JCRC第9戦in群馬CSC参戦日誌
2011/10/16
Cクラス102km

年に一度の100km超レースとして人気の高い、秋のアート杯100km。あ、いや、今年からなぜか名前から「アート」が消えている。豪華商品が目玉の一つだったのに、アートスポーツが協賛から降りてしまったみたいだ。ケンカでもしたのかな?
Cクラスは午後スタートではあるが家を出たのは朝7時半。さいたまで小村君を拾って所沢から関越に乗る。Bクラスの小村君は今日のレースで優勝での昇格を宣言。そんな彼のスーパートークに適宜ツッコミながら、順調に10時40分頃群馬CSC着。運よく上の駐車場に停められた。
午前のレースはすでに終わっていて、慈朗さんがZで4位。んー確実に入賞するとはさすがベテラン。

ローラー台は持ってきてないので試走に出る。アップというよりは、ウェット路面や落ち葉などの危険箇所がないかのチェック。それに久しぶりのロードレースに早く慣れておきたかったためだ。この1周は当然ゆっくりのんびり走ったつもりだったが、後で見たら11分40秒ほどと、集団から千切れてヘロヘロ走りになった時と大差ないタイムだった。

都内は30℃にもなり異例の暑さとなったこの日の群馬は正午時点で25℃。当然半袖ジャージ1枚着用でアームカバーもなし。ボトル二つにオレンジジュース1000ccを満たし、片方にはMDをどっさり混ぜた。エネルギー系ジェルを保険のため持参する。
昼の0:30からS→A→Bの順に2分間隔でスタートしていく。周りを見回すと知った顔は皆無。これから3時間も一人っきりでツマランし心細いなあと思いつつスタートを待つ。

0:36 p.m. Cクラススタート

このごろこの群馬CSCコースに対して妙に苦手意識がある。いつ落車に見舞われるかびくびくして仕方がないのだ。知り合いが落車したという話を聞くにつけ、そろそろ僕の番ではないかと運命的なことを考えてしまう。群馬は道幅が狭く、貰い落車ならほぼ不可抗力的なので尚更だ。
群馬CSCは財政難のためか路面修復は手付かずだし、ケアも行き届いてない。湿っているところは苔が生えて滑りやすい。とにかくレース感覚とこのコースに慣れるまで数周はひたすらびくびくしながら我慢の走りとなる。そんな矢先、ヘアピンの後のS字で斜め前の選手がつるーんと綺麗にスリップして派手に落車。まだローリングスタート中だというのに。
大きな口をぱっくり開けた魔物がどこで待ち受けているか、判ったもんじゃない。運よく回避して減速程度のダメージで済んだが後ろの数名は多分切れてレース終了。

3周目序盤の緩い下り右カーブで左端を走っていると、ハンドルを持つ僕の手を掴んでぐい、ぐい、ぐいと押す奴がいる。なななな何さらすんだオマエ。後ろから来て僕の左側へ割って入ろうとしているのだ。だが50km/hは出ている高速コーナー途中、ステアリングを直接押す奴があるか!?殺人未遂で訴えるぞ。急いで前へ出る必要などどこにもなく、アウトコース側は挟まれる状況にない。単なる自己中な行動。Takizawaのこの選手は前後移動が激しく割り込みが巧みで要注意だった。本人は慣れていて得意げのようだが、じつに危険かつ迷惑である。

そんな輩の存在や、氷上のような転倒シーンが脳裏に焼きついたお陰でビビリ走りは数周しても拭えず。気がつくと集団最後尾を走っている。落車のリスク回避のために前々で展開しなければいけないのだが、どうしても周囲の選手が爆弾にしか見えず、横にすうーっと並ばれると及び腰になりがちでペダリングに力が入らない。またなんでもないところで二つ目のがっしゃーん。勘弁してくれ。

そんなわけで、最後尾で半分切れながら走っている場面がほとんど。そんな奴が言えた義理ではないが、集団の速度はマッタリしている。千切れて数m遅れても焦りはない。上りでは力まずに楽に上れる。エンジンのかかりが遅い自分にとってこの展開は好都合のはず。

6分前スタートのSクラスが早くも後方から現れ、追い越していく。ぱらぱらと数名の逃げが行った後、しばらく間を置いてメイン集団が来た。モリモリがいい位置につけている。ポンズ慈朗さんも機敏に追従している。ZとSのダブルエントリーだったから靴下二つ貰っていたのかぁ、と納得(実は人違いで慈朗さんはすでに帰路についていた)。
Sの勢いに釣られて若干スピードが上がったものの、移動審判のコントロールのお陰できちんと切り分けられ、再びペースが落ち着く。

バックストレートではBクラスとほぼ同じ位置ですれ違い、マッタリなのはCだけじゃないようだ。なぜだろう、やや風が強いためだろうか。
気温は20℃くらいに落ちてきて、陽も傾き少し肌寒さを感じるようになってきた。ヘアピン後のS字カーブで逆光の木漏れ日が眩しく、毎回注意を要する。

心身ともに戦闘モードに入れず、前に出る気にもなれず、消極的な走りが淡々と続く。客観的に見てそんなにしんどいわけではないのに、気持ちに余裕がなく、今すぐ止めたいなあという気分。また、温存した走りを続けている割には、疲労を感じ始めていた。40年前の兵器で戦いに挑むような頼りなさだ。果たして使い物になるのか?
バックストレートからは、SクラスとBクラスが入り混じって混乱が起きている様子が伺えた。Bに変化が現れ始めた。
それに対して、変化のないCクラス。マッタリ度はますます高まり、Suuntoログによればこの辺りTE=2のゾーンに落ちている。物練で無理なくローテ練習をしているような条件。20人程度で落ち着いた集団はこの先減りそうにない。
そうは言っても、こんな自分にいったい何が出来よう。無力を感じつつ、ただついていくだけの状態が続く。頭の中はさっきから椎名林檎のカーネーションの寂しげなテーマソングがリフレイン。あー止めたいんだけど止まらない。

そういえばずっと静かなことに気づいた。集団速度が落ち着いているときはあちこちで話し声が聞こえるもの。ところが今日のCクラスは会社面接会場のような殺伐とした静けさに包まれている。それも仕方ないかなと思うのは、僕を含めて同一チームからの複数エントリーがほとんどなく(ナルシマくらいだ)、知らないチームが多くを占め、シンプルな無所属ジャージも結構見られる。中間クラスのCは脚力途上で流動が激しいという事情もあるだろう(僕のようなCクラス仙人は僅かだ)。ほぼ個人対決になっており、ローテもままならないし逃げの画策も行われない。余談だけど今回出走者は70人のエントリー中57人で、2割弱もの人がDNS。人気大会で定員は早く埋まってしまい、参加したくてもできなかった人も居るだろう。まあそれぞれ事情もあるだろうが安易なエントリーが多すぎなんじゃないのか。

さて、そんな傾向が見えてきたのなら、動くべきは自分ではないのか、と思うのだがどうにもやる気が出ず、何をしたらいいかも判らず、踏ん切る勇気がない。
最終ラップまでこのまままとまって進み、ヘボスプリントして適当なところで終わるというシナリオは火を見るより明らか。ノルマ的に前を引くこともしてないから、運よく着ってバツ悪い思いをする前に自制してしまうだろう。つまりいずれにせよこの先ツマラナイ結末しか望めない。一体どうすればいいか。

ここでもしもズンドコアタックして力尽き、仮に大タレして残りをヘロヘロ走ったところで、順位は今のこの集団最後尾と同じ、ということにふと気づいた(ここまで来てDNFはさすがにないだろう)。そう、失う事の恐ろしさなんて実は何もなかったのだ。今ここで後生大事に抱えているものなど二束三文の価値しかないだろう?? だったらとことん出し尽くして悔いなく走り、色々と試してレースを楽しみ、参加料と遠征費の元をきっちり取ろうではないか、という変な結論が頭の中で組みあがった。

ホームストレートを過ぎる。残りあと5周の看板を見て、よっしゃとスイッチを切り替えた。ここからは先々のことや難しいことはもう何も考えず、とにかく行けるだけ行ったらいい、ということに決めた。やけくそ、と言えばその通りかもしれないが、冷静さは失ってないつもりだ。価値観を変えただけだ。自分なりに速く走れ。ただそれだけ。集団は適宜利用するけど、どう立ち振る舞うとか、打算的なことは考えない。
スルスルスルと脚なりにポジションを移動し、初めて先頭に出た。誰だアイツと思われてるかも。ちょっと恥ずかしいけど気にするな。挨拶が遅くなりましたが皆さんよろしくです、っと。そして最初のテクニカル左コーナーを攻めてみる。ここを思いっきりクリアするのは初めてだから、うっかりオーバースピードで突っ込んで自爆という目も当てられないパターンだけは避けねば。慎重さゆえかソロ走りで稼げるはずの区間でアドバンテージなし。
すぐ疲れてきてしまったのは想定内とは言えガッカリだ。上りが始まるところで飛ばすのをやめて小休止。別に逃げ切るつもりじゃないし無理と判っているのでこれでいい。予想通り逆放置されていたが、程なくして吸収される。
しばらく集団内で体力回復させたら、温存はせずに再び前へ。アイツ何がしたいんだと訝しく思われているはずだが、いいんだ、自分でもよく判らんから。

少し期待したのは、そんな行動に出て集団の活性化につながればなということ。真似する奴が出てきて、一緒に逃げ集団が出来れば御の字だがその気配はない。これまで一度も前に出て顔を売ってなかったし仕方ないことだ。
めげずに繰り返す。旧リフト下坂や心臓破りの上りはスルスルと前に出やすい。それを見て、自分だけ余裕があると判断したら臍をかむことは以前学習している。だが正直、周りの限界度が読めない。
ここで行くべきかどうか、とか一切考えずに飛ばすのは気分爽快だ。

バックストレートから先、徐々に飲み込まれる場面で一人が声をかけてきた。「この(集団の)まま最後まで行っちゃいそうですね」 ねぎらいの言葉と受け止めた。スパンコールでびっちり埋め尽くされた奇天烈なフレームに乗る彼は多分今日のレースを引っ張っていた一人だ。重量級でトルクフルなペダリングが特徴。「一緒に逃げませんか」と持ちかける相手として相応しかったかもしれないが、この場合「一緒に死にませんか」と同義語であり、僕の趣味に付き合わせるのは無責任というものだろう。

ラップタイムを見る。遅いと思っていた集団速度だが、自分が前に出ることで集団速度に影響を及ぼす事はなかったばかりか若干落ちつつあった。自分が引っぱれるとでも思っていたのはとんだ思い上がりだったようだ。活性化になど繋がるはずもないのが良く判る。
そんな調子で残り2周、そろそろガーっと全体が上げてきても良さそうなものだ。心臓破りでそれっぽく上げてみたが無反応。いかん、集団の反応を気にするようでは信念が揺らいでいるぞ。

いよいよファイナルラップ。最も盛り上げようとしていたのはギャラリーかもしれない。あと一周だ、ここが我慢だ、などと色んな言葉を投げ掛けられるが、走っているほうは結構冷めているように伺える。
やはり少しスピードが上がったので、よしよしと思って前々で展開する。あっという間に後ろに押しやられるからね。旧リフト下坂で一人ガツンと出た。いよいよ来たー、と思うが周りは様子見か。僕は溜めていたわけではないが明確な目標物が出来たとして黙々と彼を追う。むむー、追いつく前に限界に至ってしまった。計3人くらいが飛び出した格好になったが、それぞれ離れていて協力体制が取れない。この辺り、ヘタだよね。間もなく吸収されてしまった。
無駄なアタックで使い果たしてしまった、などとは考えない。次もまた頑張るのみ。この割り切りは精神衛生上大変よろしい。

心臓破りでまたしても誰かが一人飛び出す。先ほどと同じ人だったか覚えてない。よっしゃ行くで!
ここで頑張らないでどうするの? と思うのだが周りはまだ様子見? スルスルと前に出ることができて二番手で坂をクリアした。またしても限界のため追いつけないけどね。まだ逃げつづける彼を必死に追う。彼の果敢なアタックを好意的に評価したいと思ったが、でも結果的にはブリッジの役目をして彼を潰すことになってしまったか?
バックストレート先で再吸収。次々とまくられ、みんなまだ脚を溜めていることをやっと身体で理解した。ホントに最後のスプリント勝負に持ち込もうとしているんだな。
森の中では文字通り一触即発。というかすでにスイムバトルのようにぶつかり合っており、とんでもなく危なかったがそれどころじゃないって感じで、これまでとは比べ物にならないくらい反射神経は研ぎ澄まされているようだ。あとで思い返すとぞっとする。

ゴールまで300m。一時は集団後方まで落ちて、もうポジションアップは望めないかと思った矢先、僕の前にスパンコールの選手が来た。ぐいぐいと落ち着いたペダリングで悠々と加速する。こんな絶好の先行者がいてくれてちょっと申し訳ないくらいに思いながら彼を追い、前が開けた。脚さえあれば着ることは可能なセッティングが完成した。
だが、ゴール手前150mで右側から一気に固まりが抜いていった。スピード差があり、スプリント力にかけては何一つ持ち合わせていないことを痛感しつつ、10位前後のどうでもいいポジションでゴール。


昨年はZクラスへの出場でしかも12周で終了しているため一昨年のグラフと比較。
明らかにラップは遅く、心拍は低い。最終周がベストラップで、体感以上に速かった。
ゴールスプリント時以外に14周目最後で最高心拍166bpmが出た。
HRave/max=135/166bpm TE=3.5 EPOC=109ml/kg(15周目終わり) 1705kcal ↑1325m

後で知ったが、集団のほぼドンケツだった。ま、そんな結果はどうでもいいけどスプリント力ほんっとに無いなあ。

結局は予想通りの結末に落ち着いたわけだが、ラスト5周からの気持ちの切り替えにほぼ則した走りが出来たことで、思いのほか満足度は高かった。まあでもCという名の土壺からはそろそろ本当に脱出したいもんだな。
小村君は公約違反の3位。二人のアタックを追っていれば確実に1位とれた、とか真顔で言ってる。うーむ。そんなベタな言い訳ができる小村君はきっと大物になるだろう。

6km×17周 11位/57人中 time=2:52:15.466 トップ差 00:01.960 ave=35.53km/h