第19回珠洲トライアスロン参戦日誌
2008/8/24
タイプA (S2.5+B100.2+R23.3)

今年で19回目を迎える長寿大会の珠洲は、以前一度だけ参加している。遡ること14年前、職場の友人と交代で運転しながら能登半島先端まで苦労してクルマを走らせた。能登は思いのほかデカいことを痛感した。帰路は幽霊国道と噂される山道をビクビクしながら走り、白骨温泉で一泊した。若かりし頃の想い出であり、再びあの苦労をする気にはどうしてもなれなかった。ところが2003年に能登空港ができ陸の孤島ではなくなった。珠洲への関心が再び高まったのはそのせいだ。

8月22日(金)
久しぶりなので観光もかねて金曜日に珠洲入り。羽田から能登まではほとんど水平飛行区間が無いくらい、あっという間に到着する。途中富士山を越え、先週走ったばかりの甲府盆地一帯を再び拝めるとは予想してなかった。日本海を越えた後、能登半島先端の眺めは趣が異なり、一面単色の緑の森で覆われたなだらかな丘陵地帯が未踏の地を思わせる。所々見える幅のゆったりしたクルマの居ない道路は、自転車で走りたくなるような美しいカーブを描いている。
空港に降り立つと、乗客のほぼ全員は「ふるさとタクシー」と呼ばれる相乗りマイクロバスに乗ってさっさと居なくなってしまい、今回同行のマキさん@Ponzと僕の2人がぽつねんと空港に取り残された。我々にはマイクロバスに乗せられない荷物があるので、暫らく待って珠洲行きの急行バスに乗った。下り基調のためか一般道を100km/hくらいで飛ばし、コーナーでタイヤがシュルシュルとグリップ音を発する。珠洲名勝の一つ、見附島に程近い民宿近くのバス停まで、1110円もかかった。どうりで皆「ふるさとタクシー」を利用するわけだ。

この日は穏やかに晴れていたので見附海岸でマキさんと少し練習らしく泳いでみた。正規の海水浴場にも関わらず、平日のためか先客は2,3人程度で閑散としている。水温はヌルくて快適だが、時折まとわり着く海藻には閉口する。僅かに波があり、ノンビリ浮いているうちに船酔いしてしまった。海で酔ったのは意外にもこれが初めてだ。ウゲー気持ちわるー。

夕食は名物の海藻しゃぶしゃぶ。さっとだし汁で湯がいて、色が変わったところで食べる。さっきまとわりついていた奴と何ら変わらない気もするが、生の海藻の味はなかなか良かった。そのお陰か連日お通じが良すぎた。

8月23日(土)
翌日の土曜日に成田のTさんがクルマで登場。長旅お疲れさまです。僕は飛行機アクセスの手軽さを勧めていたのだが、実際はTさんのクルマの存在は不可欠であった。ひとりで参加するなら会場に近い宿を考える必要がありそうだ。
この日は選手登録と車検、選手説明会。天候が不安定なので不安材料の大谷峠視察は諦めた。スイム会場を見に行くと、14年前ここで泳いだ記憶は何一つ思い出せなかった。風が強いせいか波が高くて少し不安になる。中止の判断が下されなければいいが・・・・。

昨日は閑散としていた宿泊地の田崎荘も、土曜日はドッとトライアスリートが集まり満員御礼、と言うか定員オーバー。そのなかで、20wheel'sのDAiさんとお仲間の面々は実に面白くすぐに意気投合してしまった。こうした新たな人々との出会いがトライアスロンならではの魅力の一つだ。
夜から雨が降ってきて、様々な注意報が発せられ、益々ヤバくなってきた。明日は大丈夫か?
16人もの相部屋でどうなることかと不安だったが、8時を回った頃からほとんどの人が寝入ってしまい、最後まで起きていたのは僕らくらい。それでも9時には就寝した。

8月24日(レース当日)
4時起床、かろうじて雨は止んでおり、5時半頃会場へと向かう。マキさんはTさんのクルマで。僕はランコース下見とアップをかねてバイクで向かった。今日の日の出は5時18分ということで、宿を出る頃はまだ少し暗い。スイム会場までは約12km、薄ら寒さが緊張感を助長させるが、強い追い風で走りやすい。この日の風向きはこれで判った。

トランジットエリアでは、どのバイクもお尻を向けてラックにかけられている。誰だよ最初に間違えた人はー、とぶつくさ言っていると、ある人の話では「これが正しい置き方だ」と大声で主張して憚らない人が居て、従わざるを得ない状況だったという。周囲の人に確認してみると全員が「逆だと思う」との認識で一致したので、僕等のポールの間だけ全員元に戻すことにした。ま、どっちがホントにホントの正解かは知らないが、自分にとっては慣れているスタイルが正しいことだけは間違いない。

珠洲ローカルルールとして、バイクシューズをペダルにセットしてスタートしてはいけないことになっており、事前にこれはシルベストのM師匠から聞いていたので混乱は無かったものの、書類に明記されておらず説明会でもうっかり聞き逃した。大事なことだからもっと強調するべきだ。先月買ったばかりの、履くのがちょっと面倒なニューシューズを今回使うことに決める。
心配された海の状況であるが、6時ごろスイムを予定通り行う旨の発表があり、拍手が沸き起こった。空は雲で覆われているが当分雨の降りそうな気配はない。天候には意外と恵まれそうだぞとの期待が出てきた。

水温の高さから脱水症状を憂慮し、シロモトのフルウェットは家に置いてきた。13年前のロングジョンでちょうどいいだろう。 6時40分、入水チェック。波が相変わらず激しく、原町のレースを少し思い起こす。岸に平行に10m/minの速さで潮が流れていると発表された。招待選手や有力選手、それに宮塚選手(オープン参加)含む100名の第1ウェーブが7時に先陣を切って荒波の中を駆け出していく。

この大会は昔からウェーブスタート形式を採用している。5分間隔で100名ずつ4組が分かれてスタートする。バトルはかなり抑えられ、自ずとバイクパートでのドラフティングは解消され、とても気持ちよくレースが出来る。道交法上マーシャルを立てられないなどと言い訳する佐渡は尚のこと倣うべきポイントである。今回はあまり気負わず楽しく行きたいという意図と、マキさんのお付き合いも兼ねて第3ウェーブスタートで申請した。TさんやDAiさん、DAiさんのお仲間で元スイマーというOさんも同一ウェーブで、和やかにスタートを待つ。

7:10 a.m. 第3ウェーブスタート
スイムコースは、沖に向かって300m進み、右に折れて浜に水平に950m泳ぐ。そこを180度折り返して同じ様に戻ってくるL字型コース。潮の流れを考慮してのOさんの勧めで右寄りからスタートを切った。スイムの得意な面々は第1ウェーブに集中している(はず)なので、この第3ウェーブではノーバトルで自然とトップ付近を泳ぐことになった。目下格闘する相手は選手ではなくこの波だ。

右折して暫らく行くと100m毎のブイが見えた。距離表示が隠れて確認できないが時間的に500mのはずだ。その次のブイまで泳ぎ、果たしてそこには500mとあった。タイムを確認してその素晴らしい遅さに愕然とする。その後100m毎にタイムを確認するようになったが、普段プールでは1分半前後のところをどうやら2分半くらい要しており、かけ離れすぎていて数字の計算ができない。波のことばかり気にしていたが、実はもっと脅威なのは潮の流れだった。そういえば1分で10mの潮の流れと言っていた。つまり60分で600m、スピードで0.6km/h遅いということ。普段100mを1分半ペース(=4km/h)とすれば、今日は3.4km/hまで落ちる。そんな計算が泳ぎながら出来ていたわけじゃないが、現状はその程度じゃ済まないことは予想がついた。100mを2分半とすると2.4km/hであり、1.6km/hの減速、つまり1分間で27mも流されている計算だ。選手には居ないと思うが、25m泳ぐのに1分以上かかる人は永遠にゴールできないということを意味する。どんな激坂だろうと休み休み進めばいずれクリアできるが、ここでは休んでいるとどんどん後退していく。すなわち、100m毎にPolarをチェックする余裕などなく、とにかく掻けるだけ掻いて一刻も早くこの場を乗り切るべきだったのだ。

これだけ荒れていても水は透明度が高く、幸いくらげや邪魔な海藻類もなく、15mほどの深さの海底がよく見えた。ただし完全に砂地であり目印となるものはない。頼るものは右手のコースロープと、先ほどからちょうどペースが合っている赤キャップ(=第3ウェーブ)の選手だ。彼は少数派の左ブレスで、僕は左側に居たのでもしかすると彼も僕を目印にしているのかもしれないが、次第に微妙ながら彼のほうが先行し始めた。舵取りをお願いするには恰好の相手だが、波にもまれて簡単に身体の向きが変わってしまう状況なので、律儀に追いかけることが難しい。第1、第2ウェーブの選手を追い越すのに手こずるなどして、結局パラで泳ぐ。実は奇遇にもこの方、スタート前に会話を交わしていたOさんだったのだが(彼は僕を認識していたらしい)まったく気づかなかった。

ほうほうの体で折り返しポイントまで来た。大きな三角ブイをターンするだけでやたらと時間がかかる。ここからは念願の追い潮となり、流れに逆らわない分波も穏やかになる。帰路は両端にコースロープがあり、その間はざっと30mほどもありだだっ広い。しばらくは中間付近を泳いでいたが、かなり蛇行しているのがわかったのでどちらかに沿って泳ぐべきと考えた。よく見ると右左ともロープ沿いに数人確認でき、真ん中を泳いでいる奴などいない。事前にM師匠からコース右側を勧められていたが、見失っていたOさんが左のロープ沿いを泳いでいるのが見えたのでダッシュで追いつくことを試みる。
往路と違ってブイが見る見る後方へ流れていき、飛ぶようなスピードが出ていることを実感できたが、Polarは無常にも予想タイム40分をすでに超えてしまっており、大幅な遅れは必至なので全然うれしくない。やがて最後のコーナーブイを見つけて左へ曲がり、垂直に浜を目指す。常に右へ流されていることをうっかり忘れ、右端のロープに引っかかり方向修正すること数回、やっと厳しいスイムを終えた。どうやらOさんとほぼ同タイムだったらしい。

スイム 0:49:52(30位) スイムラップトップ差 8:21
リザルトによれば、スイムでタイムオーバーもしくはスタートを見合わせた人は29人


8:02 a.m. バイクスタート
トランジションにジャスト2分を要し、バイクスタート。序盤は追い風で快適に進む。スイムで10分もの遅れを作ってしまったので、バイクで飛ばして挽回しよう。そういう脳天パーな戦略は普段は取らないようにしているが、バイクが例年と比べかなり涼しいため、目標タイムを上昇修正すべきだろうと考えた。
早速問題発覚。Polarのスピードメータが反応していない。無線IDが符合しないのか。
群馬CSCでフライトデッキを壊して以来、メーターは全てPolar頼みとなっていた。先週の木賊峠練以来、心拍センサーの発信部が見当たらず今日は心拍計もなし。ことごとく取得データが無い。今日のPolarはただの時計でしかなーい!
スピードが判らないのがどうにもやる気を削がれるが、10kmの標識毎にラップを計り最低限のデータ収集を試みる。

珠洲のバイクコースは、プロフィールマップによると大小3つの峠で成り立っている。最初が50m、2番目100m、最後の大谷峠が250mの標高だ。早速第1の峠道に突入し、乳酸を溜めない走りを心がけて上っていると、ダンシングでガシガシ踏んであっという間に追い越していく選手が居た。後で見たら彼はバイクラップで断トツ1位、総合でも2位だった。
彼を唯一の例外として、バイクでは先行者を一人また一人パスするパターンが続く。やがてコースは日本海の外海側に来て、向かい風となった。集中力を切らさぬよう、黙々とペダルを踏む。割といいペースで走っている気がしていたが、スピードが判らないほうがモチベーション維持に繋がったのかものかもしれない。
二つ目の峠となる木の浦周辺は最初の峠より楽に感じたのは何故だろう。下り追い越し禁止区間はスリリングなコーナリング。その後強烈な向かい風を受けながら勢いよく下る。このあたり一番気持ちいいね。

さらに向かい風の平地を進んでいくと、前方につるんで走っている二人組を見つけた。
追いつくまでじっと観察していると前走者はラインをしきりに変え、後続がそれを追うような形になっている。むむーこれは100%悪質ドラえもんに認定。おまけにその後続が補給食を取り出しキャップ類をそこらにポイポイ捨てているのを見て僕のいつものイケナイスイッチが入った。アスリートの風上にも置けない奴。彼の真横にぴたりとつけて背中を思いっきり叩く。「お前、下がれ!」 何を怒られたのか身に覚えの無いような顔して驚いている。
あーすっきり!と思って二人を抜き去ると、前走者がなにやら叫んでいる。むむ? 余計なことすんじゃねーとお怒り? 二人は共謀者か? 「なんじゃあ!(もんくあんのか)」と振り返ると、「あいつ今までずっとくっついていたっすよ!」 どうやら謝辞を頂いたらしい。こんなことは初めてだ。良かった良かった。この先も、せいぜい頑張りなされ(by福ちゃん)。
後日談:彼はバイクで結局ドラヲに抜かれてしまったようだ。orz

突然左折したと思ったらいきなりの急坂。これが大谷峠か。予想よりも早い登場に半信半疑だが、上っていくうちに僅かに14年前の記憶が蘇り、確信に至る。勾配15%とも18%とも言われたこの大谷峠、その当時、降車して押している奴がかなりいたことを覚えている。たまたま僕の前を走っていた若く逞しい男が、計画通りと言わんばかりに下りて押し始めた。ここで遭遇する選手は第1ウェーブでそこそこ速く走ってきているレベルのはず。大谷峠とはそんなに激坂なのか?
実態は、まあせいぜい最大13%くらいかなといったところで、押しが入るほどでは決してなかった。僕の記憶は14年を経てかなり脚色されていたようだ。2度ほど勾配12%の標識が現れ、たしかにその位だなと思う。となると、この区間は押してもいいよという謂わば公然の日和見ルールゆえの現象なのではないだろうか。ローディ出身のマキさんは、走る前も実際走った後も「降車なんてありえない」との考えで一貫していた。僕より2kgほど重いバイクに乗っているのだが。

大谷峠の頂上で一人のTTバイク前後ZIPP808&エアロメット完全武装の選手に追いついた。このあとは高速下りが待っている。国道合流の一旦降車地点で彼とはほぼ同時スタートを切ったが、ペダルを回さないノーブレーキのこの下りで200mは離された。んー、やはりTTバイクの賜物だろうか。
峠以降再び追い風基調に戻り、おそらく40km/h以上で飛ばしている。彼の平地ペースは僕の理想的ペースより1%速かった。200mの差を保ったままターゲットにして走る。1周目を終えて1時間33分弱。目標以上のラップを刻んでいる(アベレージ32.3km/h)。
2周目に入っても彼の先導は変わらない。60km地点のラップを見て、1周目より1分近く遅いことを知った。じわじわとタレが始まっているようだ。
彼は上りが遅いだろうが、平地は同等かそれ以上。ヘタに追い越すと、抜きつ抜かれつの関係となり無駄足を使う羽目になる。だがここ珠洲のコースは峠と平地がはっきり分かれているので助かった。最初の峠ではそのまま先行させて脚力を判断し、二つ目の峠でパスして一応ちょっと強めに踏んで距離を開けた。
ここで昨年女子トップの招待選手Sさんをパス。1周目より若干向かい風が強くなっている気がする。
しばらく行くと、遠くにゼッケンの色が違う選手が見えてきた。あれは・・・タイプBの選手だろうか。徐々に近づいてみて謎が解けた。その人は「宮塚英也」ゼッケンをつけた宮塚選手だったのだ。あれ〜? てっきり断トツトップのポジションにあると思っていたが、どうやら手を抜いて走っているらしい。思わず「宮塚さんバイク3周目ですか〜?」などと突っ込むと「何言ってんですか2周目ですよ僕だって真剣に走っているんだからそう虐めないでくださいよ〜」とやや本気でしんどそうだった。

2度目の大谷峠はちょっときつかった。少しだけ腹を満たす必要がありそうな気がしてきたので途中のエイドでバナナを貰って上り、高速下り区間に入ったところで食べ始めた。今回ボトルを2本携帯し、1本は水、もう1本はゼリー系飲料2個を水で薄めていた。エイドに立ち寄ったのは4回ほどで、涼しいため素通りが多い。小さなプラスチックのコップで水を渡されるので、かなり減速しないとほとんどこぼしてしまうのだ。そこまで減速して貰うほどの価値はないと判断した。

2周目はタレた。タイムは不正確だが1時間36分以上(31.2km/h)かかり、ややオーバーペース気味で予想通りとは言えちょっと残念。さらに、バイクラックには第1ウェーブの選手のバイクが当然ながらかなり置いてあるのを見て少しへこむ。沿道から「まだまだ行けるよ!」と告げられ、一瞬僕はバイク降車地点がもっと先なのかと勘違いしたのだが、妙に引っかかった。それってつまり、「君が思っているほど絶望的でもないよーでもかなり形勢不利だけどねー」ってことなのか。見ず知らずの選手にそんな声援をくれるなんて、思えばとてもありがたいことなんですけどね。

バイク(2つのトランジットタイム含む)3:12:34(9位) 実質平均速度31.8km/h バイクラップトップ差 18:00


11:14 a.m. ランスタート
ランでは空ボトルを持って走る予定だったが、この涼しさを見て必要ないと判断、帽子もやめた。
向かい風の中をひたすら西へ12km走って折り返すだけのシンプルなランコース、歴史のある大会の割に、未だきちんと距離表示がないのは欠点だと思う(佐渡も同様だ)。それとも曖昧さを残すのが主催者の意図だろうか。基本的に2km毎にしかなく、恐らく位置も不正確で誤差±10m程度では済まない感じ。それと、エイドまであと200mの看板はかなりずれていて信じてはいけない。
最初の2km看板は見過ごした(無かったような気もする)。4km地点で18分、キロ4分半だ。
当初の計画では猛暑を想定してキロ5分と甘い設定だったが、ここまで涼しいとキロ4分半は行けるだろう。というか、3年前のミドル佐渡Bではコースをどんなに短く見積もってもキロ4分15秒で走っていたから、4分半はまだまだ甘い。

なかなか調子が上がらず、エイドでは自分が何を求めているのか判らなかった。要らないのならさっさと走り出せばいいのに、何か忘れ物をしているようで止まってウロウロしてしまった。とりあえずスイカを食ってみたら、やたらと種が入っていて処理に困った。
沿道の応援には逐一応え、前向きに頑張る姿勢を示していたが、このあとの長い道のりを思うと正直気が重く、この及第点ギリギリペースも最後まで維持する自信はまるで無かった。今の自分はポーカーフェイスってことだろうか? タレてきた先行者を二人ほどパスするが、ほぼずっと一人旅が続いた。やはり競る相手が欲しいな。

特にドラマも無く、折り返しのシンボル見附島が近づいてくる。集中力は切れ気味でペースがキロ4分40秒ほどに落ちてきた。14年前に脚が攣り寄りかかってストレッチした覚えのある金網を淡々と過ぎる。街宣車に続いてトップ選手が折り返してきた。そんなに離れていないことに気を良くしたが、あまり間を置かずに次々と後続選手がやってきて、入賞の6位の選手もあっというまに過ぎてしまった。どうやら自分は10位前後のポジションにいることが判った。その後もゴチャっと居るので気を抜くとどんどんポジションが下がりそうだ。
折り返し直前の民宿田崎荘の前へやってきた。女将さんとご主人?がコーナーで誘導係を務めている。鋭気を分けてもらおうと手を振ってアピールしたが宿泊客の一人だとは全然判ってもらえず、これはただの能天気なアホ状態。折り返しのエイドでスポンジの入った桶をゴミ箱と間違えコップを投げ入れてしまった。「ギャーどこ捨ててんのよ!」と高校生に容赦なく叱られ、「ごめん!間違えた」と脳みその誤作動を詫びる。

折り返し後は追い風に変わり、お陰で少し楽になってペースを取り戻した。ここからはすれ違う選手のなかから知り合いを探す楽しみも出てくる。ただ、今回知合った何人かは顔をまだ覚えきれておらず、声をかけられなかった。
楽になったことと入れ替えに、足首を固定する筋肉がオールアウトし、すっかりバタバタ走りに変わった。蹴りだしが効かず、潰れたタイヤを履いたクルマみたいなもので、他が余裕でもスピードが上がらない。この症状はミドル以上で毎回訪れるが、今回は随分と早い時点でやってきた。走り込み不足の結果だ。
薄日が射すようになり、気温がじわじわ上昇中だろうか、追い風と相まって暑さが堪えるようになってきた。スポンジやコップの水を十分摂る為にエイドで立ち止まらなければならない。ロスタイムを最小に抑えるよう工夫する。ここのエイドはどのコップがスポドリなのか水なのかまったく判別不能で、表示もない。選り好みすると脚が止まるので、考えないことにした。種が面倒なスイカも、一かじりで終わる効率が悪いオレンジもパス。結局スポンジとコップの水で十分だったが。

すれ違うTさん、DAiさんには声をかけた。残り5kmを過ぎるとタイプBの選手と合流する。いいペースで抜いていくBの選手が居たが、できるだけ着いてペースアップしようとの発想はまるで無かったのが悔やまれる。ラスト1km付近は意識が飛び気味だったのか、突然呼ばれたので顔を向けるとマキさんだった。しまったポンジャー同士すれ違う記念すべきシーンだったのに、うっかりボケっとしてしまったよ。
復路はキロ4分半をコンスタントに維持し、念願のゴール地点、野球場へと入ってきた。この青い芝生は14年前と変わらない魅力のひとつだ。ラストスパートする脚は無いが、妙に余力を残してゴール。第3ウェーブでなくとも、何番目でゴールしたのか判らず。後のお楽しみですね。

ラン 1:44:59(10位)  ランラップトップ差 7:42
呆れるくらい見事にキロ4分30秒ぴったり。
トータル 5:47:25 8位(出走378人) トップ差 14:47

完走メダル、完走ポロシャツ、完走タオルを貰って(どれもなかなかモノがいい)、ごろんと横になって次にゴールするであろうTさんを待つ。実はOさんがすぐ後にゴールしていたのにお顔が判らず失礼しました。Tさん来るまで1時間正直退屈だったよ〜。次回はもっと早く来て下さい(でも抜かないで)。
ゴール後急にピーカンの空に変わり、アッチッチ状態へ様変わり。とっととゴールして助かった。今頃みんな、「アジー」って言って水浴びまくってんだろなーぶひひ。でもそのほうが珠洲らしくて実は期待していたんだが。
DAiさんのお仲間もゴールして賑やかになり話は尽きない。チームしらさぎのFさんの手を取ってむりくり同伴ゴール。んー記念すべき初珠洲をおっさんで埋めてしまってすんません。少ししてマキさんも笑顔で帰ってきた。お疲れさまです。

夕方からの表彰パーティでリザルトが渡されるらしい。一足速く会場内に入っていたマキさんが「信じられないものをみた」とかでコーフンして出てきた。なぬー! マキさんエイジ別1位!? それって飛び賞の間違いだったりしませんか? などと妙に慎重になるあまり白けさせてしまったかもしれません。大変失礼ぶっこきました。おめでとうございます。

チームジャージをちゃんと着込んで記念撮影。
同じくエイジ別1位となったチームしらさぎのFさん(ナイスキャラ)と

* * * * *

荒天を覚悟したが、ふたを開けてみればベストコンディションに恵まれ、実にラッキーだった。雨男Tさんの評判も少しずつ変わりつつある。今後は、文句なしの晴れ男を目指して日夜精進されることを大いに望む。
そんなわけで今回のレース内容として、スイム以外はハードルが例年より低くなったはず。バイクは難しい補給対策が一切無くなったことが大きい。ランもCrampStopの出番なし。まだまだ珠洲にはやり残したことが多いようだ。こりゃ来年も行くしかねえかあ〜。

RESULT
Total 5:47:25 (Place 8/378)
Swim 49:52(30) Bike 3:12:34 (9) Run 1:44:59 (10)