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第20回日本海オロロンライントライアスロン国際大会参戦誌
2006/8/27 Swim 2000m Bike 200.9km Run 41.8km 8月27日(日) 6:30 a.m. レーススタート 今年の20回大会で最後を迎えることとなったオロロンライントライアスロン。定員を超える参加応募があり、会場は人であふれ、華々しく最後の幕が引けることとなった。27日朝6時30分、増毛(ましけ)港スイム会場にて、快晴の中レースがスタート。スイムは短めの2kmである。先頭に陣取っていたので、ダッシュしてバトルを避ける。珍しく先行逃げ切りパターンだ。 200mほど泳いで、無事イモ洗い状態から回避できたが、このところのスイム不足はいかんともしがたく、案の定早くも息切れして徐々に後続にパスされる。 海は直径15cmほどのくらげがそこら中に浮遊しており、食べ終えたタヌキそばのつゆの中を泳いでいるような気分だ。傍から見た印象とは異なり透明度は低く、緑色に濁っていて選手の存在を水中から確認できない。意外とくらげが悪さをしないことは昨日の試泳で感じていたことだが、モロに顔にべろんとぶつかるとかなりビビる。 コースロープは無いがブイに旗が立っており、遠くからも確認できてなかなか親切だ。二つ、三つのコーナーブイを曲がって後半に入った頃、去年の湘南スイムレースを思い出し、人の後ろに着いてスリップストリームを利用すべきと気づく。ちょうど女性が脇を追い越していったので、足の裏を触らないようにストーカー開始。 自分より速い人に順調に着いていけたが、暫らくして脇から邪魔者が進入してきた。途端に泳ぎが乱れ、女性を見失いそうになって慌ててダッシュする(スイム時最高のHR145記録)。一端は追いついたものの、疲れて散漫になってきた。ふとした拍子に彼女を見失い、気がつくとすっかり間隔をあけられていた。やがて、先ほどの乱入者にも追い越されたので、鞍替えして彼に着いていく。今度こそ見逃すなと思っていたら、ふと気づくとコースからかなり左に逸れて堤防がすぐ左に迫っていた。何でこんなところを泳いでいるんだ? と思ったがすぐそれは最短コースをとったためと気づいた。基本的に時計回りコースにも関わらず、最後のコーナーは左に折れるのだ。そのお陰か、スイムを終えて上がってくると計時はまだ30分に満たない数字を示している。これは幸先のいいスタートが切れたぞ、と少し嬉しくなった。 恐らく2kmより少し短い。タイム 29:58 平均/最大心拍=127/145bpm(案の定結構高い)
トランジットを2分半で終え、4人ほど抜いたらしく、9番手くらいでバイクスタート。ただしその時点では順位を把握していない。もっとずっと遅いと思っていた。 早速ディスクホイールをはいたヨン氏(仮名、ただし日本人)にパスされる。僕が見ていた限り、彼には伴走車が着いていた。クルマからボトルを受け取るなど、見つかったら即失格の重大違反である。数少ない優待選手でありながらこの計画的な犯行、まさに背徳行為だ。選手もサポートも。道民なのにこの大会を大事にしようという気が無いのか。悲しいよ。 やがて、スミス氏に抜かされる。チャンピョンの座を長く保ち続けているゼッケン1番のスチュアート・スミス氏ではなく、別人スミス氏だが、スタート前にMCの紹介として彼の名が挙がっていた。リレーの部のバイク担当である別人スミス氏は、ひょっとするとスミス対決になるかもしれない、と。その割にはそんなに速そうには見えないが、でも少しずつ離され、数キロで視界から消えた。 増毛から留萌(るもい)を抜け、羽幌(はぼろ)へと向かう。風は陸から海へ吹いており、幸い走行に影響はない。だいたい34-5km/hをキープし、70%HRMAX以下(133bpm)を目安とする。アップダウンはゼロに近く、道は広くて走りやすく、クルマはほとんど来ない(交通規制なし)。高速道路をいっぺん走ってみたいと思っていたが、いまはそんな状況に近い。ふと、クルマで高速を200km走る時のことを想像してみる。とたんに気が重くなった。 ![]() 実はここがそのまま帰りのランコースなのだ。マジですか! ノンビリ走ろう!をコンセプトとしていたためか、羽幌あたりでまとめて追い越された。だが、これでいいのだ! 最後まで楽々で走ろう。200km全体でのアベレージが33km/hあたりになればめでたいと思っていたので、現時点でこれ以上のペースアップは無意味だ。 「オロロンの女王」と呼ばれている村上純子選手に、とある上り坂で抜かされた。 物凄いスローなペダリング。かなり重いギアを踏んでいるようだ。男顔負けのごついふくらはぎが異彩を放っている。これで踏みつけられたらひとたまりもありましぇーん。さすがは「女王」。意味が違う。 彼女を前方300mほどに見据えながら、無意識にマークしていた。そのくらい離れていても常に見通せるほどの直線路が続いているのだ。しばらくして二名に抜かされ、彼らは結託してペースアップし村上選手を吸収。さらに勢力を拡大していくかと思われたが、村上女史はソロ走行を守り通す。彼らはさらに先へ進み、次の選手を吸収し最大5名ほどの集団を形成し、そのうちに視界から消えた。マーシャルは4,5回すれ違ったが、しばらく並走するだけでついぞ警告を発することはなかった。 羽幌を過ぎるとアップダウンは穏やかになった。このあたりから、前半抜かされた選手をポツリポツリとパスするようになる。律儀に先頭交代を続けたのが祟ってタレ始めているイロハ氏(仮名)をパス。ドラフティングが必ずしも幸運をもたらさないことを示している。一度は自分より速いペースだった人を抜き返すということは、明らかに彼らがタレていることを示すものであり、それが3,4人と続くと、やっとエンジンがかかって本調子になってきた自分にとってはささやかな自信へと繋がった。早々にイヤになっていたDHポジションも、むしろ今のほうが問題なく集中して走れている。あらゆることが順調に回り始めた感があった。やがて村上選手を上りでパスする。自らペースを上げてはいない。 手塩(てしお)町を過ぎ、コース最北端に近づいてきた。まさかの別人スミス氏をパス。とんでもなくスローに走っていた。マシントラブルかと思わせるほどだ。たぶん、長い距離に飽き飽きして集中力を欠いていた瞬間だったんだろう。 沿道から10位と言われた。バイク序盤での順位に、いつの間にか復帰していた。思いのほかバイクでの強力な追い上げ者が居なかった。そして、楽々イーブンペース厳守戦法が効力を発揮していることを実感した。ドラパックの一人だったニクム氏(仮名)を慎重にパス。 海沿いのひたすらまっすぐな道で、8位の選手を捉える。彼は頻繁に腰のストレッチングをして走っており消耗の高さが窺えるが、スピードは落ちないので無理に追い越さず、彼のスタイルに合わせて走る。3分毎にギアをトップにチェンジしてゆっくりダンシングする。速度を落とさずに腰を揉みほぐすのだ。 右手には巨大な風車がキッチリ一直線に並んでいて壮観な眺めだ。いったい何本立っているんだろう、端から数え始めてみたが、途中から遥か先になって数えられない。そこで、10本まで数えて、その目印の風車まで来たら次の10本を数えることにした。 なかなかその10本目が来ない! 長いよー。 全部で28本でした。 この時、実は左手前方に利尻富士が拝めたらしいのだが、風車に見とれていて完璧に見落とした。空気が澄んでいないとなかなか見られないらしく、おそらくこの先も見ることはあるまい。 その後ポジションを8位に上げた。やがて500m先に7位の選手をロックオンする。すでに150kmは走っており、選手間には大きな開きがあるはずだが、タイミングよく次の目標が見つかるので集中して走ることができた。 幌延(ほろのべ)の最北端ポイントを折り返し、ランスタートの遠別(えんべつ)に向けて進路を変える。すでに6位にあがり、5位の選手を前方に捉えていたころ、ひどい向かい風区間となった。せいぜい28km/h位しか出ない。先行者も同じペースなので慌てることはないが、一つ問題が生じてきた。右ひざがひどく痛くなってきたのだ。20km手前くらいから感じていたが、この向かい風で切実な問題に変わった。超アンクリング走法で痛みを回避する。それにしても、自転車で膝を痛めるとは。 そんな折、結構な勢いでニクム氏が再び追い越していく。なぬー! たしか随分前にかなりヘロったところを抜かしたはずなのだが。復活したのか? 残り30km、バイクスプリットは6時間を切りたいとおぼろげに考えていたが、働かない頭で懸命に計算したところ、その達成がほぼ困難であることが判ってきた。膝が痛くて踏ん張れないが、つまらない目標のために力むことがないので結果的には良かったかもしれない。6時間を52秒過ぎてバイクフィニッシュ。 公式距離200.9kmを越える実測201.8km、トランジット除く実質タイム5:58:35 (平均速度=33.77km/h) 平均/最大心拍=128/150bpm 獲得標高 785m 1:02 p.m. ランスタート エイドで頭から水を被り、ランに出る。先週物練で大浜さんと126kmを走った後よりも断然余裕があると感じた。走り出しのぎこちなさも無い。 今回、かなり暑くなるとの予報から、急遽ラン途上のエイドステーションについて詳しく見ておいた。本エイドと簡易エイド合計で14箇所(区間平均2.78km)だが、よく見るとエイド間隔はばらつきが大きく、最も長いところで3.9kmもエイドがない。もし酷暑のレースだったらかなりヤバイ。そこで、昨年の佐渡で思いついたペットボトル携行案を取り入れる。なにより軽いし、不要となれば手放してもいい。口が狭くて補充に時間がかかるという欠点があるが、ロングならばさほど気にならないだろう。3.9kmの手前のエイド(2箇所ある)をしっかり覚えておいた。 ![]() トウモロコシ畑が両側にどこまでも広がり、真っ直ぐ続く道をヒタヒタと走る。トランジットで追いついたニクム氏が前方彼方に見えていたが、程なくして視界から消えた。もう前にも後ろにも、応援すらも誰一人見えない。午後1時といえば最も気温が上がる頃。実は、「暑い中を頑張ってまっせ!」と自己陶酔できる色んな条件が揃った、ちょうどいい気温。この時点で体感的には暑くなかったのである。 5km地点でようやく距離表示板が現れた。23分42秒で、トイレタイム40秒を差し引くとキロ4分36秒であまりに速すぎる。距離表示位置がやや手前にずれている気もする。その次の5kmはペースダウンしたつもりもないのに25分58秒だったので辻褄も合う。まあいずれにせよ予想以上の良いタイムだ。 エイド付近で、選手関係者と思しき女性に「がんばれ!暑いのはみんなおなじ!」と叱咤激励される。面白い表現だね。そんなに暑そうに見える? スポンジは二つ持って走るし、エイドでは頭から水を浴びてはいるが、やはり暑さは苦ではない。スピードは遅いけど今のところ懸念材料なし。バイクであれほど痛かった膝も、ランでは関係ないみたいだ。 次のエイドでも、またその次でも「暑いのはみんなおなじ!」と言われ、やっと気づく。「あれ? さっきも居たよね」「そうだよ! クルマで追いかけてるんだもん」 僕の前後には相変わらず見渡す限り誰も居ないのだが、一体誰が目当てなのだ? 僕にもファンがついたということかあ。青いハンケチでも持ってりゃ良かったね(時事限定ネタ)。 8km付近からアップダウンが始まる。上りもそうだが、ロングでは下りが脚に来るのである。この繰り返しは35km地点まで続き、平らなところはほとんど無いのであった。 右足の裏の広い面に巨大なマメができつつあることを感じた。この原因は、ひたすら左下がりに傾いた路面にある。このころになるとなぜか交通量が増えてきて、車道へはほとんど踏み入れない状況になっていた。それでも、傾きのない路面を求め少しでも車道を走りたい。北海道基準の速度でぶっ飛ばしていくクルマに気遣いながら走るのは精神的にしんどかった。 20kmまでの平均キロペースは5分8秒と、極めて上出来な走りだったが、ランコース中最大の標高差をクリアした後の20kmを境に見る見る落ちる。どうやら脚への燃料供給が追いつかなくなったようだ。そしてランで初めて後続に追い越される。村上選手だ。ヘビーギアを踏み倒すペダリングとは正反対にピッチ走法だった。彼女に抜かれるのは致し方ないとは思っていたが、ランスタート時のスピードがあれば追えなくはなかった。急速にスローダウンしている自分を思い知る。 ラン中間地点にはスペシャルエイドがある。レーススタート前に預けてあったメダリスト入りペットボトルとカーボショッツ類を受け取る。ホットはちみつかこれは!スペシャルマズイ。このころから少しずつ暑さが堪えるようになってきた。イメージじゃなくてマジで暑くなってきたのだ。全身に水を浴びても効果は300mと持続しない。小さなスポンジはすぐ干っ乾び、身体の芯からモワーッと暑くなってくる。20kmを走る間に身体が太陽熱を吸収してしまったのだろうか。スピードは益々落ち、キロ6分に迫ろうとしている。だが、ここでまた例の女性に励まされた。「みんな疲れているよ!」 今度の一言はなかなか的を得ていると思った。タレているのは自分だけではないから気を落とさずに行け、と。事実、それを証明するかのように、前方に一人の男性を捉える。なんとあのニクム氏だ。その後もまた一人パスし、すんなり5位にまで上がった。時刻は午後3時を過ぎていたが、日差しはまだきつい。ランに入ってずっと追い風なのもまた恨めしい。だれかウチワで煽ってくれないかい!? 遠くに見えてきた看板を、「エイドまであと500m」の看板と早合点し、貴重なペットボトルの水をジャジャーッと使いきってしまった。水分摂取計画が乱れ、やがて脚のエネルギーがすっかり枯渇してきた。上り坂ではほとんど歩くような速度。このままではいけない、とカーボショッツを飲むが胃にもたれてかなり気分が悪くなる。それでもしばらく行ってまた飲む。また胃にもたれる。かなり相性が悪いみたいだ。一人抜かされる。 20-30km間は平均してほぼキロ6分以内だったが、 30kmを過ぎてますます酷い走り。キロ6分を確実にオーバーしている。この付近のエイドはセルフサービスなのか、飲み物は準備されていない。頼んでから水をタンクからチョロチョロ注ぎいれる有様だ。淹れたてをどうぞってことですか? 3つ4つ一気飲みしたいんだけど全然無いんだもんなあ。タッパーウェアの蓋を自らこじ開けて梅干を食べる。そして、ニクム氏に追い越された。バイクのときと同じ、逆転に次ぐ逆転の展開だ。 35kmあたりから低め安定で落ち着いてきた。日が沈みかけてやっと暑さから開放されてきたからだろう。キロ5分50秒くらいまで復活してきたと思う。二人の俊足ランナーに抜かされ、いよいよ後続にどっと抜かされてしまうのか。たしか10位まで入賞だったと記憶しているが、今の時点で9位。残り5kmを持ちこたえられるだろうか。ここまでくると欲が出てきた。できれば入賞したい。 ようやく羽幌市内に入ってきて、アップダウンも無くなり走りやすくなった。サングラスを外し、観衆の声援に丁寧に一礼しながらゴールを目指す。フィニッシュゲートまでの直線はやけに長く感じたが、一番おいしいところでもある。ゴールが近づくにつれ沿道のギャラリー数が増え、MCの気の利いたナレーションで気分も最高に盛り上がってきた。今のこの満足感、充実感を精一杯アピールしながら、両手を挙げてゴールテープを切った。10時間26分1秒。総合9位。 ランタイム3:55:10 平均キロペース5分37秒 平均/最大心拍 140/152bpm(ロングの割にはかなり追い込めた) 獲得標高 335m(IM五島は290m) ランで応援してくれた女性を休憩室で発見。声をかけると、「つぶれそうでつぶれないんだもんなあ」だって。そんなに頼りなさげでしたか。あとでリザルトを見たら、リレーとして出ていた彼女はどうやら僕がスイムでストーキングした相手の可能性が高い。ランでそのお返しというわけか。 羽幌の宿まであいのり号のようなバンがスタンバっていたのでお願いすると、エイジクラスの王者濱野さんが続いて乗り込んできた。オロロンでは毎年2位に甘んじてきたが、今年はスミス氏に先行を許さず見事逃げ切り、最後のレースで花を咲かせた。折角の機会とばかりに話し掛ける。気さくに色々と話してくれた。第一声として、今年のレースは例年になくかなり厳しかったとのことだ。「ランの最後はジョグっちゃいましたよ」だそうで、うーん、僕は全行程ジョグだったけど。随分とタイムも悪かったらしい。ただ、後で知ったことだが濱野さん自身、ここ数日体調が最悪で熱もあったとの事。その割には凄すぎだ。 ![]() 最後の別れを惜しむほとんど全ての選手がゴールのアーチに集まって、この瞬間を感謝の気持ちをこめて大きな拍手とともに見送った。 20年間おつかれさまでした。 RESULT
Total 10:26:01 (Place 9/427) 男子の部8位 Swim 29:58 (13) Bike 6:00:22 (9) Run 3:55:10 (18) 獲得標高1120m 6588kcal 26℃ 平均/最大心拍131/152bpm |
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