エントリー時の申告予想タイムが3時間18分だったから、ほんの3秒早かった。緩やかに落ちていくペース配分は完璧だった。何もかも上手くいったような気がする。最高のレースだった。
順位は男子総合193位で、この場合面白いことにネットタイムが正式タイムとなる点が日本と異なる。
レース後、記録賞をプリントアウトしてくれたり、スポーツドリンクのペットボトルなどを渡されるといったサービスはない。マッサージコーナーはあっても、水一杯飲ませてくれるところはないのかよ! 喉はすっかり乾ききっていて、ふらふらしてきた。
そういえば、自販機なんてものはドイツで一度も見かけない(コンビニもゼロだ)。仕方なく我慢して、とりあえずメッセ会場内をあちこちうろつく。チャンピョンチップを返却して、25ユーロを返してもらう。
周りのドイツ人はというと、走り終えてフラフラの身体になりながらも、みなプハーっとビールを飲んでいる。ビールに関しては、本格的なビールトラックがテント脇にドーンと店を構えていて、いくつもの銘柄の地ビールをきちんとグラスに注いで販売している。その周りは走り終えたランナーがドッとたむろして歓談しつつ飲みまくっているのだ。手書きメニューを見ても何がなんだかサッパリ分からないし、客の注文が次々と入るなかを割って入って注文するのは、かなーりハードルが高い。でも飲みてぇーっ。
生理現象的成り行き上、喉の渇きは限界に達し、んーーもう耐えられましぇーん。これ以上我慢すると、死ぬかもしれましぇーん、背に腹は代えられましぇーん、つうことで、客がふっと引いたときを見計らってカウンターへ決死の突撃開始。ヘタクソな字でサッパリ読めないメニューの上のほうを指差して、「一杯くれよぅ」と懇願する。
ビアスタンドの一つ。これは前日祭の風景。
見かけと違って好意的な兄ちゃんに、ビールの銘柄だけは通じた。1杯2.3ユーロ(330円)と魅力的な価格だけど、小銭を出すのが慣れてないので5ユーロ札を手渡す。そうだ、この値段なら2杯買えるから、いっぺんに頼んじゃおうかなーと思いつつ、何ていえばいいのか思いつかないので我慢。
すると、ジョッキになみなみに注がれたビールと一緒に返されたお金は20セント。
あれ、2.3ユーロのビール頼んで、5ユーロ渡して、おつりが0.2ユーロ・・・。
どうせワカンネーだろと思って、バカにされたか????
と思いつつ、アタマん中の思考回路がグルグルと空回りしつつ、結局20セントを持った右手をゆっくり閉じて、何事もなかったかのようにその場を去る。
つうか、そんなことはどうでもいいから早く飲みてぇー、と思ったのであります。走り終えての放心状態のためか、ダメ男気分に苛まれることもなかったのであります。
階段をベンチにして一人乾杯。グビグビグビ。美味いかどうかは、いわずもがな。
さて、脳みそにも水分が行き渡り、出来かかった微細な脳血栓が取り除かれたためか、明確な判断ができるようになってきた。
そしてはっと気づく。いま手にしているジョッキグラスにデポジットがかかっていたのだ。つまり2.5ユーロってことか。つまり僕は3つの幸運が重なったことを悟る。一つはまず5ユーロ札を出したこと。二つ目は、「2杯くれ」と言えなかったこと、三つ目は、「釣りが足りねえぞ」と言えなかった事である。今日はとことんついているようだ。
1杯でかなり酔っ払ってしまったので、いずれにせよ2杯頼まなくて良かった。店の兄ちゃんからは2.5ユーロ無事戻ってきた。

テントの中では表彰式や抽選会などもしていた。

その後も速報をいろいろ眺めたり(日本人参加者は僕一人だったとここで知る)テント内のショップを散策したり、うろうろしていたら、後になって、走り終えた人が自由に飲めるノンアルコールビールや水、ジュース類を提供しているコーナーを敷地のはずれに発見。
なんだくそー!
よく見たらちゃんとパンフレットにも書いてあった。ドイツ語ですけどね。


Zielverpflegung (ゴール後の補給)

種目
完走者数
total4482
マラソン男子1位 2:20:44(net)
マラソン女子1位 2:38:41(net)
マラソン最終走者 70歳台 5:54:10
マラソン
1134
989
145
3930
ハーフマラソン
2652
1983
669
ウォーキング
144
109
35
キッズ
552

日本を発つ前は、レースで現地人と何かしらの交流が生まれるかもしれないと少しは考えていたが、何にもなかった。いつものマラソンと同じ、行って帰ってくるだけだ。その辺に関しては、語学力の問題というよりも性分だろう。
午後4時頃レース会場をあとにして、すぐ近くのマリエンベルク要塞への散歩道を歩いた。マラソン直後はあちこち痛くて自由に歩けないのが常だが、この日は多少ゆっくりだけどマトモに歩ける。ダメージが少なかった。
マリエンベルク要塞は見事だったけど、その周囲の散歩道もこれまた素晴らしい。
最後にヴュルツブルク市街を通って中央駅まで歩いたが、今はもうすっかり普段の姿に戻った賑やかなこの通りを駆け抜けたのかと思うとちょっと信じられなかった。つくづく貴重な体験をしたなと思う。
帰りは初めてICE(ドイツの超特急)に乗ったら、やたらと混んでた。ま、週末の上り路線だからそれも当然かな。汗臭くってどうもすみません。
来年2006年は、開催日が5月14日だそうで、どういうわけか今年だけ4月開催だったようだ。来年も誰か日本人の参加者が続くといいなあと、期待しておりやす。
おわり。