JCRC第9戦アートスポーツ杯100km in群馬CSC参戦日誌
2007/10/14
Cクラス 102km (6km×17周)

我々下位クラスの草レースを、「大集団のサイクリングなんて誰も見たくない」と評した人がいる。
確かに傍から見たらその通りだろう。そう言われて、なにくそ!と思って飛び出したところで、半周ともたない。これでも本人は至って真剣なのだ。それ以上逃げられる人は、そもそもCクラスではない。ツマラナイのは仕方ないが、もう少し暖かい目で見て欲しい・・・。

それにしても、なんとか展開を作るような策はないだろうか? とふと考える。
一人逃げの脚力は無くても、4,5人で逃げれば面白くなる可能性はある。目的は一つだから、皆協力して速く走ろうとするし、スピード全体を底上げした走りは僕にとって唯一得意とする部分であろう。問題は、上手く逃げ集団が形成されるかどうかだ。大抵は、一人飛び出したって逆放置プレーされる。今回は知り合いが皆無で、誰が強いのかもわからない。レース中の目利きに結局頼るしかないだろう。
アタックポイントの選定も重要だ。
我々にとってメジャーなアタックポイントは、心臓破り。自分の最も苦手とする区間で、よりによって先行することなど可能だろうか?
だが、アタックするうえで重要なのは、逃げが決まることよりもその後のシナリオだろう。疲れて結局追いつかれてしまっては意味がない。心臓破りで抜け出し、スタートゴールラインを超えるまで逃げられれば、下りに入ってしばし力を抜くことができ、次の体勢に備えることができる。
そんなようなことをつらつら考えながら挑んだ今回のレース。
朝7時過ぎにCSCに到着。
スタートライン脇の芝生には表彰台が、何かの手違いで8位までセットされていたが、横に長く伸びたこの台の上には自分が乗るスペースもありそうではないか? という気分にさせてくれる。アートスポーツ協賛ということで、副賞も豪華だ。いやでも入賞を狙いたくなる要素で満ちている。

今回の結果を先に記せば、表彰台には程遠い12位。
目標の入賞は、どのようにして遠のいていったのか。

午前はチャレンジ100kmのホソヌマさんと遠藤さん、それにFクラス50kmで出場する職場の後輩T君を応援する。僕なりに考えた群馬CSCの詳細な攻略メモを事前に彼に渡してあり、レース直前は一緒に試走して、逐一ポイントを復習。抜かりなし、バッチリだ。と思ったが、1周目の心臓破りで切れ始め、グルペットも作れず6周走ったところでDNFになってしまった。んー、さすがに周回遅れは想定してなかった。
チャレンジ100kmも予想以上に速く、この時期とこの涼しい気候が相まって、全体のレベルがぐっと上がっていることをすでに感じていた。

緊張感も中だるみな午後。10分ほどアップしてスタート位置へ向かう。朝は寒かった気温も今はそこそこあり、半袖でOK。シューズカバーまでして、いつになくやる気を見せている。最後のトイレに行かなかったのが、後々後悔を生む。
12時半、Sクラスがスタートした。真田さん始め物ポン連合は6人と大盛況。4分のハンデを背負ってSS(奈良さん)がSを追いかけスタート。以下、1分差でA(慈朗さん)、B(丹羽さん)とスタートしていく。

わんさかいる。 (photo by Tくん)

12:37 p.m. Cクラススタート
エントリーは今回64名(DNS5名)と最も多いのがこのCクラス。あまり後ろにいると、うっかり千切れても気付かないかもしれん。気をつけるべし。
だがいつもの左テクニカルコーナーでビビっている。んーどういうわけだ? かなり消極的なスピードでコーナーを抜ける。慣れるまでは集団後方も致し方ないが、結構びょーんと縦に伸びるので、かなり不安だ。
10分2秒で1周目を終え、まずまずのスピードだ。10分平均で走れば2時間50分、Cクラスとしてはかなり速いほうだ。2周目も9分55秒と、なかなか積極的。心拍は早速心臓破りで166bpmまで上がり、かなり限界に近い強度を示している。
だが今日はふと思った。普段の練習で166bpmという値は、どんなに必至の形相で清澄坂を全力疾走してもなかなか出ない。それなのに今はそこそこのしんどさで軽く出ている。
これぞ火事場のバカ力と言えるだろうか? いや、違うようだ。多分にこれはレースの緊張感ゆえに出た値だ。心拍コントロールに負荷とは別の要因が介入している。いままでそういう発想は全く無かったが、そう考えないとどう見てもおかしい。能楽「道成寺」で、シテが鐘の落ちるタイミングでジャンプする舞台では心拍数200を超えるという話を昔聞いたことがある。じっとしているだけでその値が出せるのはある意味すごい才能だが。
つまりレース中の心拍数は普段の練習時の感覚とはズレがあり、経験則がアテにならない。
3周目の中盤、「右行くぞ!」と叫ぶ多数の声が背後から届いた。7分前にスタートしているSクラスが早くも迫ってきたのだ。ここまで1周をおよそ9分8秒平均で走っている計算。後続は右を空けて待つが、伝言ゲームは途中で「右に寄れ」に引っくり返ってしまった。Sを完全に妨害しながら、「左あけろ!」って必至に叫んで間違った誘導をして、なかなかSが追い越せないでいる。後方確認すればすぐ判ることです。
Sが右を通過していく。SSのメンツは見当たらない。余裕の声音で真田さんに一声かけられた。ポンズジャージが誇らしい。モリモリと江國さんも見えた。
怒涛のSは安心して完全見送りかと思いきや、先頭はSを追い始めた。なんという単細胞な奴らだ。アホか。ルールをちゃんと守れ!
だが、この大集団の意志は一人歯向かっても何にもならない。運命に身を委ねるしかないのだった。当然スピードは上がる。キビチー!
S集団にべったり張り付くいていたCも、その周を終えた頃から離れ始めたが、その差は依然20mほどで、間にオートバイが窮屈そうに入り、それを風除けにしてトップは一向にSのペースから落とそうとしない。SもどういうわけかCが追いつけるスピードに落ち着いてしまった。お陰で4-7周目はずっとSクラスのお尻を眺めながら、高速ペースで推移することになる。「頼むからもっとゆっくり行こうよぅ!」と途中で堪りかねてリクエストが入るも、先頭は聞く耳を持たない。
SSが追いついてくればまた展開も変るのだが、どういうわけか一向に訪れが無い。このままSは逃げ切ってしまうのか。

さて、この安定した高速ペース、僕はというと最も望むべき展開であるのは間違いないが、それにしても9分40秒前後というのはCとして想定を超えた速さだ。このルールギリギリな走り方は賛同しかねるので先頭には出ず、加担はしない。ふと後ろを振り返ると、依然集団の最後尾が確認できないほどであり、リストラはほとんど行われていないことを知って少し焦る。まあでもまだ7周、普段このくらいで終わるレースでは、Cクラスのアベレージはもうすこし速いだろうから当然千切れることは無いということか。単に後先を考えてないだけの話で、このツケは後半にかなり来るだろう。集団全体で大タレするかもしれない。
などと読んだのだが、どうやらCをかなり甘く見ていた。

8周目。ようやくSが視界から去り、ペースもやや落ち着いた。9周目にはリフト下坂から先頭を走るが、お役目を果たそうと引いたつもりなのに飛び出している。いつも群馬ではスピード変化が激しいので前を引くときのスピード調整がなかなか難しい。それとも村八分にされているのだろうか。
心臓破りでは相変わらず毎回160bpmを軽く超えるものの、前述通り値が示すほどの辛い感じはない。上りで他人のペースにピタリと合わせるのはとても疲れるので、脇の空いたところをマイペースで黙々と上る。不思議と周囲より若干速いことが多く、ヘアピンを先頭付近で回り、最後の橋までで少々タレるパターンの繰り返し。この坂でガツンと上がらないのがCクラスレベルってことか。僕には大変助かった。
こうして時々前に出ながら、13周目。リフト下坂で黄金色の大所帯においついた。ん? Bクラスか?
上位クラスなのですんなり追い越させてはもらえないだろう。先頭は散り散りにスピードアップ。このどさくさで抜け出すつもりだろう。いつぞやの沖縄戦を思い出す。ここはマジ追いせねば。
10数人がB集団から前に出たが、当然それに反応してBも数人出てきた。Bは便乗という負い目があるのか、コントロールは相変わらずCだ。逃げ小集団を確定すべく、僕もできるだけ積極的に前よりで走る。これは当初思い描いていたシナリオにも近く、ここでためらった走りをしたら後悔する。特にBクラスは理屈では僕らより脚が余っているわけだからずっと着いてくる可能性が高く、BとCが全部くっついて巨大化する恐れがある。それでは元も子もない。
先頭付近では、しばらくBとCは行儀よく並走していたが、やがて完全に混走になる。
このあたりからふくらはぎが頻繁に攣りそうになる。
レース前、僕はこの気温では脚がつることはまずない、と慈朗さんに豪語していたが、保険のつもりでCramp-Stopは携帯していた。これをまさかポケットから取り出すことになるとは思わなかった。4,5回は利用したと思う。トラレースよりも攣り方が強烈で突発的なので効かないかとも思ったが、結果的には大事には至らなかったので助かったといえる。

15周目。かなりマッタリ走行になり、気の緩みが出たのだろうか。心臓破りに入ったところで直前のB選手がハスって落車。これはまずい! 貰い落車は最も怖い。すんでのところで彼のホイールを踏んづけて止まり、幸い後続も避けてくれたが、彼のホイールは僕の全体重が乗っかったせいで壊れたかもしれない。申し訳ないが不可抗力なのでそこんとこ勘弁して下さい。
崩れた体勢を立て直しているうちに集団は僕らを置いて全員坂を上がってしまった。やばーい! 20mほどの差だが、切れるには十分な距離だ。そこで初めて、この集団が結構コンパクトだったことを知る。ずっとBのほとんどがくっついてきたと思っていたからだ。渾身のペダリングで坂を駆け上がる(後にリザルトから推測する限り、約24人)。お陰で完璧に売り切れてしまったが、バックストレートでやっと追いつき、集団復帰成功。この周が10分45秒といつになく遅かったのが不幸中の幸いだった。
ラスト2周となり、集団は先ほどよりも速くなる。下りヘアピン後ののぼりでも詰まることは無く、積極的に走る。休めない。乳酸が溜まったままだ。それでもまだ心臓破りは普通に走れた。ハイペースを維持し、ゴールスプリントに持ち込まないコンセプトを貫かんと前寄りを維持する。ラスト1周、さらにペースアップ。皆ぴりぴりしている。
東屋手前の右コーナー。ここで、突然果てた。ダメだ。全然力が残ってない。どんどん追い越される。心臓破りに入り、周囲は普段よりもスピードを上げる。僕はいつもの半分のスピードになる。当然の結果として一気に最後尾に落ちた。なんてこった〜?
脳に血がいかなくなったか、視界が極端に狭まり、目をしばしばさせて見開く。
諦めた。どうせ頑張ったって意味ない。楽に行こう・・・。そういう日和った考えに自己嫌悪を覚えつつ、これが全力でなくて何なのだ? これ以上どうしろと? そういう自問自答が繰り返され、やっとヘアピンを越えた。3名ほどBクラスがいたので、目標にして追う。
僕以外のCクラスは視界から全く消えた。みんななぜそんなに速く行ってしまったんだ?
最後は3人のBの発射台を請け負うつもりで走る。あまりやる気は無いみたいだが。そしてひっそりと一人ゴール。


バックストレート。ヨレヨレです。



当然のことながら、入賞した面々はレース中もっとも見慣れた人ばかりで、よもや自分だけがばっさり斬られようとは、最後まで想像できなかった。自分にとってはもっとも望んだシナリオのもと、スプリント勝負でもなく単に粘り負けした。完敗である。
だが、実は判っている。彼らと僕は似たようなポジションで走っていたが、内容は全く別物だった。これだけのハイペースを狂ったように率先して作り出したのは彼等なのだ。僕には全く真似できない。こうして比較することがおこがましいくらいだ。この勝負にタラレバの余地は無かったということだ。
結局、手持ちのカードは全然強くなかったことが示された。おきなわにむけて、課題は大きすぎる。

*  *  *  *  *

レース中は補給を頼んだTくん、それに臼井さんや山本奥様、ホソヌマさん他に声援を貰い、とても力の入る走りができたことは嬉しい。結果よりも、過程が大事だね。アート杯の副賞こそ逃したけれど、奈良さん、臼井さんから写真たてと靴下を頂き、モリカワさんからは賞賛の言葉を山ほど頂き、Sクラス優勝の真田さんとそれをサポートしたモリーの素晴らしい成績にチームとしての誇りを貰い、とてもかけがえのないものをたくさん貰って大収穫の一日だった。

6km×17周 12位/59人中 2:50:08.750 ave=35.97km/h トップ差0:47.383