるのは経験則から必至と思われた。ここも宮古や佐渡と同様の展開になるのか、などと想像して急に気が滅入った。実際はそのようなシーンは概ね見られなかった(いても集団にあまり威力がない)。どういう対策をとっていたのだろうか、少し不思議な気もする。 徐々に抜かされる人数が増えてきた。800番台が不思議と多い気がしたが、途中で閃いた。そうか、彼らはリレーの部なのだ。それ以降、800番に抜かされても気にならなくなった。単なるおめでたい勘違いだったことを後になって知る。 いつしか上りが始まり、スローダウンしてまず気付いたのが、シュルシュルと音を立てる後輪のZIPPだった。スタート前に直したはずのリアブレーキシューがやはり当たっている。当初は、坂の場面に来ると不具合が発生すると思っていたが、そんなわけ無いじゃん、低速では雑音が減って音が聞こえやすくなっていただけと判った。何度かブレーキアーチを手で摘んで直すのだが、振動や変速ショックですぐに元の位置に戻ってしまう。これはやっかいなことになった。 どうにも気になって仕方ないので、腹を決めて路肩に止まりじっくり再調整を試みる(45km地点)。ワイヤーのアウターケーブルの突っ張りによってアーチが押し付けられてしまうようだ。クリックレリーズはすでに開放状態にあり、ケーブル調整ボルトでアーチを限界まで開いてみたが効果が無い。せめて5mmアーレンキーがあればワイヤーを抜いてしまうのだが(その代わりブレーキも効かないけど)。 メカニックのいるエイドまで我慢しようということで、諦めて走りつづける。 擦ってはいるが、さほどブレーキにはなってない気もする。気になって集中できないメンタル面のブレーキのほうが遙かに問題だろう。諦めて割り切れ、と言い聞かせた。 皆生のバイクコースはとにかく複雑だ。どこをどう走っているのか、その複雑な地図を頭に叩き込むことはハナから断念したが、ポイントだけでももう少し覚えてくれば良かったとちょっと後悔。 長い上りが続いている。とある選手に「これが今日のバイクコースで一番長い上りですか?」と訊いてみると、そうだという。少し気が楽になったが、Suuntoのここまでの獲得標高はまだ500mにも届いてない。つまり上りはまだまだ残っている。にもかかわらず、ちょっと疲れてきた。あれほどゆるゆるで走ってきて、平均速度も笑ってしまうくらい遅く、君津の森周回練2周目相当ですでにタレ始めている。一体どういうわけだ。 上りの多くは39-23の最軽ギアで走った。はっきり言ってギアが足りない。意外と傾斜がきつい。リア25Tにすべきだった。ダンシングの頻度が増える。ZIPPがよじれてブレーキシューと奏でる音が強くなった。整備不良車を周りの選手に悟られるのが正直恥ずかしい。 上りがあれば下りがある。見通しがよく、噂通り皆生の下りは飛ばせた。60km/h前後で長く下ることが多い。先行する選手から聖水プレイを受けないよう離れて下る。だがふと、嫌なイメージを思いついてしまった。長い高速下りでシューを当て続けるのは、熱に弱いZIPPにとって禁断の行為。つまりZIPPがチンチンになり、リム変形を生じるだけでなくVittoriaが耐え切れずにバーストする恐れがある。60km/hでそんな場面を想像したら思いっきり下れなくなってしまった。恐ろしくなって水を後輪にむけて吹きかけたりした。意味あったかな。 スタート時に携行した補給類は、MDたっぷりサンガリアジュースボトルが1本と、ジャージのポケットにエネルギーゼリーが一つのみ。最初のエイドで水のボトルを受け取り、空いたケージに突っ込む。軽装備というのが毎度の僕のコンセプトで、ジャパンの時と同様である。 ただ、ミネラル類を持ってくるのをすっかり忘れていた。この暑さだから塩分等は絶対に必要なのだ。エイドに梅干があるが、あっと言う間に通り過ぎるエイド区間で、ボトル2個の交換に加え梅干しまで受け取るのは難しい。 エネルギータンクであるMDジュースボトルは100km地点でも受け取る予定なので、それまでに飲み干す計算だ。当初は余るかも、と思っていたが、チープな味のサンガリアジュースとMDのコラボ?は意外と飲みやすく、予定より前に飲み干してしまう。次のスペシャルエイドが待ち遠しくなってきたほどだ。 エイドでは水とコーラを貰う。いくらでも薄められてしまう水同然のスポドリは役に立たないと考える。なぜそんなことするかなぁ。ケチらないで欲しいものだ。コーラを水で割ることはさすがにない・・・だろう。 コースマップが全く頭に入ってない代わりに、ブレーキ問題が頭を埋め尽くしており、バイクパートは記憶に残る出来事がほとんど無い。無事100km地点でスペシャルを受け取り、MDたっぷりジュースボトルは次のエイドまでに飲み干していた。どんどん飲み、どんどん身体にかけないと持続不可能というくらい、暑く、またエネルギー消耗が激しい。はっきり言ってエイドでの補給は身体の要求量に追いつかない状態だが、その最大要因は受け取るボトルの中身が1/3程度しか入ってないためだ。なぜそんなことするかなぁ。ケチらないで欲しいものだ。ボトルはコップと違って中身が無駄にはならないし、仮に多くても、次のエイドをスルーするだけのことであり、エイドでの作業量も減って効率的である。中身が少ないと、折角ボトルスタイルで供給する価値がない(一息で飲めてしまう量ならコップのほうがいい)。 保険のためと思っていたポケットのゼリーにも手を出す。 いくつもの小さなアップダウンを繰り返す洗濯板のようなコースを走っていたときに、左足太腿がピキーンと攣る。力が入って脚全体に伝播しそうな強烈な奴だ。タイミング悪くキツい上りに差し掛かっており、降りるほか手がない、ってオイオイまじかよみっともねー。小村君のことを笑えない事態に陥ってしまった。しかし、まだ112kmだというのに攣るとは何事か? ユルユルで走ってきて、20km毎に身体を冷やし補給を取り続けた。これは普段の練習よりも遥かに身体を労わった条件のはずだ。気温32℃前後はクソがつくほど暑くはないし、お袖練で経験済みの温度だが、どういうわけか大ダメージとなっている・・・。納得の行かないこの腑甲斐なさに何度も戦意を喪失しかける。やはりこのクソ忌々しいブレーキキャリパーのせいか。そう思いたいところだが、正直なところこれが実際に足かせになっている実感はほぼないし、たとえそうでも何かが救われるわけではない。 応援バスツアーを利用しているカントクはどこかで見ていてくれたようだが全く気がつかなかった。今頃はすでにバイクゴール地点に戻り、僕が帰るのを待ち構えているはずだ。そのバスは12時半頃にランコースへ出発予定なのだが、僕が戻るのもその頃、と告げてあった。だが残りの距離を考えると、アベレージ30として・・・完全に遅刻だな、などと考える。 138km×↑1700m×33℃の条件は、欲を出さなければ平均30km/hは堅い、と考えていた(獲得標高はAlpsLabより。Suuntoによれば1550m)。 予想バイクフィニッシュタイムは、ゴールに近づくにつれずるずると下方修正されていくことになる。 コースのヤマ場はすでに過ぎた、以降は平地に近いからアベレージは現状よりも高くなって然るべきのはずだが、現実は、終盤の川沿いの平坦路を27km/hで走っていた。とことん、落ちるところまで落ちたな、って感じ。もう両足ともほとんど力は残っておらず、攣らないように気をつけて走るのみだった。これからフルマラソンが控えているなんて、ほとんど冗談だなと他人事のように考えていた。 ようやく皆生海岸へと戻ってくる。バイクシューズを走りながら脱ぐための、降車地点の事前確認を怠っていた。とは言えその気になれば出来たはず。結局はめんどくさいというキモチが勝ってしまう。 バイクをラックにかけた後すぐにバイクシューズを脱いで、トラバッグ置き場までは裸足で走った。 しゃがみこんで靴下とランシューズをはく。手にはグリコのワンセコンドBCAAゼリーを二つ。かすみがうらマラソン参加賞の帽子をかぶってランスタート。誰からともなく声援を受ける。まだ希望は捨ててない。この後の新たな展開が、良い方へ転ぶことだけをアテにしているのだから、僕はかなり楽観的なのかもしれない。 バイク:4:58:37(61位)前後のトランジット含む top差 45:26 HRave/max=137/157bpm 実質平均速度 約28km/h 獲得標高1550m 平均気温33℃ 0:47 p.m. ランスタート 全体の45位でランスタート。 まずはBCAAを一つ飲む。昨日エキスポで仕入れたグリコの新商品だ。ゼリーでの飲みやすさを期待したのだが、満を持して世に出てきた割にとても不味い。これじゃ粉末を水で流し込むのと変わらない、というか味としてはその方が好印象だ。 すぐに、大事なものを忘れたことに気づく。バイクボトルだ。バイクラックに長居は無用、との意識ですっかり忘れていた。皆生のエイド間隔は所により佐渡以上に長いため、ボトル携行は必須と考えていたのだが。 同時期にスタートした選手の平均的スピードはキロ4分40あたりか。僕はキロ5分15くらいで、明らかにノロかった。ロングのフルマラソンは調子が出るまでしばらくかかるから無理に上げない、と決めていたのでこれでいいのだが、それにしても周囲と差がありすぎる。当初の目標は、3時間50分くらいを理想とし、4時間切りが及第点、まあ4時間10分くらいではゴールしたいなと考えていた。 大型店が立ち並ぶ賑やかで交通量の多い通りを走る。皆生のローカルルールは、道交法に従い信号厳守。つまり、走行が認められる歩道のみのランコースということになる。お世辞にも走りやすいとは言い難く、狭い道幅、頻繁な段差とジグザグ走行、絶えない凹凸、どぶ板とその穴、視覚障害者用ブロック、それらがハードルを高くする。都内での練習でも、遠慮願いたい道だ。30年の歴史があっても、歩道が優先的に整備されている様子は全く窺えない。 今回、レース中赤信号に何回遭遇するか数えるつもりだったのだが、4kmほど過ぎてすでに10を数え、なんだかバカバカしくなってやめた。両手両足では数え切れない量になりそうだ。 信号停止はSuuntoログの速度グラフからある程度推測可能なのだが、今回謎のメモリフローを起こしてラン途中以降のデータがすべて残ってない。 あれほど気にしていた鼠径部の痛みは、見事に消えている。実はこういう不思議な現象は本番でよくあり、期待していたことでもあった。あまり嬉しくないのは、脚が終わっているという問題のほうがはるかに大きいからだろう。 この大会は距離表示が全く無い? と訝しく思っていたころに5km看板を発見。通過はほぼ30分。随分経った気がしていたがまだそんなもんか。キロ6ぎりぎりで先が思いやられる。実際の走行スピードから見ると、エイドでの休憩や信号停止の影響がかなり大きいようだ。 エイドでは大量の冷水を頭からかけ、スポンジを受け取ってひとまず肩にひっかけ、氷を貰って後ろのポケットに補充し、コーラを飲みオレンジや梅干をとった。必要な作業が一杯あるので、順序だてて効率よくこなす必要があるのだが、エイドの小中学生達はキャアキャア言って集中砲火的にサービスしてくるので、両手が塞がって途方にくれ、何をしたいのか判らなくなってウロウロする。そんな感じで受けとった氷のやり場に困り、スパッツの中に投入するというアイデアを思いついた。太腿付け根の、ちょうど鼠径部痛のあたりに氷が留まり、いい感じで筋肉を冷やしてくれる。下品ですみません。これは効いたね。やっぱり鼠径部痛は多少感じていたのかもしれない。 あまり考えもなく持ってきたかすみがうらマラソンの帽子は、形がしっかりしているので被りやすい(帽子は頻繁に脱ぐので重要なこと)という利点はあるものの、夏用ではなく厚手で水を吸って重くなり、頭の保温効果が高くてイマイチだった。メッシュの帽子かサンバイザーにするか、この辺りはもうすこし考えないといけない。 10kmまでの5kmも30分程度だが、粘って走っていたら、少し調子が出てきたようだ。12km前後は、非常に調子が良かった。二つ目のBCAAゼリーも効いてきたのかもしれない。この暑さははっきり言って何ひとつ脅威にはならないと感じた。繰り返し自問してみたが、決して大げさではない。速く走るのは難しいけど、今のペース(キロ5分10前後)を守るのになんら不安材料は無いと思えた。 だが、その調子よさはホントに一瞬だけだった。15kmまでの5kmは27分48秒と最速だったが、すでに苦しく看板を過ぎったことを覚えている。 後で思えばその原因の一つはおそらくエイド間の長さにある。10km以降のエイド間が急に長くなった。資料を読み返すと該当箇所は1.7kmしかなく記憶とは大きく異なるのだが、それは資料が間違っていると自信を持って言いたい。あまりに長いので、エイドに到着したところで「長すぎだよ」と思わず不満を漏らした。暑くなることが判っているレースで、体力勝負ではなく暑さの我慢比べを試されるのは腑に落ちないと思った。期待した私設エイドはほとんどない。そして、続くエイドも遥か先であることはまだ知らない。 また、このあたりから道は最悪になる。横をひっきりなしにクルマが高速で通り過ぎる産業道路で、人一人すれ違える程度の、狭くてガタガタの路面、しかもクランク状に迂回する箇所がいくつかあってストレスがたまった。普段はこんな歩道は誰一人利用してないだろう。 コンビニの看板を見つけ、これはきっと私設エイドがあるだろうと期待して来てみたらアテが外れた。ちくしょーサービスしてくれよー、まだエイド間の中間地点だ。トップの谷選手とすれ違う。 ふと時計を見ると、午後2時台である。まだまだ昼の暑いさかりだ。どんなにかかったって、夕方5時になっても走ってるってことはないだろう。つまり、10時間切りは余裕だろう、などとおぼろげに思った。 JR境線を越える陸橋を走る。ちょうど一昨日乗った空港駅を眼下に見おろす(見てないけど)。 20km、この辺りから急に脚が売り切れてきた。早すぎる。 水木しげるロードなど、境港市の観光地に近づいてきているのだろうか、少し賑やかな雰囲気になってきた。折り返しが近づいていると思うと嬉しくなる。 折り返しポイントのエイドでスペシャルを受け取り(またグリコのBCAA2個)、お尻に氷を詰め込んで復路へと入る。終わっているこの脚の復活を願い、早速BCAAを一つ注入。追い風に変わり、しばらくは恩恵を感じながら走れた。やがて正面にはシンさんの姿が、そしてさほど間を空けずにA吉さんとすれ違う。あまり差がついてないが、追い越されるなどとはこの時点では想像してなかった。単調で殺風景な直線路でDAiさんとすれ違った。珍しく、僕が声をかけるまで気がつかずに走っていた。やや疲労の色が見える。僕も人のことを言えないだろうが。 次のエイドまでが長い(資料によれば4.2km)と判っているエイドで念入りに補充する。氷で満たした背中の3つのポケットをゆっさゆっさと揺らしながら走る。JR超えの橋を何とか歩かずに上った。体力も気力も風前の灯で、絶望感が漂っていた。 その先にある私設エイドに立ち寄らなかったのが後々後悔することになる。チーズクリームのようなアイスのようなものが置いてあったのだが、手が込んでいたので貰うのを躊躇ったのだ。しかしこの私設エイドは実に絶妙な位置に、つまり必然性を持って存在していたのだ。 このあと産業道路の歩道へと入り、ひっきりなしに往路の選手とすれ違ってストレスが溜まる。風光明媚な土地柄にあって、なぜこんな劣悪な環境の道をわざわざコースにしたのか。ポケットの氷はすっかり融けて消え、スポンジは干からびて、脱水症状から完全に熱中症へと急激に陥っていく。目眩からふらふらして、ハンガーノックも併発してきた。 そしてとうとう止まってしまった。 終わったと思った。一歩も歩きたくない。体より頭が運動を拒否している。だがせめて次のエイドまではなんとしても辿り着かないと、今のこの状況は何一つ改善しない。そう言い聞かせて歩く。そのスピードがこれまた遅い。多分3km/hも出てないだろう。 15分くらい歩いただろうか。 ようやくオアシスに辿りついて、いままで摂らなかったおにぎりやパンも貪り食った。そうか、水分だけでなくエネルギー面でも足りてなかったのかもしれない。 少し走れるようになってきた。とぼとぼとキロ6分半くらいで走り、少しするとまた歩く。 背後から威勢よく声をかけられた。A吉さんが快調に追い越していく。となるとシンさんもやがて来るだろう、との予想通り、軽快に追い越していく。「ナイスラン!アンドナイスウォーク自分」と考えていた冗談を言う。同様に故障でレース直前までほとんど走ってなかったというシンさん、走りこみ不足という点では僕よりも深刻なはずだが、なぜそんなに走る力が残っているんだろう。 だいぶ追い越されることにも慣れてきたが、ふと、前後に誰も見えないくらい閑散とした状態になる。陽が傾いてきて気温が下がってきたお陰だろう、ピーク時よりも氷を必要としなくなり、少しずつ走れる距離も長くなってきた。 35kmを越えたころは既に脚がモーレツな筋肉痛。だが何とか走り続けることができた。もしかするとこの中に鼠径部痛も混じっているのかもしれないが、もはや何がなんだか判らない。 意外とキロ5分半くらいまで上げることができた。となると途中歩いたのは地脚不足のためとは単純に言い切れないような気がした。 「この後はゴールまでエイドはありません」とご丁寧に記されたエイドへと着いた。知ってはいたが、「いったいどういうつもりでゴールまでエイドを設置しないの? いぢわるなの? 長すぎでしょ?」と一人心の中でつぶやく。じっくり補給を摂った。この先歩かずに走れそうだ。 最後の陸橋を越え、長かった歩道環境を離れて、初めて走りやすいランニング専用道に入る。路面状況を気にせず走れることのありがたみを痛感した。あと1kmくらいのところでなぜかエイドのテントが見えた。しかも、「なにか欲しいものありますか」と意味深なことを問われる。一体どういうつもり? まるで、「先刻承知の通り、もうエイドは無いのです。でも、特別にあなたのような人のために用意しました。無いと思って通過することも可能ですが、あなたは何か欲しいですか?」と、池から現れた神様にでも問われたような気がした。だが、何を試されようとメンツもへったくれもない僕は「水とコーラ」と即答した。 陸上競技場へと入った。ああなんて走りやすい道なんだろう。意味はないが全力で飛ばした。キロ4分台まで上げられたかもしれない。後ろから追い上げてくる選手が居たので先に行かせ、一日応援してくれたカントクと一緒にゴールテープを切った。 やっと終わった。その思いだけで、他にはなにも考えられなかった。 ラン:4:44:31(150位) キロペース6分45秒 8.90km/h HR不明。 総合タイム 10:31:39(92位/804人 完走652人 完走率81.1%) 年代別25位 去年の珠洲と同様、程なくしてDAiさんがゴール。うかうかしてたら抜かされるぞ。 トラック内の芝生でゴロゴロしながらみんなと語り合えるのは珠洲とちょっと似ていた。 もしかすると車椅子を頼むことになるかもしれないと思っていたが、意外と歩くことはできた。まだまだ追い込みが足りてなかったとでも? シャトルバスでスタート地点に戻り、片づけしてホテルへ帰る。今日帰るというDAiさんをジワジワ説得して引き止めることに成功。夜は近くのイタリアンで打ち上げた。米子の飲食店は、なかなか個性的でいいよ。 7月18日(レース翌日) とっとと帰る、というDAiさんを再びひつこく説得し、せめてリザルトと完走賞だけでも貰っていこう、と閉会式会場のコンベンションセンターへ。表彰式、アワードパーティへと続く。食べきれない程の食事が用意されたが、まあ例によってジャンキーなものが多く、地元ならではの料理というものはなかった。ああそうだ、どら焼きが名物の一つのようだ。それじゃあ水木しげるというよりドラえもんじゃないか。昨日のゴール地点もどらドラパーク(どら焼きドラマチックパークの略とは誰が判るであろう)と言ってたっけ。 ま、普通のどら焼きと変わらないんだけどね。 夏休み突入の3連休に当たるためか、レース翌日に帰る格安航空チケットは買えなかったため、DAiさんと別れた午後はカントクと米子観光。はて、どこ行こうかと悩んでいたら、駅前に「花回廊シャトルバス」の存在を知り、乗りこんだ。30分ほども走り、大山の麓の森の中にそれはあった。植物公園としては全国屈指の広さということで、リハビリを兼ねてくまなく歩いた。接近している巨大台風の影響で時折小雨も降ってきて気温が下がったので可能だったとも言える。この日がレースだったらまた結果も変わっていただろうか、などと考えた。なかなか見応えある施設だったが、リピータ獲得は難しそうだなあ。 火曜日早朝、台風を微妙にかわしつつ、飛行機で羽田へ帰った。 * * * * *
日本のトライアスロン発祥、つまり日本一長寿のレース、皆生。 長年続いてきたのには訳があるのだろう、と期待していたのだが、結局このコースの魅力は判らずじまいだった。 今回の腑甲斐なさから、リベンジしてみたい気持ちはあるが、正直なところそれ以外に心動かされる要素はない。純粋に、同時期の宮島パワートライアスロンと比べてみれば判りやすい。こちらは参加する意義に満ちている。 負け惜しみにしか聞こえないと思うが、タブーを書いてみたい。 スイムは、特にそれらしい原因もなく海が濁っていた。東京湾でもないのに、前の選手も見えないのはちょっと閉口だ。この辺りにはもっと綺麗な海がいくらでもあるのではないか? バイクは、大山付近の雄大な眺めは素晴らしく、なかなか醍醐味あるコースではあるが、とにかくその複雑さから、自分がどこをどう走っているのかさっぱり判らないのは、攻めているというよりただ指示通り走らされているだけという印象に陥りがちだ。 まあでも悪くはないと思う。コースを熟知していないのは自分の責任でもある。 問題はラン。こればかりはさっぱり判らん。なぜこんな最悪なコースを選んだのか。 大会サイドとしてはこのランコースをどう見ているのだろう。信号ストップというローカルルールはいずれ改善すべきと思っているのか。それとも、人生いろいろ、信号いろいろ、ありのままの条件や運をご堪能ください、ってことなのか? まあそれでも魅力ある街や景色なら判らないでもないが、よりによってなぜ、あの殺伐とした道なのか。 高尚すぎてついていけない。 RESULT
Total 10:31:39 (Place 92/804) Swim 48:31 (26) Bike 4:58:37 (61) Run 4:44:31 (150) |
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